本書の第1章では、著者である清川氏がスタンフォードに留学するまで、どのような人生を歩んできたかが描かれている。
清川氏は1982年、大阪生まれ。プロゴルファーをめざしていたが、突然の怪我をきっかけに方針を転換。ビジネスの世界で生きていく決心をした清川氏は、かつてから父に繰り返し言われていた「アメリカには絶対に行ってこい」という言葉を胸に、大学を休学してサンフランシスコに語学留学した。そのとき、オフタイムに訪れたスタンフォード大学の見学が、「アメリカのビジネススクールに行きたい」という思いを強固なものにしたのだ。
帰国後最後の大学1年間は英語の勉強に費やして、卒業後はインディアナ大学大学院に留学、会計学とファイナンスを集中的に勉強した。卒業後はその経験を活かす形で、大手投資銀行であるUBS証券東京支店に入った。UBS証券ではM&Aや資金調達を担当し、朝9時から朝4時まで働いていたそうだ。
その後、より実業に近い業務に携わるべく、企業再生を手掛ける経営共創基盤に転職した。企業再生案件の現場で清川氏は、一時的に傷を治すよりも社会全体のイノベーションがこれからの日本経済には必要なのではないかと感じ、スタンフォード大学の受験を決意。2009年8月についに留学を果たした。
第2章では、スタンフォード大学の特色的な文化についての紹介がなされている。本書で最も分量が割かれている個所でもあり、ハイライトではそのいくつかのエッセンスを紹介したい。
スタンフォード・ビジネススクールの入学式では、「今ここに集まったということは、この学校の理念でもある『世界を変えよう』という言葉から一生逃げられない」という言葉をかけられ、世界を変えるという使命を学校から突きつけられる。
それを実現するための大学の授業選択は実に特徴的で、専攻というものがない。必修科目は最低限で、あとは自由選択である。異質なものが集まってこそイノベーションは生まれる、という学校の精神を土台にカリキュラムは出来上がっているのだ。
さらに特徴的なのが、スタンフォード・ビジネススクールでは外部に成績を開示しないという規範である。卒業後、就職する際に成績が必要となると、自分が得意な授業だけしか選択しなくなってしまう。だがこれはスタンフォードの精神からすると本質的ではない。得意だから選択するのではなく、学びたいから選択するのがスタンフォードの文化である。
スタンフォードの入学式では、このような質問が投げかけられるという。
「この中で将来起業家になりたい人は、どれくらいいますか?」
3,400冊以上の要約が楽しめる