本書はまず、SCHAFTを立ち上げるにあたっての資金調達の場面からスタートする。ロボット開発に携わる中西氏と浦田氏という二人の東大助教は大学からスピンアウトしてベンチャー企業を始めることを決意。だが交渉は難航し、ベンチャーキャピタルはSCHAFTに対してヒト型ロボットの実用化開発に着手する前に、まずは要素技術を切り売りしてお金を稼ぐべきだと主張する。
ベンチャーキャピタルの言い分はもっともだったが、加藤氏は二人の技術力の高さとこの事業にかける情熱を前に覚悟を決め、ヒト型ロボット事業に賭けることにした。3年経っても芽が出なければ要素技術を使ったビジネスを始めることを二人と約束する代わりに、自らアドバイザーを務めるベンチャーキャピタルから出資を取りつけることに決めたのだ。
2012年5月に設立された株式会社SCHAFTが米Googleに買収されたのはわずか1年半後のことだった。中西氏と浦田氏は大金持ちになると同時に、Googleの潤沢な予算のもとで好きなだけヒト型ロボットを開発できる環境を手に入れた。出資したベンチャーキャピタルとエンジェル投資家は高いリターンを手にし、SCHAFTに関わった全ての人が満足する結果となった。
本書はSCHAFTを成功に導いた具体的なノウハウが詰まった一冊である。起業によって「世界に勝てる若者」を生み出すための教科書となるはずだ。
本書は起業成功への5ステップを説明した第1章から5章までの本編と、ヒト型ロボットのベンチャー企業である「SCHAFT」の創業からGoogleに売却するまでを描いた第0章、あとがきとしての最終章を加えた7章構成となっている。
著者自身の経験を踏まえた洞察に加え、米シリコンバレーでの起業家の成功事例やスピーチが満載だ。
加藤氏は自身がベンチャー企業を経営した経験や、色々な起業家を見たり調べたりするなかで、起業家が起業するに至った理由を次の3つのパターンに分類できることを見出した。
一つ目は「オタク型」。あまりにある事が好きなので、毎日そればかりやっていたい、もしくは自分が好きな事を周りの人にも分かってもらいたくて、それをビジネスにしてしまった人たちのことだ。スティーブ・ジョブズが自宅のガレージで友人とコンピュータを作って楽しんでいるうちに会社をスタートしたのはオタク型の典型だ。
二つ目の「生活型」は日々の生活を成り立たせるためにビジネスを始めている。これには生活費を稼ぐために起業する人もいれば、金持ちになりたいと願う人も含まれる。
三つ目の「使命型」というのは、そのビジネスが好きかどうかや、そのビジネスで手に入るお金の大小とは関係なく、ある使命感に導かれてビジネスをスタートする人達のことだ。
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