本書は序章に続く全10章を通じて、アップルとグーグルの闘いを描いた一冊だ。その第1章ではiPhone開発秘話が語られている。
2007年1月9日、アップルのCEOスティーブ・ジョブズは、実に2年半もの歳月を経て開発されたiPhoneを発表した。このとき発表されたiPhoneはまだ「試作品」で、実際に販売するまでに解決しなければならない項目が山のようにあった。まだ製造ラインもできておらず、そのとき存在していた試作品は100個ほどしかなかった。そのため、報道関係者以外の一般人が現物に触れることもできなかった。
しかし、そんな未完成のiPhoneにも関わらず、ジョブズがおこなったデモは完璧だった。iPhoneで音楽をかけ、美しい画面で動画を再生し、電話をかけ、タッチスクリーンのキーボードでタイプしてメールを送るといった様々な機能を披露すると、会場は狂喜した。
発表から24週間後にiPhoneはついに発売された。その後の大ヒットはここで語るまでもないだろう。発表から1年後にはアップルの株価は2倍になった。本書の第3章では不具合だらけのiPhoneを出荷するまでの苦労話が描かれている。
アップルのiPhone開発秘話に続いて、第2章ではグーグルのアンドロイド開発について言及されている。極秘で進められていたアンドロイド・プロジェクトは、約50人のエンジニアが15か月以上にわたって週に60から80時間働き、携帯電話業界を変える革命的な製品を生み出そうとしていた。プログラムを作ってテストし、ソフトウェア・ライセンスの交渉をし、適正な部品の供給者と製造者を探して世界中を飛び回った。半年前から試作品に取りかかって、年末に発表しようと考えていた・・・ちょうどそのとき、ジョブズが華々しくiPhoneを初公開したのだった。
アンドロイド・プロジェクトを率いるアンディ・ルービンは車で移動中にウェブキャストでジョブズのプレゼンを見ていたという。「なんてことだ」ルービンは同乗していた同僚にこう言った。「あの電話は出荷できなくなった」
そのときアンドロイド・チームが開発していた暗号名<スーナー>という電話は、iPhoneで明らかにされたものをおそらく上回るソフトウェアを搭載していた。当時のiPhoneは定期的にiTunesにつながなければならず、同時にふたつ以上のアプリを動かすこともできず、オンラインストアらしきものもなかった。一方、<スーナー>はこれらに対応し、しかもインターネット・ブラウザーの全機能に加えて、検索、マップ、ユーチューブといったグーグルのすぐれたアプリケーションのすべてを使うことが出来たのだ。
<スーナー>の問題は見た目がひどいことだった。ブラックベリーのように従来型のキーボードと、タッチ式ではない小さな画面がついていた。これに対して、iPhoneは見た目のクールさに加えて、仮想キーボードを使うことで、画面の大きさは市場に出回っているあらゆる機種の2倍はあった。タッチスクリーンつきの電話はグーグルも検討していたが、アップルの新製品は彼らの想像を大いに上回っていた。
アンドロイド・チームは、予想外にすばらしかったiPhoneにショックを受け、目標の修正を余儀なくされる。
第4・5章では、いよいよグーグルとアップルの攻防の仔細が語られている。
グーグルではiPhone向けのサービスを提供しているチームの存在などから内部に不協和音が鳴っていたが、アンドロイドの発表がグーグルとアップルのもたらした衝突に比べればかわいいものだった。スティーブ・ジョブズは、アンドロイドの発表を完全な不意打ちととらえ、「どこもかしこもうちのくそ模造品だ」と言って激昂した。
3,400冊以上の要約が楽しめる