インフルエンザや病原性大腸菌など感染症の原因となる病原体から体をまもるために、私たちの体には「免疫系」という仕組みが備わっている。「免疫系」は私たちの体を守る「からだ防衛軍」のような働きをしており、主に4つの細胞(マクロファージ、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞)によって、病原体を体から排除している。
「マクロファージ」と呼ばれる細胞は、バイ菌が体内の血液に入り込んでいないかを偵察しながら、バイ菌を見つけるとパクッと食べてしまう。ところが、自分だけでは手に負えないほどのバイ菌が侵入してきたとき、司令塔である「ヘルパーT細胞」に緊急連絡を入れる。ヘルパーT細胞は「キラーT細胞」や「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」といった直接病原体を破壊する傭兵の役割をもつ細胞に働きかけ、病原体を攻撃させる。同時に、司令塔の命令により「B細胞」が病原体を包囲し、「抗体」という「対バイ菌弾」をいっせいに発射して病原体にとりつき、病原体を排除する。
この対バイ菌弾「抗体」の正体は、血液中の免疫細胞「B細胞」から作られる免疫グロブリン(Immunoglobulin=Ig)と呼ばれるタンパク質である。アルファベットのY字のような形をしており、Y字の2本に分かれている腕部分が病原体にくっつくことで病原体を攻撃するのだが、このくっつく部分があらかじめさまざまな形で作られているため、どんな敵が来ても、それ専用の抗体がくっつくことができるのだ。この抗体は日本の北里柴三郎によって発見された。なお、抗体がくっつく病原体などの敵のことを「抗原」という。
抗体はその働きや構造によって5種類のタイプ(IgG、IgA、IgM、IgE、IgD)に分けられる。赤ちゃんの免疫系や鼻・腸など粘膜で働くIgA、病原体の感染初期に働くIgM、寄生虫を倒すために働いているが、花粉症の原因にもなるIgE、まだ働きがわかっていないIgDである。体に一番多く存在する抗体はIgGである。
今、日本国民の3人に1人が何らかのアレルギーをもっていると言われている。花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどはとくに身近で、多くの人を苦しめている。これらのアレルギーにはIgE抗体が関与している。体内に侵入した花粉は人によって免疫系に「敵」だと認識され、通常必要のない花粉に対する抗体が、B細胞によって大量に作られる。
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