日本一元気な現場から学ぶ

積極的障がい者雇用のススメ

未読
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積極的障がい者雇用のススメ
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積極的障がい者雇用のススメ
著者
出版社
出版日
2016年09月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

心身に何らかの障がいを抱えている人は、全国で約874万人にのぼる。つまり14人に1人は「障がい者」ということだ。

近年、企業の障がい者雇用は微増しているが、まだまだ割合としては高くない。企業側と障がい者側が歩み寄れる機会が少なく、そのせいで障がい者の積極的な雇用が阻まれてしまっているのが現状である。

著者の賀村研氏は障がい者雇用を普及させるため、福岡に「株式会社カムラック」を設立した。障がい者は支援される側ではなく、企業においても十分に即戦力たりえるというのが著者の考えだ。だからこそ、カムラックでは障がい者を雇用し、その他の企業でも通用するような技術を身につけさせている。

本書が取りはらってくれるのは、「障がい者は助けられる人」という固定観念だ。また、障がい者を支援する相手としてではなく対等なビジネスパートナーとして見ることで、障がい者自身も周りに依存せず、自活できるようになっていくという。

もちろん、障がいの度合いによって、企業も相手への対応を考慮する必要はある。それでも、「自分は必要とされている」という自覚が芽生えれば、貢献したいという気持ちがわき上がり、大きな戦力として成長する。本書を読んでいると、その可能性の大きさに気づくにちがいない。

企業にとって、障がい者は新たな戦力であると同時に、多様性を生み出す貴重な人材である。1人でも多くの方に本書をお取りいただき、ここ日本でも障がい者への理解が進むことを願う。

ライター画像
平賀妙子

著者

賀村 研(かむら けん)
株式会社カムラック代表取締役
株式会社スーパーカムラック代表取締役
株式会社elseif取締役
一般社団法人 中小企業事業推進機構 理事
1972年生まれ。愛媛県松山市出身。日本大学農獣医学部卒業。大手ゼネコンで人間関係を学び、東京のITベンチャーで仕事の厳しさを学び、地方の中小SES企業で中央と地方の温度差と挫折を学び、Webポータルサービス企業で人との繋がりの大切さを学ぶ。2013年に独立。株式会社カムラックを設立し、IT業界での営業経験を活かし障害者支援事業に参入。ITを活用した仕事を創造することで、働く障がい者の新しい未来創りにチャレンジ中。
キーワードは企業との共存共栄 ~支えられる側からお互い支え合う関係へ~

本書の要点

  • 要点
    1
    障がい者の法定雇用率を満たしている企業でも、国にお金を払いたくないがために障がい者を雇っているという例は少なくない。
  • 要点
    2
    障がい者を支援したいという理由だけで起業しても、最初に注目を集めるだけだけで結局はうまくいかない。最初に「すべきこと」を明確にすべきだ。
  • 要点
    3
    子どものことを心配するあまり過保護になり、保護者が就労を妨げてしまうケースは多い。子どもの力を信じて見守ってあげることも必要だと心得るべきである。

要約

障がい者とは

障がい者は増えている

障がい者は、「身体障がい」、「知的障がい」、「精神障がい」の3つに区分される。割合をみると、日本の全人口のうち6.7%が何らかの障がいを抱えていることになる。

障がい者は「障害者控除」により住民税や所得税が控除される。つまり、障がい者が増えることは、納税者が減少することを意味する。今後は少子高齢化により、納税者はますます減少するだろう。そこで国は、障がい者が働く力を身につけるための制度づくりに着手している。

障がい者就労支援施設
wildpixel/iStock/Thinkstock

「障害者総合支援法」により、障がい者は一般企業または障がい者就労支援施設で働くよう規定されている。

支援事業は3種類ある。1つめの「就労移行支援事業」は、就労をめざす障がい者に知識や能力を身につけてもらい、各々に適した職場で働くことを目指す事業だ。いわば学校のようなもので、障がい者への給料は発生しない。

2つめの「就労継続支援A型事業」は、現時点では一般就労が難しい障がい者と雇用契約をする事業だ。著者の「カムラック」はこのタイプに属する。働くうえで必要となる知識や能力を得て、一般就労へ移行することを支援する。

3つめの「就労継続支援B型事業」は、簡単な作業を障がい者に行なってもらう事業だ。A型事業が雇用するのに対し、B型事業の場合は非雇用という形式をとる。どの施設にするかは障がい者や保護者が選択できるが、施設でやることと、自身ができることのマッチングがうまくいっているわけではないのが現状だ。

障がい者雇用の現場

給付金をそのまま給料にしてしまう会社

カムラックなど、就労継続支援A型事業にあたる事業所が利益を得られるかどうかは、障がい者たちの労働力にかかっている。とはいえ、事務所を運営するための費用として、国から障がい者1人あたりにつき1日約6000円の給付金が支給されるため、事業所が20人を雇えば、月額で約250万円がもらえることになる。

本来、給付金を給料に使用することは禁止されている。しかし、企業からの仕事がない、障がい者の生産性が低いという理由から、給料として使ってしまった事例も現実にはある。すべての事業所の給付金が有効に使用されているわけではないのだ。

当然、このような事業所にいる障がい者は働く意欲を失くしてしまうし、「支援されて当たり前」と考えてしまう者も出てきてしまう。

法定雇用率
kieferpix/iStock/Thinkstock

平成25年から、国は50人以上を雇用する事業主に対し、法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用するよう命じた。これにより、一般の企業においても障がい者を雇用する流れが強まった。

法定雇用率に満たない雇用をした場合、事業主は不足している障がい者1人につき、月額5万円を支払わなければならない。このため、支払いをきらって、障がい者を雇うという企業も出てきた。だが、障がい者を「労働力になる」とみなして雇う会社は少ないのが現状である。

現在、国内の企業のうち、半数以上が法定雇用率を満たしていない。それは障がい者について詳しく知らないからだ。まずは障がい者のことを知り、彼ら/彼女らが働ける環境を整えていくことが求められる。そうすれば、障がい者を雇用することへの不安はなくなっていくだろう。

バリアフリーをめざすには

「障害者雇用納付制度」には、障がい者雇用における事業主への留意点がまとまっている。1つめは「就業環境をバリアフリーにすること」、2つめは「特別な配慮を含む雇用管理をすること」だ。

後者については、生活就業支援員のような、障害者がいつでも相談できる人を配置するほか、医療機関との連携も必要になってくる。

【必読ポイント!】 働く障がい者の理想と現実

戦力として障がい者を雇用する

著者は障がい者を「戦力」にしたいと考えている。

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要約公開日 2017.05.23
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