障がい者は、「身体障がい」、「知的障がい」、「精神障がい」の3つに区分される。割合をみると、日本の全人口のうち6.7%が何らかの障がいを抱えていることになる。
障がい者は「障害者控除」により住民税や所得税が控除される。つまり、障がい者が増えることは、納税者が減少することを意味する。今後は少子高齢化により、納税者はますます減少するだろう。そこで国は、障がい者が働く力を身につけるための制度づくりに着手している。
「障害者総合支援法」により、障がい者は一般企業または障がい者就労支援施設で働くよう規定されている。
支援事業は3種類ある。1つめの「就労移行支援事業」は、就労をめざす障がい者に知識や能力を身につけてもらい、各々に適した職場で働くことを目指す事業だ。いわば学校のようなもので、障がい者への給料は発生しない。
2つめの「就労継続支援A型事業」は、現時点では一般就労が難しい障がい者と雇用契約をする事業だ。著者の「カムラック」はこのタイプに属する。働くうえで必要となる知識や能力を得て、一般就労へ移行することを支援する。
3つめの「就労継続支援B型事業」は、簡単な作業を障がい者に行なってもらう事業だ。A型事業が雇用するのに対し、B型事業の場合は非雇用という形式をとる。どの施設にするかは障がい者や保護者が選択できるが、施設でやることと、自身ができることのマッチングがうまくいっているわけではないのが現状だ。
カムラックなど、就労継続支援A型事業にあたる事業所が利益を得られるかどうかは、障がい者たちの労働力にかかっている。とはいえ、事務所を運営するための費用として、国から障がい者1人あたりにつき1日約6000円の給付金が支給されるため、事業所が20人を雇えば、月額で約250万円がもらえることになる。
本来、給付金を給料に使用することは禁止されている。しかし、企業からの仕事がない、障がい者の生産性が低いという理由から、給料として使ってしまった事例も現実にはある。すべての事業所の給付金が有効に使用されているわけではないのだ。
当然、このような事業所にいる障がい者は働く意欲を失くしてしまうし、「支援されて当たり前」と考えてしまう者も出てきてしまう。
平成25年から、国は50人以上を雇用する事業主に対し、法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用するよう命じた。これにより、一般の企業においても障がい者を雇用する流れが強まった。
法定雇用率に満たない雇用をした場合、事業主は不足している障がい者1人につき、月額5万円を支払わなければならない。このため、支払いをきらって、障がい者を雇うという企業も出てきた。だが、障がい者を「労働力になる」とみなして雇う会社は少ないのが現状である。
現在、国内の企業のうち、半数以上が法定雇用率を満たしていない。それは障がい者について詳しく知らないからだ。まずは障がい者のことを知り、彼ら/彼女らが働ける環境を整えていくことが求められる。そうすれば、障がい者を雇用することへの不安はなくなっていくだろう。
「障害者雇用納付制度」には、障がい者雇用における事業主への留意点がまとまっている。1つめは「就業環境をバリアフリーにすること」、2つめは「特別な配慮を含む雇用管理をすること」だ。
後者については、生活就業支援員のような、障害者がいつでも相談できる人を配置するほか、医療機関との連携も必要になってくる。
著者は障がい者を「戦力」にしたいと考えている。
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