検索エンジンをはじめとするグーグルの提供するサービスの基本思想は、顧客やユーザーは常に正しいと考え、彼らの効率性や利便性を高めようというものだ。
グーグル検索は、キーワードのみに頼るそれまでの検索エンジンと異なり、ペイジランク(創業者のラリー・ペイジにちなんだ名称)というアルゴリズムを用いている。ペイジランクはリンクを分析してユーザーが最も頻繁に訪問するサイトを調べ、それを検索結果の上位に表示させる。創業者たちはユーザーたちによる「群衆の叡智」こそ、どのウェブページが最も重要かを測る客観的な指標だと考えたのだ。
グーグル検索のトップページをシンプルで機能的なものとするというのもユーザー視点ゆえのものである。AOLやヤフーのようなポータルサイトがユーザーを自社サイトに囲い込もうとしたり、広告主のサイトを検索結果の上位に表示していたのとは異なり、グーグルの創業者ペイジとブリンは、ユーザーがなるべく速く目当てのサイトを見つけてグーグルのホームページから離れられるようにしようと考えた。
創業者2人は、グーグルのこれまでの成功はユーザー本位の姿勢を貫いてきたためであると語っているが、一方で、グーグルの「ユーザー視点」への疑義を挟まざるを得ない事態も生じてきている。たとえば、かつて創業者たちは「最高のユーザー・エクスペリエンスに逆行する」としてバナー広告を忌避していたが、2007年にはバナー広告を展開する事業者ダブルクリックを買収している。こうしたグーグルの行為に対しては、当然、次のような疑問も生じてくるだろう。グーグルの顧客は広告主なのか、それともユーザーなのか?グーグルは広告主からの収入を確保するために、ユーザー主義の姿勢を崩すのではないか?とはいえ、現在のところはまだ、グーグルは広告主からのプレッシャーに耐え、ユーザー視点を失っていないように思われる。
グーグルは1998年に設立され、創業から4年間は利益を出していなかった。2000年6月にヤフーの公式検索エンジンに採用されたのを機に、世界で40%近い市場シェアを占めるようになったものの、検索から利益を生み出す方法は当初は確立されていなかった。創業者のペイジとブリンは検索結果に広告を表示させることに創業当初から否定的だったからだ。
2002年にリリースされた「アドワーズ」により、グーグルは黒字化の足がかりを掴んだ。創業者の二人による大幅な修正を経てリリースされた広告モデル「アドワーズ」は、CPC(コスト・パー・クリック;クリック数に応じて広告主に課金する)方式を導入し、ユーザーと広告主の利点を大きく高める広告モデルであった。アドワーズは予算に合わせ広告の量を変えられるため、小規模な広告主の参入も可能になるという大きな変革を広告業界にもたらした。
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