農業の歴史の上で、人間は常により良い物を作ろうと改良を重ねてきた。1940年代から1960年代にかけて起こった「緑の革命」により農業技術は爆発的に向上し、ビニールハウスなどの新技術が生まれた。そして今、次世代型農業として注目されているのが植物工場だ。農地の減少、農業人口の低下、安定性、安全性など様々な面から見ても植物工場は注目すべき次世代技術なのだ。
植物工場を理解する上で重要なのは、植物が育つために必要な物は何かということを把握することである。植物は動物と違い、光合成により自らのエネルギー源を作りだすことができる。しかし、これだけでは植物は育つことができず、根からの酸素や無機イオンの吸収が植物の生育に大きく影響する。植物工場ではこれらのことを理解した上で野菜を育てる必要がある。
植物工場は水耕栽培なしでは語れない。水耕栽培の中には主に3種類の方法がある。NFT(薄幕水耕法)、DFT(湛液水耕法)、ロックウールなどの無機物の培地を使った方法だ。水耕栽培のメリットとして上げられるのが、植物を育てる環境の完全コントロールができることだ。これにより生産性の向上、農薬の低減、人件費のカットなどが見込まれる。日本の水耕栽培のパイオニアであるM式水耕研究所の村井会長も「土で行う農業には微生物がつきものです。(中略)植物工場の野菜は生でそのまま食べることができます」と、そのメリットを語る。一方で、限られた種類の植物しか栽培できないというデメリットもある。現在、日本では葉菜類、果菜類、花卉類が水耕栽培で栽培されているが、これらはまだまだ少数派だ。しかし、技術の向上とともに今後水耕栽培の増加が予想される。
植物工場では植物の生長環境を整えることで、理想条件で植物を育てることができる。植物工場は大きく分けると2つの種類に分けられる。①完全人工光型と②太陽光利用型だ。完全人工光型は人工的に理想の環境を作り出すとともに、製品の均一性が取れる方法であり都市部でも生産可能だ。また、人工光を使うためスペースの有効活用をすることで大量生産も可能だ。一方、太陽光利用型は高度な温室とも言い換えられる。太陽光が必要なため大量生産には広大な土地が必要であり、郊外で多く導入されている。農薬の使用の必要性などデメリットはあるがより多種の植物の栽培が可能だ。
植物工場で主に生産される植物は葉菜類だ。他種類の栽培も可能ではあるが、採算が取れるものはまだ少ない。植物工場の生産パターンには3工程あり、それぞれ播種、育苗、本栽培にわけられる。
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