サイエンス・フェアの最高峰、「インテル国際学生科学フェア(以下インテルISEF)」で発表される研究レベルは非常に高い。ある者は麻薬探知に利用可能な調教したゴキブリを、ある者は癌の進行を遅らせる薬の合成方法を発表している。核融合炉やナノテクノロジー、遺伝子組換え作物についての発表もある。インテルISEFにおいては、実に出場者の5人に一人が特許を出願しており、中にはその特許をもとに1200万ドル(約12億円)以上を売り上げる企業を経営している高校生もいるほどだ。
企業や研究機関によって使われることになった研究も数多くある。たとえばNASAが木星に向けて打ち上げた探査機ガリレオが使用したデータは、サイエンス・フェアに出場した17歳の高校生が集めたものだった。複合リノール酸が結腸癌細胞の90%を殺すことを発見した研究は、M・D・アンダースン癌センターがさらなる研究を進めるきっかけとなった。
アメリカでは、数学・理科の教育水準を引き上げる努力をする一方、こうした優れた科学研究をする高校生たちをスポーツで優勝する高校生と同様に賞賛し、科学を振興しようという動きも起きている。オバマ大統領は、毎年ホワイトハウスでサイエンス・フェアを行うと2009年に発表している。
テイラー・ウィルスンは10歳の時、初めて手作りの爆弾を爆発させて両親を驚かせた。ネットで作成方法を調べたのだ。同じ年に『放射性ボーイスカウト(The Radioactive Boy Scout)』という小説を読み、それからはすっかり放射線に魅せられてしまった。父親に頼み込んでガイガーカウンターを借りてきてもらったのを手始めに、eBayで様々な放射性物質に関連したグッズを入手するようになった。ラドン探知機、核燃料ペレット、鉛遮蔽容器などだ。しかし、こうしたグッズの入手では飽き足らず、テイラーはなんと自分で核融合炉を作ってみたいと思うようになる。
12歳の時、原子力愛好家たちのクラブ「中性子クラブ」に質問メールを出したのがきっかけで、テイラーは27歳の大学院生カール・ウィリスと出会う。カールはテイラーに関連論文を送ってくれ、電話で質問に答え、最後には一緒に研究旅行に出かけるようになった。
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