1on1の目的は何かとよく問われるが、著者はあえて「ご自由に」と答えている。1on1の目的は一つとは限られない。特定の目的を定めることで、かえってその効果が限定的になってしまう恐れがある。
ただし、企業が1on1を導入する際には、経営層や社員に向けた説明が必要となる。その場合、「目的」を示すのではなく、「期待できる効果」を伝える方が適切だ。その効果は、大きく(1)経験学習の促進、(2)上長による部下の成長支援の二つに集約される。
「経験学習」とは、職場での経験を学びに換え、それを次の業務へ活かすという考え方である。 経験学習の代表的な理論である「7:2:1の法則」によれば、人の成長の70%は仕事の経験から得られるとされる。1on1を通じて部下が得た教訓を定着させる機会を提供するのが1on1の重要な役割だ。
1on1のもう一つの役割は、「上長による部下の成長支援」によって、部下の才能や情熱を引き出すことだ。才能や情熱を引き出すには、多様な業務経験を積ませ、上長や同僚から観察・フィードバックを受ける機会を提供することが重要だ。また、部下自身がキャリアを選択するための対話の場としても、1on1は有効に機能する。一人ひとりが自分のキャリアについて考える機会を提供すれば、本人が仕事に意味や意義を感じやすくなる。
1on1には、(1)対話の「機会をつくる」、(2)「傾聴」し次の行動を決める、(3)部下の変化を「観察」しフィードバックする、という3つのステップがある。
まず、「機会をつくる」ためには、1on1を定期的に実施し、習慣化することが不可欠だ。毎週決められた時間を確保することで、上長・部下ともに対話に慣れていく。
次に、「傾聴」においては、部下の話を優先する姿勢が求められる。1on1は部下のための時間であり、上長が聞きたいことを質問する場ではない。そのため、「今日は何を話そうか?」と問いかける習慣を持つことが効果的である。これにより、部下はあらかじめ話すテーマを考えるようになり、1on1前から経験学習に重要な「内省モード」に入ることができる。
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