最高の自分を引き出す法

スタンフォードの奇跡の教室 in JAPAN
未読
最高の自分を引き出す法
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スタンフォードの奇跡の教室 in JAPAN
未読
最高の自分を引き出す法
出版社
大和書房
出版日
2013年06月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

人は誰しも悩みを抱えている。そして多くの人に共通することとして、「突発的な欲求に対してノーと言えない」悩みはないだろうか。大学時代の試験対策を早朝起きてからやろうとするが結局寝過ごしてしまう、ダイエットすると誓ったはずなのにコンビニの新商品スイーツについ手を伸ばしてしまう。つい目先の利益を優先して行動してしまう衝動を、どうにかしてコントロールすることはできないものだろうか。

本書はそんな悩みをもった人にはうってつけの書籍だ。解決策が書いてある。本書の主題は目標を達成するために、どのようにして強い意志力を持つかということである。著者であるケリー氏は、スタンフォード大学でまさにその意志力についての講義を行っており、その講義をもとにした著書「スタンフォードの自分を変える教室(2012年 大和書房)」は世界中で爆発的なヒット作となっている。本書はその続編であり、ケリー氏が日本で行った特別講義を書籍化したものである。

本書によると、そもそもなぜ我々が衝動的な行動をとってしまうのかについては、科学的に証明できるという。好物を見ると、身体に「闘争・逃走反応」が起きストレスホルモンが分泌され、理性的な意思決定を下すための前頭前皮質が機能低下を起こす、というのがそのメカニズムのようだ。しかし、ケリー氏はこのストレス反応を抑制し、コントロールすること、ひいてはその力を後天的に鍛えることすら十分に可能であると解説している。

私も本書を読んでから、グルメサイトを見ながらトレーニングをしているが、確かに効果がありそうだ。

著者

ケリー・マクゴニガル
ボストン大学で心理学とマスコミュニケーションを学び、スタンフォード大学で博士号(心理学)を取得。スタンフォード大学の心理学者。専門は健康心理学。心理学、神経科学、医学の最新の研究を応用し、個人の健康や幸せ、成功および人間関係の向上に役立つ実践的な戦略を提供する講義は絶大な人気を博し、スタンフォード大学で最も優秀な教職員に贈られるウォルター・J・ゴアズ賞をはじめ数々の賞を受賞。各種メディアで広く取り上げられ、「フォーブス」の「人びとを最もインスパイアする女性二〇人」に選ばれる。ヨガ、瞑想、統合医療に関する研究をあつかう学術専門誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ヨガ・セラピー」編集主幹を務め、著書に『痛みを和らげるヨガ-心を落ち着け、痛みを緩和するためのシンプルヨガ』(未邦訳)などがある。

神崎 朗子
翻訳者。上智大学文学部英文学科卒業。外資系生命保険会社の社内翻訳等を経て、第一八回DHC翻訳新人賞優秀賞を受賞。訳書に『ぼくたちが見た世界』(柏書房)『ベストアメリカン・短編ミステリ』(共訳、ディーエイチシー)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間には、「闘争・逃走反応」「休止・計画反応」という2つの状態があり、前者の状態では脳の前頭前皮質は機能しておらず、理性的な判断が困難である。人間には、意図的に休止・計画反応を起こすことも可能である。
  • 要点
    2
    ①睡眠を十分にとる、②血糖値をコントロールする、③小さなステップで脳を鍛える、④将来を見ることによって、意志力を後天的に鍛えられる。
  • 要点
    3
    人間の脳にはミラーニューロンという細胞が多数存在し、無意識のうちに他人の影響を受けているのと同時に、自分自身も他人に影響を与えているため、意志力は伝染する。

要約

「難しいこと」を実行する力をつける

本書の位置付け

本書は2013年2月1日に東京・新宿で行われた特別講義の模様をDVDブック化したものである。本書には特別講義のDVDが付いており、その英文全文を書き起こしたものが末尾に、加筆・修正された日本語が前半部に記されている。ケリー・マクゴニカル氏の講義は非常に口調もやわらかで、しかも説得力がある。前著「スタンフォードの自分を変える教室」と内容は似ているが、分量も手ごろで簡単に読めるのが本書の優れているところだ。それではハイライトに入ろう。

「あなたの問題」から考えはじめよう
iStock/Thinkstock

まず第1章では『「難しいこと」を実行する力をつける』という章題について語られている。まずケリー氏は講義参加者に次のような質問を問いかけている。

「意志力の問題であなたが手を焼いているのはどんなことですか?」

世界中どこへ行っても、まずこの質問を受講者に投げかけているそうだ。そして世界中のどこの国に行っても、多くの人が同じような問題を抱えているという。

食べ物をはじめとする好物に感じる誘惑や、時間の使い方が下手であることへの悩みが、その代表的なものであるという。まずは自分がどのような問題を抱えているか考えることから始めるのだ。

脳が「快楽」に負けるとき

では、なぜ我々は相反するふたつの自己のせめぎあい(欲求に対する葛藤)の問題に直面するのだろうか。これに関して、この10年間で神経科学の分野から出てきた最も説得力のある考え方は、「脳にはふたつのモードが存在し、それらが切り替わることによって、まったく異なる自分になってしまう」というものだとケリー氏は語る。脳のモードが切り替わると、目標もがらりと変わり、正反対の意思決定をも行ってしまうのだという。

脳のふたつのモードのうち、ひとつはとても衝動的なものである。こちらのモードになっていると、我々は目先の利益しか考えられなくなり、ただひたすらに快楽の方面に向かってしまうのだ。

我々が大きな視野で物事を見て、目標を見失わずにいるためには、意志力(「やる力」「やらない力」「望む力」の3つ)が必要である。

「めげない人」の体で起きていること

脳の活動を止めてしまうホルモン
Fuse/Thinkstock

どうしたら誘惑に対して「ノー」と言える賢さと勇気を持った自分になれるのか。どうしたら、やるべきだけれど困難なことに対して「イエス」と言い、実際にそれを行うことができるのか。その答えは科学的に証明されている。本章は、それができる人の体では、いったい何が起きているのか解説されている。

突然、部屋のドアからトラが飛び込んできた状況を想像してもらいたい。心臓の鼓動が激しくなり、呼吸も荒くなるだろう。この闘争・逃走反応状態では、ストレスホルモンが放出され、「やる力」「やらない力」「望む力」をつかさどる前頭前皮質の活動を停止させてしまう。生きるか死ぬかの瀬戸際であることを考えれば合点がいくことだ。これと同様に我々は脅威や不安などの心理的なストレスを感じると、最高の自分になろうとする力は妨げられてしまう。

我々を脅かすのは何もトラだけではない。甘いお菓子を見たとたんに闘争・逃走反応が起きると、自制心などすっ飛んでしまい、前頭前皮質は活動を停止してしまうのだ。

この反応を起こせば「理性的」になれる

ありがたいことに、我々には闘争・逃走反応とは全く逆の「休止・計画反応」を持っている。この反応が起きると、心拍数は下がり、呼吸は遅くなり、脳はまともな判断ができる状態となる。

ケリー氏にとって特に印象深い実験として以下のようなものがあったという。

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要約公開日 2013.12.25
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