本書は前半で勇気が何であるのかを語られた上で、後半に勇気を高める方法や、勇気を阻害するものへの対処策が具体的に述べられている。
冒頭では勇気を具体的にイメージできるように、著者がマサイ族への取材を行うにあたり、彼らの重んじる勇気を示すために行ったことが描かれている。それは火の棒を胸に押し付けるという儀式である。しかも3箇所に3度ずつ行うというのだから、想像を絶すると言わざるを得ない。著者はその行為によって勇気を示した結果、マサイ族からの信頼を得て取材が成功裏に推移したという。では、そのような勇気はどのように奮い起こすことができるのか。本書の内容を紹介したい。
心理学者のクリストファーレイトの研究によれば、辞書や文献、心理学研究に見られる勇気のほとんどは次のようなものである。
① 危険や脅威が存在すること。
② 行動の結果が確実ではないこと。
③ 恐怖が存在すること。
④ そのような条件があるにもかかわらず、個人が明確な意思と意図を持って行動すること。
すなわち、凍り付くような滝を登る探検家の勇気も、会社での非倫理的な商慣習を指摘する中間管理職の勇気も、本質的には変わりがない。上記のような要素が当てはまる状況下にあるからだ。
加えて、勇気には倫理的な価値がなくてはならない。それが路上強盗と英雄を分けるものである。更に勇気には他者に伝染する効果があることからこそ、価値があると称賛されるのだ。弱者を擁護する、信念を貫く、交通事故に遭いそうな人を救うなどの行動を見ると周りの人も影響を受けるのだという。それらのことを総合的に勘案すると、勇気の新しい定義は次のようなものである。
「勇気とは、危険、不確実性、恐怖があるにもかかわらず、道義的で価値ある目的に向かっていく行動意志である」
現代で初めて正式に勇気を研究したのは、モラン卿として有名な、チャールズ・モクモラン・ウィルソンであろう。モランは第一次世界大戦に軍医として従事、兵士たちが感じている恐怖の度合いに個人差があることがわかり、兵士をタイプ別に分類する。
「恐怖を感じていない兵士」
「恐怖を感じているが、それを表に出さない兵士」
「恐怖を感じていてそれを表に出すが、任務は遂行する兵士」
「恐怖を感じそれを表に出し、任務を放棄しようとする兵士」
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