独立行政法人理化学研究所の清水智子さんは、研究をしながらも出産を経験し、子育てと研究を両立する1人。自分の体よりも大きな顕微鏡を操作し、物質の表面の微小な世界を観察したり、原子や分子の挙動を探っている。ナノの世界(ナノはミリの10万分の1)を探索することに、毎日夢中になっている。清水さんが行う実験は、一度始まるとかなりの日数を拘束される。また、よいデータがとれ出すと、日夜を問わず実験を続けたいというのが研究者の本音。しかし、毎日夕方5時半には子どものお迎えにいかなくてはいけないし、子どもが体調を崩すと、完全に実験を中断しなくてはいけない。このように子育てをしながらも、自分のやりたい研究を続けていられるのは、周囲の方々のおかげだと感謝しているという。研究第一だった清水さんが出産を決意したのには、上司の理解も大きかったという。「環境のよい理研にいるうちに産んでおきなさい」と、清水さんを後押してくれたのが、日本の表面化学の第一人者で上司の川合眞紀さんだった。そもそも、清水さんが川合さんの研究室で協力研究員の職を得る事ができたきっかけは、なんと学会で会った川合さんへの「直談判」。「これからは自分で道を切り拓いていかないと」、という清水さんの言葉には、実感がこもっている。
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垣内力さんと、藤幸(垣内)知子さん夫妻は、2人とも東京大学で研究に従事しながら3歳の子どもの子育てに奮闘している。妻の藤幸さんは、「女性にとって、妊娠・出産は、間違いなくキャリアアップを阻害する」、「子育てで仕事をセーブしている間には焦りがある」と認めながらも、海外での留学中に得た経験から、今後のポストや仕事への不安のせいで、子どもを産まないという選択は「ない」、と感じるようになった。それはヨーロッパで「研究は人生の一部であって、人生を楽しまないと、研究はうまくいかない」と言われたことがきっかけだ。それまでストイックに研究すべきという考えだけをもっていた藤幸さんは、研究も生活も楽しむという視点を持てるようになったという。またアメリカでは、夫婦で研究をしている方が主催するホームパーティーに参加したり、女性研究者が産まれたばかりの子どもをセミナーにつれてきたりと、研究以外の生活の営みもきちんとしながら、研究を続けている女性たちが多くいることがわかったという。3,400冊以上の要約が楽しめる