この国でそれでも生きていく人たちへ
この国でそれでも生きていく人たちへ
この国でそれでも生きていく人たちへ
出版社
出版日
2025年03月04日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

2025年1月28日、経済アナリストの森永卓郎さんが逝去した。本書は卓郎さんと、その子息であり同じく経済アナリストとして活躍する森永康平さんによる共著である。

原稿は2024年末に完成したという。出版に際して卓郎さんのパートに修正を加えることもできたが、康平さんはあえて一文字も直さずに「GO」を出した。

本書では、日本の経済政策、政治、社会問題などについて、父子が章ごとに交互に論を展開する。二人の視点はしばしば対立し、たとえば卓郎さんが「これから恐慌が来るから、いまは投資をすべきではない」と主張すれば、康平さんは「その可能性も否定できないが、インフレ下では投資をしないほうがリスクではないか」と呼応する。このように、それぞれの視点が補完し合う形で進んでいく本書は、まるで「一対の、二つ揃って初めて完成する作品」のようである。

意見の違いは多々あるものの、両者に共通するのは「日本という国への深い愛情」である。親子でありながら、一方が他方に意見を押し付けることなく、それぞれを独立したプロフェッショナルとして認め合っている。その姿勢は、たとえ親子でなくとも難しいものであり、これを実現している点に深い敬意を抱く。

本書は「どちらが正しいか」を決めるものではなく、それぞれに学ぶべき視点を提供する。読者には、ただ意見を鵜呑みにするのではなく、「では自分はどう考えるのか?」と問いかけるきっかけにしてほしい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

森永卓郎(もりなが たくろう)
経済アナリスト。獨協大学経済学部教授。1957年、東京都生まれ。2025年1月没。1980年、東京大学経済学部卒。日本専売公社(現在のJT)に入社し「管理調整本部主計課」に配属。近著に『ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト』『書いてはいけない日本経済墜落の真相」(ともに三五館シンシャ)、共著に『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社+α新書)などがある。

森永康平(もりなが こうへい)
闘う経済アナリスト。1985年、埼玉県所沢市生まれ。証券会社や運用会社にてアナリストとして株式市場や経済のリサーチ業務に従事。その後、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在、株式会社マネネCEO。日本証券アナリスト協会検定会員。経済産業省「物価高における流通業のあり方検討会」委員。
YouTubeチャンネル「森永康平のリアル経済学」「森永康平のビズアップチャンネル」を運営する。EXECUTIVE FIGHT-BUSHIDO-初代55kg級王者。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界経済はあらゆるセクターが過熱状態にある「エブリシング・バブル」が起きており、大暴落のリスクが高まっている。(森永卓郎)
  • 要点
    2
    「経済は成長し続ける」という前提でいるのは危険だ。富の偏在に対する不満が高まれば、資本主義の枠組みが変わるかもしれない。また、台湾有事の可能性も否定できない。(森永康平)
  • 要点
    3
    日本の経済政策の考え方には誤解が多く、それが社会問題の解決を阻害している。(森永卓郎)

要約

大恐慌がやって来る ―森永卓郎

投資はギャンブルだ

投資はギャンブルである。通常、お金が増えるのは、働いたときと他人から奪ったときだけだ。そのため、どんな投資も最終的には「ゼロサムゲーム」、つまり勝者の利益と敗者の損失の差分がゼロになる。

長期投資では、一見パイが拡大しているように見えるが、それはバブルが発生しているからだ。バブルは必ずはじける。いま私たちは人類史上最大のバブルに直面しており、その先にはバブル崩壊、つまり大暴落が待っている。

私自身、これまでさまざまな投資をしてきた。しかし、投資を勧められるのは「割安な時」だけだ。いま日経平均は史上最高値を更新し、不動産価格も急上昇している。現に、東京23区の新築マンション価格は2年連続で1億円を超えた。

世界経済は「エブリシング・バブル」
metamorworks/gettyimages

投資家でアナリストのエミン・ユマルズ氏によれば、「世界経済はエブリシング・バブル」だという。バブルとは、特定のセクターが部分的に過熱状態になる現象であり、1980年代の日本の「バブル経済」は不動産バブルであった。

一方、現在の世界経済は「あらゆるセクターがバブル」という状況にある。リーマン・ショック以降、世界中で量的金融緩和が続けられたことに加え、コロナ禍では金融緩和と財政出動が行われた。その結果、膨大な量のマネーが市場に流入し、あらゆる資産がバブル化してしまった。つまり、「エブリシング・バブル」が起きているのである。

バブル崩壊は資本主義の宿命

現在の世界は、世界恐慌が発生する直前の1920年代と状況が酷似している。

当時、アメリカでは自動車と家電のバブルが発生していた。その頃のアメリカ産自動車は世界最強であり、家電製品も世界中の人々が憧れるトップブランドであった。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3535/4264文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.04.20
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2025 森永卓郎、森永康平 All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は 森永卓郎、森永康平、株式会社フライヤーに帰属し、事前に 森永卓郎、森永康平、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
一緒に読まれている要約
人生は、捨て。
人生は、捨て。
川原卓巳
読めば分かるは当たり前?
読めば分かるは当たり前?
犬塚美輪
マーケティングのための因果推論
マーケティングのための因果推論
漆畑充五百井亮
増補改訂版 ヤフーの1on1
増補改訂版 ヤフーの1on1
本間浩輔
人は出会いが100%
人は出会いが100%
垣花正
仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく
仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく
和田秀樹
結局、会社は思うように動かない。
結局、会社は思うように動かない。
下地寛也
檸檬
檸檬
梶井基次郎