「昔は3人でやっていた仕事を、今は2人でやらされる」
本書の著者である西多氏は、診察室でしばしばこのような話を聞くという。リストラの影響や心身の病によって休んでしまった同僚のぶんの仕事もカバーしなければならない、というケースも後を絶たないそうだ。
こうした現状を踏まえ、「上手に手抜きをする、サボる作法は厳しい今後の日本社会を生きていくうえでは欠かせないスキルだ」と西多氏は主張する。サボると聞いてネガティブな印象を持つ人も多いかもしれない。しかし、「成果を上げる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」というドラッカーの主張を拡大解釈すると、「サボる」時間確保から始めなさい、とも読み取れるのではないか。
具体的にサボる時間を確保するために、本書では例として次の手法を提案している。
1.毎日、午後2~3時を調整時間として空けておいて予定を入れない
2.前の仕事が2時台に食い込んでしまっても、その後の予定を変えない
3.定時になったら、残業する日でも15分のブレイクタイムをとる
4.スケジュール表の「サボる時間」枠は、書き込めないように斜線を引いてしまう
いざとなるとやり始めるのに結構時間がかかってしまう、という経験は誰しも持っているのではないか。試験勉強をしなければならないのに、デスクや部屋の方付けをしてしまう。書類の準備が明日までなのに、なぜだかネットサーフィンをしてしまうといった具合だ。
実はこのような「回避行動」は、「取りかかったら、結構手こずるのではないか」という不安が一種の原因となっている。したがって、まずはこの不安を払拭するのが良い。
そのためには、やるべき作業をいくつかのプロセスに分割するところから始めるべきだ。最低でも第一ステップは今日済ませるなど、区切りの感覚を持つのである。気合を入れるよりも、「とりあえずなにかする」ことが効果的なのだという。ドイツの精神医学者、クレペリンが作業を始めてみるとだんだんやる気がでる現象を「作業興奮」と名付けたが、いかに早く「作業興奮」に入れるかが、仕事を手早く済ませるコツなのである。
日本人の睡眠時間は戦後から短くなる一方である。日本人は総じて、睡眠不足気味なのだ。西多氏が診療を行っているクリニックでも、「睡眠不足症候群」で困っている人が予想以上に多いという。昼間の会議で居眠りしそうになった、眠くて頭が回らないといった症状がそれである。
本書では、快眠の基本こそが重要であると述べられている。快眠の基本とは何も珍しいことではなく、食事、運動、入浴、嗜好品など当たり前の注意事項を守ることだ。
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