その科学があなたを変える

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その科学があなたを変える
ジャンル
出版社
文藝春秋
出版日
2013年10月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「成功を望むなら、まず考え方を変えることです」。多くの自己啓発本やビジネス書でこの文句を目にすることがあるだろう。そして多くの場合、主張には同意しながらも行動は結局変えられず、また日々漫然と過ごすことが多いのではなかろうか。

そのような中で、本書は行動を変える理論と後押しの言葉に満ちており、巷に溢れている自己啓発本とは一線を画す。今から一世紀以上前、哲学者ウィリアム・ジェームズによって提唱された考え方を基盤としており、「行動を変えれば簡単に思考や感情が変えられる」という主張を裏付ける検証結果も豊富である。本書ではこの主張を「アズイフの法則」として日常のさまざまな場面を想定して例にあげている。アズイフの法則を使えば、人の感情、やる気、信念、性格の成り立ちを解明できることが次第にわかってきたうえに、身体にも影響を与えるというのだ。

本書の中では、たびたびこれまでの行動を変えるよう指示される。たとえば、「この本のページを破きなさい」というもの。本を破くというのはなかなか勇気のいる行動だ。恐らく今まで一度も経験したことがない人が多いだろう。だが、あえてそれを実行する。その行動から、あなたの変化が生まれるのである。サイエンスに基づいた新しい方法論に後押しを得て、自分を変える一歩を踏み出そうではないか。

著者

リチャード・ワイズマン
1966年生まれ。英国ハートフォードシャー大学教授。プロマジシャンとして活躍後、ロンドン大学を卒業。エディンバラ大学で心理学の博士号を取得した。心理学を一般に広く啓蒙し、超常現象の謎を科学的に解明する研究で国際的に知られる。疑似科学を鋭く批判するいっぽう、一般読者向けの科学書執筆やテレビ番組制作に携わるなど、その活動は幅広く、これまで世界中で150本以上の番組に登場。自己啓発メソッドを科学的に検証した『その科学が成功を決める』、超常体験のからくりを解き明かした『超常現象の科学』などの近著がいずれも日本でヒットしている。

本書の要点

  • 要点
    1
    幸せになりたければ、すでに幸せであるかのように行動をすればいい。
  • 要点
    2
    感情によって身体の変化が引き起こされるのではない。身体が変化したことによって、あなた自身で自分の感情を理解するのである。
  • 要点
    3
    やる気があるかのように行動することを習慣づければ、本当にやる気になることができる。

要約

【必読ポイント!】幸せになりたければ、行動しよう

Anthony Ong/Digital Vision/Thinkstock
感情は行動によって生み出される

チャールズ・ダーウィンといえば、生物の進化について記した偉大な名著『種の起源』 の著者としてその名を聞いたことがあるだろう。実は、彼は『人および動物の表情について』と題する独創的な本を出版し、この中に、世界で初めて感情に関する心理学的研究をおこなったという記述を残している。人間には、顔の表情から気持ちを読み取る能力があらかじめ脳に組込まれているというのだ。

ダーウィンのこの理論を自分の新しい感情理論の基礎に取り入れ大胆な仮説を組み立てた心理学者がいた。それがウィリアム・ジェームズである。彼は、人はほかの人の顔をみてその感情を読み取るように、自分自身の表情を感知して、自分がもつべき感情を判断するのではないかと考えた。つまり、あなたは「自分が楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」という仮説だ。

そこでジェームズはすぐに試してみることにした。行動によって感情が生み出されるならば、人はあたかもそれを体験したかのように行動すれば、いかなる感情も生み出せるはずだ。「幸せになりたければ、すでに幸せであるかのように行動をすればいい」この単純な原理を著者は「アズイフの法則」と呼んでいる。

騙されたと思ってぜひ試していただきたい。人は笑顔を作ると幸せに、眉をしかめると不愉快に感じる割合が極めて高いという実験結果があるのだ。実験では、被験者に顔面筋肉の電気活動の数値を測定するため、電極を左右の眉と、唇の両端、顎の両端に取り付けると説明し(もちろん電極は偽物なのだが)、左右の眉の電極を近づけてもらうことで怒った顔をつくらせたり、唇の両端の電極を後ろに引いてもらうことで笑顔をつくらせたりした。被験者たちは顔の表情を変えたあと、どのような感情を感じたかをチェックしてもらうと、結果は前述のように明確であった。ところが、なぜそのような気持ちを感じたのかと訪ねると、それは自分が作った表情のせいだと答えた人はごくわずかで、多くの人は、自分の気持ちが変化した理由を全く説明できなかったという。

このアズイフの法則は、気持ちだけでなく、肉体にも変化を起こすのだろうか。それを調べた実験がある。まず、被験者には自分がこれまで怒りを感じた瞬間を思い出し、頭の中でそれを再現してもらう。そして、もうひとつ、単純に怒りの表情をつくってもらう。当然ながら、過去の恐怖体験を思い出すと被験者の心拍数はあがり、皮膚温度が低下するという身体の変化が現れた。そしてなんと、顔の表情を変えただけでもまったく同じパターンの生理変化が起きたというのだ。

つまり、「ある感情をあたかも実体験しているかのように行動すると、気分が変わるだけでなく、肉体にも強い直接的な影響があたえられること」が実証されたのである。

笑いヨガの絶大な効果
Jacob Wackerhausen/iStock/Thinkstock

1995年、インドの開業医として働いていたマダン・カタリア医師は笑いに医療効果があることを知り、ある朝7時に近くの公園に出かけ4人の人におたがいにジョークを言って笑ってもらうことにした。

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要約公開日 2014.06.13
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