2013年3月期の日本電産決算説明会の場。売上高は7092億円7000万円(前期比3.9%増)だったが、最終利益は79億9800万円(前年比▲80.4%)という21年ぶりの不振である。しかし、そこでの永守社長の態度は、神妙にかしこまることもせず、意気軒昂であった。常と変らず声も態度も大きく、ほとんど彼の独演会になっていた。
業績低迷はスマホ・タブレット席捲に伴うパソコン市場の急落が主要因。日本電産最大の柱、精密モーターを組み込むパソコンのハードディスク市場の縮小によるものだ。今回、過剰になった精密モーターの生産設備を一挙に減損し、バランスシートの修正に区切りを付けた。相場用語で言う「悪材料出尽くし」により、株価は前日比490円高の6510円と大幅に上昇。投資家は「日本電産を取り巻く問題は解決可能」と判断したのである。
日本電産は、1973年に永守氏がCOOの小部氏らとともに創業、徒手空拳で作り上げた世界有数のモーターメーカーである。高成長を支えた原動力の1つは、目標達成への集中力。「1日24時間は誰にも平等にある。それをどう使うかはそれぞれの人による」と永守氏が言うように、働き方は猛烈そのものだ。日本電産の3大精神に掲げられる、「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」が社風を表す。
強烈な目標実行力により、主に90年代半ばから積極果敢にM&Aに挑む。買収対象の多くは破綻寸前の企業。国内外の37社を傘下に収め、日本電産を象徴する強烈なコスト削減を梃子に全て再建を果たす。
日本電産は直面するパソコン市場の縮小からどう成長に舵を切るのか。現在取り組んでいるのは、「精密モーター」1本柱の構造から、「車載用モーター」「家電・商業・産業用モーター」「関連機器などその他製品」を加えた4本柱への転換である。
車載用モーターとは、電動パワーステアリング・エンジンオイルのポンプ、シートの位置調整などへの用途に加え、ハイブリッド車駆動用メインモーターも含まれる。また、家電・商業・産業用モーターには、洗濯機、食洗器、乾燥機などの家電用、エアコン、エレベーターなどの商業用、そしてポンプ、コンプレッサーなどの産業用が含まれている。
それら新たな柱の構築のために何をしているのか。その中核は海外企業のM&Aである。
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