「やりたいことなんてない」という人がいる。本人はそのせいで困っていると思っているかもしれない。たしかに何もないよりはあったほうが安心できるのだろう。
だがそんな人に対して、家入氏は「夢も希望もただの荷物でしかない」と主張する。
夢や希望をもったところで、それらはその人の人生を保証してくれないし、その人の人生を成功へと導いてくれるわけでもない。夢も希望も曖昧で頼りない存在であり、生きる糧になることもあるかもしれないが、足を引っ張ることもあるからだ。
森田氏も家入氏と同じように「夢をもつことが悪いことだとは思わないが、夢に執着することはおすすめできない」と語り、そのうえで「何かをはじめるときに重要なのは、失敗しないための準備でも、最後までやり遂げようとする決意でもなく、逃げる早さだ」と説いている。
逃げる早さとは、見切りをつける早さと同義だ。面白そうだなって思ったらやってみる。気になったら手を出してみる。つまずいてしまったらいったん身を引いて、体勢を立て直した上で再度首を突っ込んでみる。そうやって何かをはじめてみることのほうが、夢を探すことよりも大切だ。実際、森田氏は起業家と教授の両立を目指し今に至っている。
夢も希望もないと嘆く人に著者の二人は、「荷物なんか捨てて、目の前のことやってみようよ」、そう教えてくれている。
愛想が良かったり、口が達者で世渡り上手な人は、世渡り下手な人からしてみれば、うらやましく見えるかもしれない。だが、二人は「世渡り下手で何が悪いのかわからない。世渡りが下手でも、その人なりの生き方がある」と教えてくれる。
実際に家入氏は、世渡り下手な人の方が愛着が湧くし、成功すると思っているそうだ。世渡りが下手な人ほど、這いつくばって生きているから人間らしさがにじみ出てくるし、だからこそやることに物語が生まれる。そして世渡り下手な人ほど、何かに集中したときのパワーがすごいからだ。世渡りが下手なら下手なりに、そのことを認めて開き直ってしまうほうがいい。
森田氏は「世渡り上手な人の人生なんて面白みに欠けるから憧れない方がいい」と断じている。世渡り上手な人は結局、自分では何もしていない人であり、誰かに気に入られ、その人の周りで愛想を振りまいているだけだと思うからだ。世渡り上手な人は中身がない人も多く、一部の人を除き、皆が口を揃えて「あの人はずるがしこい」「あの人ちょっと苦手」と思われているケースが多い。
一方、何かを成し遂げるためにがんばっている人は山あり谷ありで、失敗もたくさん経験し、いろんな経験値を積んでいく。故に経験を積んでいる人は、人間力が高く、周りからも信頼されるようになるのである。
だからこそ、著者の二人は世渡り上手を目指すのではなく、世渡り下手でも、ひたすら自分に正直に生きていくようにしている。
自分に正直に生きるのは、他人からみたら不器用な生き方かもしれないし、ときには敵をつくることだってあるかもしれない。しかし、世の中には合わない人だっているだろう。不器用な人ほど、幸せになれる。そう二人は背中を押してくれるのだ。
反対意見を言ったり、拒否したりできない。ついつい八方美人になってしまうことがある。嫌われるよりも好かれたい。それは誰にとってもいえることだと思う。
しかし、「残念ながら出会った人全員が、みんな自分のことを好きになってくれることは絶対にない」「きみが誰からも好かれようと努力をしているのなら無理だから諦めたほうがいい」と著者の二人は断言する。
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