増補改訂版 ヤフーの1on1
増補改訂版 ヤフーの1on1
部下を成長させるコミュニケーションの技法
増補改訂版 ヤフーの1on1
出版社
ダイヤモンド社

出版社ページへ

出版日
2025年02月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

1on1とは、単なる上司と部下の定期面談ではなく、成長を促すための対話の場である――本書『増補改訂版 ヤフーの1on1』は、ヤフーが10年以上にわたり実践してきた1 on1 の知見を体系的に整理した一冊だ。

ビジネスではよく知られている本ではあるが、あらためて読み直してみて、そのわかりやすさに驚かされた。まず、第1章が漫画形式で描かれており、1on1の流れを直感的に理解しやすい。また、多くの対談が収録されている点も特徴で、リアルな現場の試行錯誤や成功・失敗のエピソードが紹介されている。理論の解説にとどまらず、現場の生々しい声を通じて、実践のヒントが随所に散りばめられているのが本書の魅力だろう。

さらに、「増補改訂版」の名にふさわしく、大幅に加筆されているのもポイントである。すでに前作の解説は数多く存在するが、この改訂版では1on1の進化や、より効果的な実践に向けたアプローチが掘り下げられている。たとえば、導入時の課題や組織文化との相性といった視点が強化されており、1on1を単なる施策ではなく、組織の成長戦略の一環として捉えることの重要性をあらためて感じさせられる。

1on1の導入を考えている人はもちろん、すでに実施しているが課題を感じている人にとっても、対話を通じた組織や個人の成長に焦点を当てた実践的な内容が詰まっている。1on1を「やるべき業務」ではなく、「組織の力を引き出す武器」として活用したいなら、本書は必読の一冊である。

著者

本間 浩輔(ほんま こうすけ)
・パーソル総合研究所取締役会長
・朝日新聞社取締役(社外)
・環太平洋大学教授 ほか
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフーに傘下入りしたあと、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)、Zホールディングス執行役員、Zホールディングスシニアアドバイザーを経て、2024年4月に独立。企業の人材育成や1on1の導入指導に携わる。立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース客員教授、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。
著書に『1on1ミーティング「対話の質」が組織の強さを決める』(吉澤幸太氏との共著、ダイヤモンド社)、『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』(中原淳・立教大学教授との共著、光文社新書)、『残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方』(光文社新書)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    1on1は、特定の目的を定めずに実施することが推奨される。1つの目的に限定すると、可能性を狭めてしまうためだ。
  • 要点
    2
    1on1は(1)機会をつくる、(2)「傾聴」し次の行動を決める、(3)部下の行動を「観察」してフィードバックするという3つのステップを基本とする。
  • 要点
    3
    1on1を継続することで、対話の習慣が根づき、上長と部下の関係性がより深まる。課題を乗り越えながら続けることが、成果につながる鍵となる。

要約

1on1をはじめよう

ヤフーが1on1に取り組む理由

1on1の目的は何かとよく問われるが、著者はあえて「ご自由に」と答えている。1on1の目的は一つとは限られない。特定の目的を定めることで、かえってその効果が限定的になってしまう恐れがある。

ただし、企業が1on1を導入する際には、経営層や社員に向けた説明が必要となる。その場合、「目的」を示すのではなく、「期待できる効果」を伝える方が適切だ。その効果は、大きく(1)経験学習の促進、(2)上長による部下の成長支援の二つに集約される。

「経験学習」とは、職場での経験を学びに換え、それを次の業務へ活かすという考え方である。 経験学習の代表的な理論である「7:2:1の法則」によれば、人の成長の70%は仕事の経験から得られるとされる。1on1を通じて部下が得た教訓を定着させる機会を提供するのが1on1の重要な役割だ。

1on1のもう一つの役割は、「上長による部下の成長支援」によって、部下の才能や情熱を引き出すことだ。才能や情熱を引き出すには、多様な業務経験を積ませ、上長や同僚から観察・フィードバックを受ける機会を提供することが重要だ。また、部下自身がキャリアを選択するための対話の場としても、1on1は有効に機能する。一人ひとりが自分のキャリアについて考える機会を提供すれば、本人が仕事に意味や意義を感じやすくなる。

1on1の3ステップ
maroke/gettyimages

1on1には、(1)対話の「機会をつくる」、(2)「傾聴」し次の行動を決める、(3)部下の変化を「観察」しフィードバックする、という3つのステップがある。

まず、「機会をつくる」ためには、1on1を定期的に実施し、習慣化することが不可欠だ。毎週決められた時間を確保することで、上長・部下ともに対話に慣れていく。

次に、「傾聴」においては、部下の話を優先する姿勢が求められる。1on1は部下のための時間であり、上長が聞きたいことを質問する場ではない。そのため、「今日は何を話そうか?」と問いかける習慣を持つことが効果的である。これにより、部下はあらかじめ話すテーマを考えるようになり、1on1前から経験学習に重要な「内省モード」に入ることができる。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3013/3925文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.04.21
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
人生は、捨て。
人生は、捨て。
川原卓巳
読めば分かるは当たり前?
読めば分かるは当たり前?
犬塚美輪
この国でそれでも生きていく人たちへ
この国でそれでも生きていく人たちへ
森永卓郎森永康平
だけどチームがワークしない
だけどチームがワークしない
縄田健悟
人は出会いが100%
人は出会いが100%
垣花正
結局、会社は思うように動かない。
結局、会社は思うように動かない。
下地寛也
若手が辞める「まさか」の理由
若手が辞める「まさか」の理由
井上洋市朗
マーケティングのための因果推論
マーケティングのための因果推論
漆畑充五百井亮