川上氏は、ビジネスにおいてロジックを組み立てるとき、これまでに遊んでいたゲームが思考の源になっている実感があるそうだ。それは、ゲームに求められる能力、あるいはゲームを通じて伸ばせる能力は、ビジネスの様々な局面で応用可能なものだからだという。川上氏が代表を務めるドワンゴでは、ゲームにはまりすぎて普通の社会生活が送れなくなってしまった、いわゆる「廃ゲーマー」が多く活躍している。
かくいう川上氏もかなりのゲーマーだと自認しているが、現実というゲームの方がよりリアルだと感じるようになってからは、あまりゲームをやらなくなったそうだ。川上氏にとっては、ビジネスもそうしたリアルなゲームのひとつなのである。
川上氏はどのようなゲームで思考方法を鍛えていたのか。それは、非電源型のシミュレーションゲームだったという。プレイするのに10時間もかけて考え抜くこともあるシミュレーションゲームは、思考のトレーニングとして最適であると川上氏は語っている。
シミュレーションゲームなどによって、多層的な思考の立て方ができるようになれば、現実社会の競争のなかでも優位に立つことができる。特に『Age of Empires』などのウォーシミュレーションゲームを通じて、多くのことを学ぶことができたと川上氏は語る。そのなかでも大きな意味を持つのは、本書のタイトルでもある「ルールを変える」という発想だ。
人間がルールを判断してプレイするゲーム(コンピューターを使わないもの)では、プレイヤーが勝手にルールを変更するということが起こる。ルールの一部が変わることによってゲームそのものが変わり、それによって勝者も変わる。
ルールの変更によりゲームが変わるのは、現実の世界でも同じと言えよう。既存のルールにただ従っていたのでは、新規に参入した者は絶対に勝てないシステムになっていることがあるだろう。しかし、そんな状況でも「ルールが変わるタイミング」「ルールを変えられる瞬間」をどこかで見つけられることがある。
ビジネスもゲームと同様に、勝つためには綿密な「ルールの検証」から始めるとよい。ルールを緻密に検証すると、古くからの業界の慣習など、「変えた方がいいルール」は意外と多いことに気が付くだろう。時代が移り変われば既存のルールが最適解ではなくなっていることはよくある。だからこそ、原理原則を見直し、ルールを再検証する姿勢が大切なのだ。
ビジネスにおいても、川上氏の戦い方はゲームと似ている。その戦い方とは、「最終的にどうなるか」というイメージをはじめに持つようにして、そこから逆算するようにそこまでのプロセスを考えていくことだ。
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