著者がミニマリストになったきっかけは、ものでいっぱいのガレージの片づけに追われていたときだった。著者の心中を慮った隣人が、こんな言葉を投げかけたのだ。「(ミニマリストになったうちの娘は)こんなにものはいらないっていつも言っているわ」。衝撃を受けた著者は、ミニマリストになろうと決意し、この1週間後にミニマリズムを普及させるブログを開始した。2年後にはこれが本業となり、現在ブログには1カ月に100万人以上が訪れている。
著者はミニマリズムを実践することによって、ものを減らせるだけでなく、より豊かになれると主張する。具体的なメリットとして、「時間とエネルギーが増える」「質のいいものが持てる」「人と比べなくなる」ことにくわえ、意味のある行動に使える時間が多くなり、大切な夢を実現できるという点を挙げている。
著者によるミニマリズムの定義は、「いちばん大切にしているものを最優先にして、その障害になるものはすべて排除すること」である。「すべてを捨てること」や、ものを並べ替えるだけの「整理整頓」とよく誤解されるが、そうではない。ミニマリズムの本質は、自由になれたと実感できるレベルまで、所有物を減らすことである。
元牧師でもある著者は、ミニマリズムの考え方が普遍的であることを示し、イエスと役人の物語を紹介している。イエスは、永遠の命を授かる方法を知りたがる役人に対し、「持ち物をすべて売り、そのお金をすべて貧しい人に与えるとよい」と助言した。著者は当初、この話を「現世での物質欲と天国に行ったときの報いとの取引」だととらえていた。しかし、ミニマリストになってからは、イエスの教えは「物質欲の重荷から解放され、より豊かな人生を手にするための助言」だと考えるようになったという。
広告業界は利己的な所有欲を利用し、幸福になる唯一の手段が「消費」であるかのように私たちを誘惑している。所有欲があおられるのを防ぐために、著者は次の3つを知ることを薦めている。
それは、「世代による消費に対する考え方の違い」「自分の中にある成功の定義」「広告業界の手口」である。とりわけ、自分の中の成功の定義を明らかにしておけば「過剰なライフスタイルは成功のあかしではない」と肝に銘じることができる。そして、ここでの「広告業界の手口」とは、セール価格の値札や、おとり価格を設定し、それより安価なものがあたかも手頃であると感じさせ、そちらを購入するよう仕向ける、といった手法などを指す。このように、消費社会の実態を見抜き、自分の内面と向き合えば、本当に大切なものを追求する自由を手に入れられる。
ミニマリズムを実践しようとしてつまずく原因の一つは「いちばん捨てるのが難しいもの」を最初に手放そうとすることだ。まずは、ミニマリストをめざす理由をじっくり考え、紙に書いて貼っておくのが望ましい。すると、挫折しそうになったとき、不要なものを手放すというモチベーションを上げられる。
お薦めなのは、リビングや洗面所など、よく使う場所のいらないものから処分することである。「80対20の法則」によると、「80%の時間は、持っているものの20%だけに使われている」という。そのため、残りの80%の所有物を処分すればよい。リビングをすっきりさせると、家族だんらんがより楽しくなる。このように、簡単に取り組めるところから手をつけるとよい。
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