爆速経営

新生ヤフーの500日
未読
爆速経営
爆速経営
新生ヤフーの500日
著者
未読
爆速経営
著者
出版社
日経BP
出版日
2013年11月11日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「爆速経営~新生ヤフーの500日」というタイトルだけで、もう本書を手に取ってしまう人も多いのではないだろうか。東京ミッドタウンにあるヤフーのオフィスは、「爆速」という目立つ看板が掲げられ、出店無料化施策に伴う人だかりで物凄い熱気を放っている。本書を出版する前後に、ヤフーは立て続けに大胆な施策をプレスリリースしており、今業界で最も注目されている企業である。

本書は爆速、爆速、と念仏のように唱える書籍では決してない。そこで繰り広げられるのは、ヤフー新経営陣の鋭い洞察と、宮坂新社長の等身大の経営だ。カリスマ経営者と言われる人は世の中に多いが、私は宮坂社長の運営方針に、カーネギーの墓碑に刻まれた「自分より賢き者を近づける術知りたる者、ここに眠る」という言葉を体現した姿を見る。本書の巻末にヤフーの経営陣が1人1人紹介される例外的な扱いがなされるほど、煌びやかな陣容を築き、その力を如何なく発揮させているのである。

本書はIT業界に関わる方だけではなく、全てのビジネスパーソンに是非読んでもらいたい一冊だ。企業の競争優位性の最も重要な源はその意思決定と実行の速度だ、という事実を改めて思い知ることだろう。それがもはやベンチャー企業とは言えないヤフーという大企業で実行されているのだから圧巻である。

ライター画像
大賀康史

著者

蛯谷 敏
日経ビジネスDigital編集長
2000年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BP社入社。入社後は通信業界誌「日経コミュニケーション」の記者として通信業界を担当し、2006年から「日経ビジネス」に所属。情報通信、ネット、金融、商社、建設、不動産、住宅、保険、政治などさまざまな業界を取材する傍ら、スマートフォン向けアプリ「日経ビジネス5ミニッツ」を開発。2012年9月より現職、日経ビジネスのデジタル端末向けのコンテンツやサービス開発を担当している。

本書の要点

  • 要点
    1
    スマートフォンの隆盛により、ネット利用の中心がパソコンからスマートフォンに移り、巨大な集客力をテコに広告収入を稼ぐというヤフーのビジネスモデルの根幹が揺らぎかねない事態となった。
  • 要点
    2
    新社長となる宮坂氏は第一に相棒として川邊氏を指名、その後経営メンバーの人選に注力した後「オンリーワン」「異業種最強タッグ」「未踏領域への挑戦」という新経営方針の策定を行う。
  • 要点
    3
    「爆速」という言葉による意識変化は大きい。社外の人からも、「『ヤフーさん、爆速ですね』『爆速でお願いします』」というメールを受けるようになり、社員の目つきが変わった。そして新生ヤフーの経営陣は「爆速&試行錯誤」という言葉とともに、組織を変革している。

要約

革命前夜

ヤフーは実にMOTTAINAI
Fuse/Thinkstock

本書は現ヤフー社長、宮坂氏の就任前後の逸話、ヤフーの改革内容が中心に語られており、その中で注目すべきは人にフォーカスが当たっていることだ。これは宮坂氏の考え方にもよるところであろう。このハイライトにおいても、極力人の紹介部分を残す形でどのような経営メンバーが参画し、活躍しているかも含めて紹介をしていきたい。

2011年10月26日に、ソフトバンク本社25階で開かれた孫氏主宰の社内大学「ソフトバンクアカデミア」での出来事が印象的だ。ある受講生が披露した前代未聞の発表に起因して、大きなうねりが動き出す。その発表内容は次のようなものである。

プレゼン冒頭で、スクリーンに「MOTTAINAI」という言葉と共に、笑顔を浮かべる黒人女性の写真が映し出される。投影されていたのは、ケニア出身の環境保護活動家、故ワンガリ・マータイという「モッタイナイ運動」と呼ばれる環境活動を行ったことで有名な女性である。

そしてこう続くのである。「私が今、非常にもったいないと思っているもの。それはヤフーの経営体制です!」スピード感の欠如、リスク回避志向、組織の縦割りの壁、優秀な社員の退職など、次々と述べられた。

「ううむ」孫氏はただ一言、短く唸ると、黙り込んだ。

スマートフォンがネット業界に与えた地殻変動
iStock/Thinkstock

2007年1月の米アップルによる「iPhone」の発表後、スマートフォンは今までのiモードと発想を逆転したインターネット端末に通話機能が付いたものとして本格的なデビューを果たす。2012年末、スマートフォン市場は2億1600万台を超す規模にまで成長し、その成長の勢いはパソコン市場を凌駕した。

これが業界を揺るがすほどのインパクトがあるデバイスなのか、単なるパソコンを小型化したものなのか、前社長である井上氏は当初「影響は限定的」と捉えていたようだ。しかし、現実は井上氏の読みとは異なり、スマートフォンが爆発的に普及、アプリの利用が主流となりブラウザーはアプリの1つに成り下がってしまった。

この変化はヤフーに甚大な影響を与える。ネット利用の中心がパソコンからスマートフォンに移れば、巨大な集客力をテコに広告収入を稼ぐというビジネスモデルの根幹が揺らいでしまうのである。あたかもクレイトン・クリステンセン教授がいう、「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまったようだ。

【必読ポイント!】まず、登る山を決める

電撃指名

宮坂氏は1997年、創業2年目のヤフーに53番目の社員として入社。顧客リスト片手に電話をかけまくり、アポなしで営業に飛び込む、攻めのタイプだ。

孫氏から社長就任の話が出された際には、即座に結論を出すことはできず、「一晩考えさせてください」と言ったものの、カリスマ的な経営者である井上氏の後を継いで、時価総額2兆円以上の巨大企業が率いられるのか悩んだ後、要請を受けることを決意する。

社長就任に当たり、孫氏と井上氏から「人事だけはおまえが納得するように決めた方がいい」と言われていたこともあり、宮坂氏はまず相棒探しを始める。

相棒に選んだのは7歳年下の男、川邊健太郎氏。

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要約公開日 2014.01.18
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