人は一生の間に何万回も食事をする。その料理を自らつくったり研究したりする楽しみが増えれば、楽しみは何万回も増えることになる。料理をするプロセスは仕事力を鍛えてくれるし、共働きが当たり前になりつつある現代では、男性が料理をすることで家族も笑顔になる。
でも料理は難しい、と思っている方も多いかもしれないが、料理は決して難しいものではないと著者は断言する。材料があって、つくり方があって、順番に組み立てていく料理は、プラモデルと同じなのだ。もしくは、理科の実験と同じと考えてもいい。魚をさばくのも解剖の実習のようなものだ。
凝ったものだけが料理ではなく、野菜や肉を焼くだけだって立派な料理だ。自分で料理のハードルを下げてしまえば、気軽に今日からでもとりかかれる。
惰性で料理をするのでなく、新しいレシピを見て、月1回からでも意識的に料理をしていけば、新しい発見ができ、新しい世界も広がる。そして、だれかを喜ばせようと食事をつくることで、自分も、周囲も、幸せになっていくのだ。
仕事における男性の評価は、仕事ができるという要素だけに基づいているわけではない。振る舞いやたしなみ、教養を持っているかということも、評価に結びついている。
たとえば重要な話も出る接待の席での振る舞いも、印象を左右する。食材の旬や産地を知っていること、プロの料理の苦労や工夫を察せることを自然に示せれば、自分の株を上げられる。食に関する話題で場を盛り上げられれば、周りからも一目置かれるようになるだろう。
ふだんから料理をしている人は、リアルな自分の体験から食事について語ることができる。そうした体験は、インターネットを検索して得られる単なる情報とは明らかに異なるものだ。実体験から語るからこそ、人間としての奥深さがにじみ出る。
料理は、何気ない作業に見えて、じつは頭を使う。献立を考え、包丁を扱うなどの作業をするときは集中せねばならない。
また、料理をするときは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、すべての五感を使うことになる。焦がさないように、けれどしっかりと火が通るように、目で見て、音を聞いて、においをかぎ、味見する。意外かもしれないが、揚げ物をするときも、じつは耳を使う。食材の中まで火が通ると、揚げる音がチリチリと変わるのだ。また、食材の固さや柔らかさを触ってたしかめる触覚も、さまざまなプロセスでもちろん必要だ。
著者は「メンズキッチン」の経験上、成功している経営者には料理が上手な人が多いと感じているそうだ。経営者には直感や勘も必要だが、そうした能力は、料理によって五感が磨かれ、アンテナが敏感になることで研ぎ澄まされていくのではないか、と著者は言う。
料理は五感や直感のような能力を磨く、素晴らしいトレーニングだ。男を磨くには、料理をしない手はない。
前項でも少し触れたが、仕事の最前線で活躍している人ほど、きちんとレッスンに通う時間を捻出しており、料理がうまい、と著者は語る。
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