未来への6つの約束

-日本大学N.研究物語-
未読
未来への6つの約束
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未来への6つの約束
ジャンル
出版社
リバネス出版
出版日
2014年03月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「最近、誰かと『約束』していますか?」裏表紙を見てみると、帯に書いてあるそんな文言が目に入ってドキッとさせられる。

今のように携帯電話が普及していなかった頃、誰かと会うときには、落ち合う場所と時間をあらかじめ決めておき、それを守るという「約束」をしていたはずだ。今はどうだろう。約束の時間に遅れそうになったら、携帯電話でメールを1通。「ごめん、10分遅れる」。それだけで、最初の約束を「なかったこと」にしていないだろうか。

一方、原発問題やSTAP細胞に関わる一連の騒動などで、科学技術への信頼は失われつつある。そんな今だからこそ、「現在行われている研究が、未来に暮らす人たちに約束できること」を伝えよう、というのが本書のコンセプトだ。科学技術は、今の便利な暮らしの一端を確実に担っている。そして、現在行われている科学技術の研究は、未来の暮らしの一部をつくるのだ。

本書では、14学部22研究科32研究所を有し、日本最大の研究領域を誇る総合大学である日本大学が、各研究分野で築き上げてきた力を終結し、現代社会が抱えている問題に挑戦しようと立ち上げた「N.研究プロジェクト」の成果を「未来への6つの約束」として紹介している。その約束が果たされるのは、10年後かもしれないし、100年後かもしれない。研究者の語り口そのままの文章からは、研究そのものを楽しみつつも、必ず約束を果たそうと、時には逆風の中顔を上げて前に進む、そんな研究者の情熱や誇りが伝わってくる。

著者

本書の要点

  • 要点
    1
    世界中でまだ誰も知らないことを追求したり、この世の中のどこにも存在していない新しいものをつくり出したりすることは困難の連続である。それを地道に続けていくことで、世界の誰も真似できない唯一無二の知識や技術をもつ、真のプロフェッショナルになれる。
  • 要点
    2
    研究分野や得意技が違う様々な人とつながることで、研究は広がり、前進する。
  • 要点
    3
    研究はこれまで研究者によって蓄積されてきた基礎のうえで、新しい挑戦や実験をこれでもかというほどに、くじけずにくり返す努力によって支えられている。

要約

機械はどこまで小さくできるか

torn1414/iStock/Thinkstock
化学的知識を総動員し、限界に挑戦する

最初に紹介する「約束」は、「究極のマイクロマシンをつくり上げる」だ。

機械はどこまで小型化できるだろうか。そのヒントは、じつは私たちの「からだの中」にある。たとえば、「脳」は優れたコンピュータであるし、「目」はとても高性能なカメラだ。これらの「機械」は、数々の「部品」によって成り立っている。その部品にあたるものが「細胞」で、目の中にある桿体細胞は、光を感じるためのセンサーの役割を担っている。そして、その細胞という「部品」も、さらに小さな部品が集まってできている。実際、桿体細胞の光を感じる機能は、「ロドプシン」というたったひとつの分子が中心になって成り立っているのだ。

科学者たちは、このロドプシンのような、機能をもつ分子を人の手でつくり出し、その分子を組み合わせることによって究極のマイクロマシン「分子デバイス」を生み出すことができるのではないかと考えている。

日本大学理工学部の大月穣教授は、生命がもつ数々の精巧なシステムのなかでも、特に「光合成」に興味をもって研究を進めている。光合成は、太陽の光エネルギーを使って水と二酸化炭素からデンプンを合成する反応。様々な反応過程のうち、「光エネルギーを高効率に集める」という機能を担う「クロロフィル」分子のなかで、光エネルギーを集める役割をもつ「ポルフィリン」とよばれる構造に着目した。そして、加工したポルフィリンを組み合わせることによって、人工の「光捕集アンテナ」を実現した。光を効率よく捕らえるだけでなく、そのエネルギーをある決まった場所へと集めることができる。

大月教授が目指す研究は、このような分子でできた部品をつくり上げる、さらに先にある。単に機能をもった分子をつくるだけでなく、分子(部品)の配置までを最適化することで、精巧なシステムを備えた分子デバイス、いわば「究極のマイクロマシンをつくる」ことなのだ。

「現在の分子デバイス研究は、F1で活躍するスーパーカーの開発に似ているのかもしれません」と大月教授。

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要約公開日 2014.05.27
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