最初に紹介する「約束」は、「究極のマイクロマシンをつくり上げる」だ。
機械はどこまで小型化できるだろうか。そのヒントは、じつは私たちの「からだの中」にある。たとえば、「脳」は優れたコンピュータであるし、「目」はとても高性能なカメラだ。これらの「機械」は、数々の「部品」によって成り立っている。その部品にあたるものが「細胞」で、目の中にある桿体細胞は、光を感じるためのセンサーの役割を担っている。そして、その細胞という「部品」も、さらに小さな部品が集まってできている。実際、桿体細胞の光を感じる機能は、「ロドプシン」というたったひとつの分子が中心になって成り立っているのだ。
科学者たちは、このロドプシンのような、機能をもつ分子を人の手でつくり出し、その分子を組み合わせることによって究極のマイクロマシン「分子デバイス」を生み出すことができるのではないかと考えている。
日本大学理工学部の大月穣教授は、生命がもつ数々の精巧なシステムのなかでも、特に「光合成」に興味をもって研究を進めている。光合成は、太陽の光エネルギーを使って水と二酸化炭素からデンプンを合成する反応。様々な反応過程のうち、「光エネルギーを高効率に集める」という機能を担う「クロロフィル」分子のなかで、光エネルギーを集める役割をもつ「ポルフィリン」とよばれる構造に着目した。そして、加工したポルフィリンを組み合わせることによって、人工の「光捕集アンテナ」を実現した。光を効率よく捕らえるだけでなく、そのエネルギーをある決まった場所へと集めることができる。
大月教授が目指す研究は、このような分子でできた部品をつくり上げる、さらに先にある。単に機能をもった分子をつくるだけでなく、分子(部品)の配置までを最適化することで、精巧なシステムを備えた分子デバイス、いわば「究極のマイクロマシンをつくる」ことなのだ。
「現在の分子デバイス研究は、F1で活躍するスーパーカーの開発に似ているのかもしれません」と大月教授。
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