キンドル1が発売されたのは2007年、当初は著作権切れの本ばかりだったが、2009年のキンドル2の頃には新刊書が発売、売上が一気に拡大する。キンドルを作る際に、ソニーの電子端末(リブリエ)を真似して作れと言ったという話があるほど、技術的にはキンドルは新しくない。
事業的に失敗したリブリエとは何が違ったのか。それは通信モジュールの内蔵だ。キンドルが通信モジュールを内蔵した理由は、電子書籍の価値を見直した点にある。「いつでもどこでも好きな本を読みたい」。これが読書家の願いと捉えたのだ。つまり、「大量に保存したい」「本棚をいらないようにしたい」と日本の電機メーカーが考えた一方で、アマゾンは異なった視点で定義をしたのである。
ソニーの失敗要因は、リブリエのコンテンツがレンタル型だったという点にもあろう。ダウンロードした本を読める期間は60日間、契約は月に3~4冊ダウンロードできるというものだった。このような貸し本屋モデルになったのは、出版社との交渉力が強くなく売れ筋および新刊の許可を得ることが難しかったためかもしれない。しかし、結果として「顧客の価値」に応えられなかったのである。
このように考えればキンドルの成功は、2つのビジネスモデル革新による。
1つは通信モジュールの内蔵にあり、もう1つはサプライチェーンの制約に打ち勝ち、紙より安い本を大量に取りそろえることに成功したことだ。紙の本から顧客を奪うカニバリゼーションが発生し得るが、そうなっても良いと割り切り、価格面でもインパクトを生み出せたのである。
更にキンドルはキンドルアプリを用いることで、iPhone、iPad、Androidでも読めるようにし、プラットフォームを解放した。そうすることで、ハードを売ることによる収入に頼らず、コンテンツストアの収入により、収益化を図ったのだ。つまり、ソニーのリブリエとは異なるビジネスモデルを有すことになり、最終的に有利に働いたと言える。
キンドルのビジネスモデルは極めて仮説性が高い。27ドルで売れる新刊小説を9ドル99セントで売り出し、爆発的に販売するというような「仮説」に賭けたところに、ベゾス氏の凄さがある。
つまり、ハードの生産コストと通信コストを回収するコンテンツ販売量を「緻密な計算」により算出する。1台ハードを売って、ユーザーがいくつコンテンツを買ってくれるのか、その損益分岐ラインの計算を巧妙に行った。
ビジネスモデルには、「仮説性の高さ」に加え、「緻密な計算」による妥当性チェックが必要であり、これらがキンドルの成功に大きく寄与しているのである。
玉子屋という仕出し弁当のダントツ企業をご存知だろうか。玉子屋の創業は1965年、創業者は菅原勇継氏である。
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