その言葉だと何も言っていないのと同じです!
その言葉だと何も言っていないのと同じです!
「自分の考え」を論理的に伝える技術
その言葉だと何も言っていないのと同じです!
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年01月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

ビジネスの現場では、不可解な言葉を耳にすることが多い。「もっと議論が必要だ」、「これは非常に悩ましい問題だ」というような、実は何の主張もしていない発言であったり、「常識で考えればわかるだろう」、「顧客の立場に立って考えろ」といった、理屈よりも力がものをいう言葉であったりと、そのパターンは実に様々だ。

著者はこのような言葉を「マジック・ワード」と呼んでおり、「問題解決から遠ざかる系」、「具体的にはどうなるの?系」、「ごまかすために力む系」といったように、使われるシーンごとにマジック・ワードをパターン化して紹介している。マジック・ワードを投げかけられたとき、一体どのような切り返しを行えばよいのか。あるいは自分が知らず知らずのうちに部下や同僚たちにマジック・ワードを多用していないか、本書を読むことでハッと気付かされることであろう。

私個人としては、マジック・ワードも使い方によってはコミュニケーションや交渉の武器になる、と思いながら本書を楽しんだ。マジック・ワードを用いれば、結論をぼかしたり、話し相手を屈服させたりという業が可能になるのは事実だ。都合の悪いところはマジック・ワードを用いて結論をぼかし、マジック・ワードを用いて論点をすり替え、マジック・ワードを用いて相手を揺さぶり屈服させる。議論が上手な人の中には、論理立ててものを話すスキルに加え、半ば確信犯的にマジック・ワードを用いる力を兼ね備えている人がいる。これは本当にたちが悪い。それを見破るにも、身に着けるにも本書が役立つに違いない。

著者

吉岡友治
VOCABOW小論術校長。仙台市生まれ。東京大学文学部社会学科卒。シカゴ大学大学院人文学科修了。専攻は演劇と文学理論。
駿台予備学校・代々木ゼミナールで20年にわたり国語・小論文の講師を務めた。
日本語における小論文メソッドを確立し、ロースクールやMBA志望者に論文指導を行なう一方、各地の学校・企業・コンサルタントを対象に、論理的表現の研修を行なっている。
明晰な文章分析メソッドを適用し、社会論や芸術論、マジック・ワード論などの分野で活動している。
『だまされない〈議論力〉』(講談社現代新書)、『いい文章には型がある』(PHP新書)、『必ずわかる! ○○主義事典』(PHP文庫)、『東大入試に学ぶロジカルライティング』(ちくま新書)、『社会人入試の小論文思考のメソッドとまとめ方』(実務教育出版)など著書多数。
最近では、インドネシア・バリ島にも仕事場を持ち、東京とバリとを往復するプチ・ノマド的な活動を展開している。

本書の要点

  • 要点
    1
    「もっと議論をすべき」、「本当に今必要なものでしょうか?」、「主体性を持って取り組め」といった、便利だけれども実は何も言っていない「マジック・ワード」は多数存在する。
  • 要点
    2
    ビジネスの現場では、「グローバル人材」、「リーダーシップ」という定義の曖昧な「マジック・ワード」が使用されがちである。
  • 要点
    3
    「自分の考え」を論理的に伝えるには、①言葉を定義する、②首尾一貫させる、③根拠を示す、④論理と例示を対応させる、⑤結論まで同一の内容にするという5つのポイントがある。

要約

【必読ポイント!】便利だけれど、何も言っていない「マジック・ワード」

もっと議論をすべき
Image Source White/Image Source/Thinkstock

これは本書では、「問題解決から遠ざかる系」として紹介されている言葉である。具体的な使用シーンはこのようなものだ。

A「わが社の業績を上げるには、どうすればいいと思う?」

B「もっとみんなで議論するべきだと思います」

A「いや、もう議論は始まっている。それより、問題をどうすればいいか」

B「だからこそ、私は強く主張しているんですよ!」

A「なんて?」

B「もっと議論が必要だと」

あなたも会議でこのようなシーンを見たことはないだろうか。

この「もっと議論するべき」は「頑張れ、もっとやれ」というようなもので、はやしたてたり、やじ馬になったりするのに等しい。

もし、この言葉が意味をなすとしたら、議論が途中で終わりそうなとき、あるいは全然議論が行われないままに終わってしまいそうなときのみである。このような意味で、マスコミがこの言葉を活用することは多少意味があるが、個人においてはその限りではない。

本当に今必要なものでしょうか?

この言葉は、「呪いの協調言葉系」と呼ばれるものだ。

A「どうしても予算編成が腑に落ちないのです」

B「どこが疑問なんだい?」

A「この予算は、本当に今必要なものでしょうか?」

というのが使用シーンだ。

「本当に」「やはり」「とにかく」などは強調する言葉ではあるが、言うと気持ちが入る割には、意味はあまり明確ではない。先の例で言うならば、「この項目はこれだけの金額と述べているが、このデータによれば、それほど必要ではないはずだ」と言う方が建設的である。

「本当に必要か」という言葉は漠とした不安を投げかけるものだ。こう言われると誰でもひるんでしまう。それを利用して相手を黙らせ屈服させる語法なのだ。

そこで、「必要ないという根拠はおありなのか?」と反撃する態勢が重要である。このパターンには即座に言い返すのだ。

主体性を持って取り組め
courtyardpix/iStock/Thinkstock

この言葉は、「理屈よりも力がものをいう系」として紹介されているものである。

上司「プロジェクトが思うように進んでいない。それぞれがもっと主体性を持って取り組んでもらいたい」

部下「みんな頑張っていますよ」

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要約公開日 2014.02.13
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