アップル帝国の正体

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アップル帝国の正体
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アップル帝国の正体
出版社
文藝春秋
出版日
2013年07月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

発売されるや否や、あっという間に日本のケータイ勢力図を塗り替えてしまったiPhone。その人気は、美しく隙のないデザイン、使う人のライフスタイルに寄り添う唯一無二のユーザーエクスペリエンスにあることは周知の事実であろう。

そんなiPhoneをはじめとするアップル製品の中は、実は日本企業が供給する部品がかなりの割合を占めていることはあまり知られていない事実である。日本のモノづくりが力を失いつつある中で、世界中で脅威の売れ行きを示すアップル製品に部品を供給できることは、日本企業にとって有望なビジネスチャンスに映る。しかしそこには、アップルに依存した日本企業を襲う、アップルの苛烈なまでの納期やコストダウンなどのビジネス要請があり、アップルの決定次第で経営そのものが揺るがされる実態がある。

本書は、徹底した秘密主義のためこれまで明らかになっていなかったアップルのメーカーとしての姿を、ち密なインタビューをもとに明らかにする衝撃作だ。日本企業はアップルに飲み込まれてしまうのか。日本企業が生き残っていくために何をすべきなのか。本書を読んでぜひ考えてほしい。

著者

後藤 直義
週刊ダイヤモンド記者。1981年、東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後、毎日新聞社入社。2010年より週刊ダイヤモンド編集部に。家電メーカーなど電機業界を担当
森川 潤
週刊ダイヤモンド記者。1981年、米ニューヨーク州生まれ。京都大学文学部卒業後、産経新聞社入社。横浜総局、京都総局を経て、2009年より東京本社経済本部。2011年より週刊ダイヤモンド編集部に。エネルギー業界を担当し、東電問題や、シェールガスなどの記事を執筆する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

本書の要点

  • 要点
    1
    アップルの真の強さは妥協なきハードウェアを作り上げることへの執念である。取引先の技術や生産能力、コスト構造を調べつくし、コスト・納期を徹底的に管理する。ファブレスに徹しながらも、時に巨額の投資を負担し、競合メーカーが考えもつかない方法で洗練された製品を量産している。
  • 要点
    2
    一つの端末で音楽、映像、通話、コミュニケーション、地図、ゲームまで楽しむことができるソフトウェアは、ユーザーを魅了する体験を生み出した。アップルは長年にわたりソフトウェアの分野でノウハウを蓄積してきたが、日本企業はこの分野で大きく出遅れている。
  • 要点
    3
    アップルもまた、ITやインターネット業界の潮流に飲み込まれ、アマゾンやグーグルなどの企業との競争に巻き込まれ始めている。ジョブズの不在に対する不安感を払しょくしきれず、もはやアップルも「普通の会社」になってしまっている。
  • 要点
    4
    日本企業がこれから生き残るためには、新しい技術やトレンドを貪欲に吸収し続け、世界中をカバーするネットワークを築く必要がある。これこそが、グローバルレベルでのビジネスのルールチェンジに対応する道である。まずは劇的な産業構造の変化の波に飛び込む必要がある。

要約

アップル経済圏に飲み込まれる日本メーカー

Fuse/Thinkstock
シャープの落日

もう工場で作るものが、何もなくなってしまった--2013年2月26日、シャープの亀山第1工場では、シャープのベテラン技術者たちが途方に暮れていた。

この工場では前年夏からアップルの最新型スマートフォン「iPhone5」のタッチパネル式液晶パネルを生産するアップル専用工場としてフル稼働していた。それも、この工場の液晶パネルはアップル1社にだけ独占的に供給するという異例の契約で、だ。アップルは独占供給契約を結ぶにあたって、秘密裏に約1000億円をこの工場に出資していた。製造装置にはアップルの管理用バーコードのシールが貼られ、工場内にはシャープの社員がその前の通路を通ることすら禁じられているアップル社員専用のオフィススペースまである。まるでこの工場の主はアップルだと言わんばかりである。

それでも注文があるうちはよかった。しかし2012年の12月、液晶パネルの発注を半分以下に減らすことが判明。そしてこの日、アップル専用と成り果てた亀山工場は、稼働を止めた。後に残ったのは、シャープが負担する毎月100億円近い建屋、設備、人件費などのコストだけだった。

アップル経済圏の光と影

アップルのサプライヤーの5分の1は日本のメーカーだ。たとえばiPhoneのメインカメラ部分に埋め込まれているイメージセンサーはすべてソニー製だ。その他にも、液晶ディスプレイはシャープやジャパンディスプレイ、半導体チップは東芝、イヤホンはフォスター電算が作っている。電子部品では村田製作所、TDK、ローム、太陽誘電、そしてプリント基板はイビデン。日本メーカーの最先端技術が、iPhoneに凝縮されているのだ。

「人類史上初めて、単一機種で販売台数が1億台を超えた電子機器」といわれる記録を作ったiPhone4S。これが意味するのは、強力な販売力を誇るアップルの傘のもと、日本に「アップル経済圏」が形成されたということである。アップル経済圏には知られざる光と闇がある。光の部分は、もはやコスト競争力でアジアの国々に太刀打ちできなくなっていた日本のモノづくりにスポットライトを当てたことである。アップルはプレミアム製品に特化しているため、本当に素晴らしい技術なら、その”仕入れ”にお金を注ぐことに惜しまなかった。一方で闇の部分は、取引先企業の生産能力や集荷時期をすべてアップルに都合の良い「計画経済」に合わせることを求める点だ。アップルの要求に応じられない企業は脱落してゆき、時には経営破たんという最悪の結果を招くことすらある。また、日本の高い技術が、アップルを通じて、徐々にアジアの国々に移転する通り道も作っている。

台湾企業の脅威
Design Pics/Thinkstock

アップルを支える部品や技術を多くの日本企業が提供しながら、どうして日本メーカーはiPhoneのような商品を生み出すことができなかったのか。アップルは、日本メーカーが想像もしなかったような方法で、他社がまねできない製造工程を築き上げてきたのである。

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要約公開日 2014.01.11
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