「企業変革」入門

ウェルチ、ガースナー、ベスーンに学ぶ
未読
「企業変革」入門
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ウェルチ、ガースナー、ベスーンに学ぶ
未読
「企業変革」入門
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年02月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「企業の寿命は約30年である」という言葉をあなたもどこかで耳にしたことがあるだろう。どんなに革新的な商品やサービスを生み出し世界を席巻したとしても、30年も経てばそれらは陳腐化してしまうのだ。

しかし、その寿命をはるかに上回る期間を生き延びている企業が存在する。本書で紹介されている3社がその典型的な存在だ。ゼネラル・エレクトリックは1878年創業。実に130年以上の歴史を誇り、米国ダウ平均株価の構成銘柄のうち、1896年から現在まで存在している唯一の企業である。IBMの創業は1911年。一度は危機に瀕するものの、現在は世界最大級のコンピューター関連のサービス、コンサルティング、ソフトウェア・ハードウェアの製造・販売企業である。コンチネンタル航空は1934年創業。2010年にユナイテッド航空と持株会社方式で経営統合し、2012年にユナイテッド航空と完全統合されて消滅したが、それまで米国航空会社のリーディングカンパニーのひとつとして活躍し続けた。

これらの企業は30年という寿命をどのようにして突破したのであろうか。本書はその秘訣を3人のカリスマ経営者の手腕に着目している。その3人とは、ジャック・ウェルチ(GE)、ルイス・ガースナー(IBM)、ゴードン・ベスーン(コンチネンタル航空)である。本書を読めば、3人の大企業の舵取りがいかに卓越しているか理解できるだろう。多読家の方にとっては有名なエピソードが多いかもしれないが、3人の名経営者を横串で評価している内容に新鮮さを感じる。彼らをまだ良く知らないという方には最適な入門書であると言えよう。

著者

鈴木 博毅
1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、マーケティングコンサルタント。MPS Consulting Company,Inc.代表。大学卒業後、貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後、国内営業系コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。独自の研究とデータ分析から、売上増加を求める企業への集客・戦略コンサルティング、営業部隊などの指導・研修を数多く手がける。

本書の要点

  • 要点
    1
    失速する企業には、①責任をとらず“自分の問題ではない”という病、②分権と官僚主義が狂気のように進行、③利益を生み出す構造を見失って行動している、という3つの共通点がある。
  • 要点
    2
    3人のカリスマは売上向上に向けて、①既存市場での優位性を強化する、②拡大している市場を追い風にする、③新規市場そのものを創造する、という3つの手段を選択した。
  • 要点
    3
    3人のカリスマは、①重複する間接業務の一元化、②財務システムの一新、③組織階層の縮小、④管理するだけの中間層のリストラ、⑤部門ごとの採算性の精査、という手法で生産性改善を行った。

要約

3人のカリスマ経営者

ジャック・ウェルチ

本書の内容に入る前に、本書の分析対象である3人のカリスマ経営者の経歴を紹介しよう。まずはジャック・ウェルチだ。

1935年生まれ。1957年、マサチューセッツ大学を卒業。1960年にイリノイ大学で博士号を取得。同年、ゼネラル・エレクトリック(GE)に入社。1981年には同社で最年少の会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する。

「No1かNo2になれない事業からは撤退する」という方針のもと、企業買収や再編を繰り返した。大量の整理解雇でも知られるが、「フォーチュン」誌の「20世紀最高の経営者」に選出されている。

ルイス・ガースナー

1942年生まれ。ダートマス大学を卒業後、1965年、ハーバード大学ビジネス・スクールで経営学修士(MBA)を取得。同年、米国マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その後、アメリカン・エキスプレス、RJRナビスコで会長兼最高経営責任者(CEO)を歴任し、1993年にIBMのCEOとなる。外部からのCEOは、IBM創業以来初めて。累積赤字150億円を抱えていたIBMを立て直したことで知られる。

ゴードン・ベスーン

1941年生まれ。17歳で米海軍入隊、航空機の整備士となる(夜学で高校卒業資格も取得)。1979年、ブラニフ航空に入社。在職中にアビレーン・クリスチャン大学で学士号を取得する。その後、ウエスタン航空、ピードモント航空を経て、1989年にボーイングの役員に就任。1994年2月、コンチネンタル航空の社長兼COO(最高執行経営者)となり、同年12月には社長兼CEOに就任。倒産の危機に瀕していた同社は翌1995年に黒字に転換した。

凋落という現実に向き合えているか

shutter_m/iStock/Thinkstock
3社にはどのような危機が迫っていたのか

GE、IBM、コンチネンタル航空、これら3社は間違いなく名門企業であるが、常に経営が健全であったかと言えばそういうわけではない。少なくとも本書で語られている3人のカリスマ経営者がトップに就く前は、いずれの企業も大きな問題を抱えており、崩壊寸前の企業もあったほどだ。3社はどのような経営課題を抱えていたのだろうか。

まず、IBMは1970年代から始まるパーソナル・コンピューターへの移行に乗り遅れてしまう。その結果としてIBMが主軸としていた大型コンピューターは時代遅れとなってしまい、1993年には約50億ドルという巨額の損失を発表、倒産寸前の危機に陥った。

次に、コンチネンタル航空は1994年時点で、自社のサービス品質を高めることができず、従業員はやる気を完全に失い、まさに墜落寸前の状態であった。

最後に、GEは必要に迫られる前に、自ら変革するという道を選んだため、先の2社とは異なり破たん寸前にまで追いやられてはいないものの、新興国の生産性向上に脅かされ、巨大組織にありがちな官僚主義と管理・報告業務の山に埋もれて、深刻な業績低下傾向にあったのである。

名門企業の失速、3つの共通点
Fuse/Thinkstock

著者は、3社の失速には3つの共通点があると指摘する。名門と呼ばれる企業には、たいていの場合、学業成績も優秀で人格も優れた人たちが選抜され入社している。しかしその3つの共通点には、そこで働く人の優秀さ、愚かさとは関係がなく、別の力学が働いているのだ。

1つ目の共通点は、「責任をとらない上司、“自分の問題ではない”という病」である。

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要約公開日 2014.02.28
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