ジョンズ・ホプキンズ大学のジュマン准教授らは、ある興味深い研究を発表した。被験者は商品レビューを5本書いたらチョコレートをもらえるが、「24時間以内に提出したらチョコレート5個」「10分以内に提出したらチョコレート3個」の2つの条件から選ばなければならない。
2つを比べると明らかに前者の方が好条件だが、被験者の30%が後者を選択した。なぜこのようなことが起きるのだろうか?
その理由は「脳」にある。人間の脳は「緊急性」と「重要性」の区別が苦手で、よく考えれば損や不要なことでも「時間がないから急いで」と煽られると、そちらを優先してしまうのだ。これを「単純緊急性効果」と呼ぶ。
この実験には続きがある。後者を選択しようとした被験者たちに、「締め切りが厳しいうえチョコレートは少なくなります。本当にそちらでいいですか?」と念を押すと、考え直す人が続出したのだ。
時間術を学ぶ意義はそこにある。どんな行動も「本当にやる必要があるのか?」「それをやることで、自分の人生の目的にどうつながるのだろうか?」と考えたうえで取るべきだ。本当に大切なことだけを「効果的」におこなうことこそが、「本当の時間術」の極意なのである。
“現代経営学の神様”ピーター・ドラッカーは、生産性を高める際は「捨てる勇気」が大切だと説いている。
それを象徴するエピソードがある。あるときドラッカーは「フロー体験」を提唱した心理学の最高権威ミハイ・チクセントミハイ博士から「創造性に関するインタビュー」を依頼されたが、これを断った。
ドラッカーは丁重に断りの返事をしたあと、次のように述べている。「生産性とは他人の仕事を助けることではなく、(こうした)すべての誘いを“特大のくずかご”に入れることなのです。天から与えられた才能を生かすには、持てる時間をすべてそこに費やす必要があります」。
才能は徹底的な集中から生まれる。しかし、私たちは山積みのタスクに囲まれ、さまざまな依頼や誘惑も飛び込んでくる。それを切り捨てるには、「NOと言える勇気」を持つことが不可欠だ。
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