「博士号」の使い方2

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「博士号」の使い方2
出版社
リバネス出版
出版日
2010年04月01日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は『博士号の使い方』の続編にあたる。もっと多くの大学生・大学院生、若手研究者が一歩を踏み出すきっかけとなるよう発刊された。第一章では、大学・公的機関で研究に没頭する博士たちを。第二章では企業で活躍する先駆者たちとして、自分の専門を活かして企業でのキャリアを開拓していく博士たちを。第三章では、自身の研究キャリアをフル活用して、新しい分野で活躍している博士を紹介している。

一冊を通して19名の博士たちのキャリアと哲学が、インタビュー形式と記事形式で紹介されている。どの人も共通して「自分の好きなことを突き詰めていったら、ここにいた」と語る点が印象的だ。自らの哲学と、好奇心という推進力を使って新しい価値を社会に提案し続けている博士たち。彼らが送るメッセージが、少しでも未来の研究を創り上げる若い学生や研究者に届くことを願う。同時に、新しい問題を自分で探し出し、その解決をはかっている「博士」たちの存在をより多くの人が知り、彼らの能力をフルに社会に活用することで、日本のイノベーションのサイクルがより早く回っていくことを期待したい。

著者

研究キャリア応援マガジン『incu-be(インキュビー)』
株式会社リバネス人材開発事業部が「研究者を目指す人が一歩を踏み出すきっかけになってほしい」という願いを込めて、全国の理工系大学にて設置・配布する日本初の研究キャリア応援マガジン。2007年5月の創刊から一貫して、博士号取得者を中心としたリバネスのサイエンスブリッジライターが、若手研究者の目線で大学・企業など様々な場所で活躍する理工系人材の紹介記事を執筆・掲載するとともに研究者を目指す理工系大学生・大学院生にとって有用な情報を提供している。
ウェブサイト:http://ysep.info/incu-be/

本書の要点

  • 要点
    1
    “Be somebody” 自分が他となにが違い、どんな価値があるのかをしっかり見いだし、人に認識されることで、自分の選択肢を増やせ。
  • 要点
    2
    世の中にある様々な課題に直面することで、そこにある課題を発見し、新たな価値を生むことで社会に貢献していく。それが博士人材の本質なのだろう。
  • 要点
    3
    先のことはわからない。だからこそ好きなことを突き詰めて、唯一無二の存在に。
  • 要点
    4
    現代の研究者は、マネジメントスキルとコミュニケーションスキルの両方が必要だが、多くは不足している。科学的な内容の説明の際には、年配の女性に話しかけるようにすべきである。
  • 要点
    5
    研究者としての経験があるからこそ、その価値を発揮できる仕事はラボの外にもある。

要約

世界を知り人脈ネットワークで、自分で自分の道を切り開らけ

Phil Ashley/Photodisc/Thinkstock
フラット化した世界では、世界に人脈を広げ、自分の選択肢を増やすことが重要

世界はどんどんフラット化している。誰もがインターネット、emailを使い、あらゆる情報が世界中の人たちの間で共有され、情報発信ができるようになった。「グローバル化」という言葉は、もはや誰もが当たり前に使う言葉だろう。このように、『個人レベルで発信する意見や価値さえもグローバルに共有される』この世界を「フラット化する世界」とアメリカのジャーナリストは表現した。フラット化した世界は『既存の権威や体制に囚われることなく新しい社会的価値を創造するイノベーションが生まれる土台』となる。そしてこの土台の上でのイノベーションこそが、これからの日本でも世界でも重要だと説くのは、医師であり日本学術会議の会長や内閣特別顧問などを歴任、世界で活躍される政策研究大学大学院の黒川清教授だ。

企業の就職口やアカデミアのポストが減少していることから、博士課程に進学する人の数が減ってきている。その現状に、黒川氏は日本の大学教育を取り巻く環境が閉塞的で、新しい思考や斬新なアイデアが生まれない状況に危険を感じているという。特に、日本では学部から修士、博士と同じ大学にとどまることが多く、これが大学の枠を超える海外の学生と大きく異なる。重要なのは、まず学部生のうちに将来自分は何をやりたいのか、向かいたい方向を見定めること。必要なら日本の外にでることで、世界の舞台で自分の価値を知ることができるのだ。

「Be somebody」。自分が自分の研究分野で他人とどう違うのか、それを学会などで、他人にしっかり認識されることが博士課程での研究者としての勝負所となる。博士人材は企業での就職口が見つかりにくいと言われるが、それは企業が博士人材の使い方をよく知らないからである。これからは、どれだけ自分で人脈の輪を広げることができるのか、それによって自分の選択肢を増やし、将来を切り開いていくことが重要なのだ。世界に人脈を広げ、自分の専門分野以外の人たちとつながっていくと、一緒におもしろいことをするパートナーがみつかるかもしれないし、有益なディスカッションができる相手がみつかるかもしれない。日本の外に出ることで、日本の良さを理解するとともに、弱さも認識できる。それを経ることで、自ずと世界での自分の価値が理解でき、可能性が広がっていくのだ。

社会のニーズの中で自己実現をおこなう

James Thew/?iStock/Thinkstock
自身で学び、問題解決を

本書の第一章では、大学や公的機関で未知の世界を探求しつづける博士たちを紹介している。たとえば、電気通信大学大学院の准教授である植野真臣博士は、統計学のバックグランドを利用して、高度な技術と深い専門性を身につける、かつ社会的に貢献できる人材を育てる場を創り上げることを目指している。

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要約公開日 2014.02.28
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