本書で取り上げるPDCAは世間一般がイメージするものではない。個別のスキルの習得を加速させるためのベースであり、前進するためのフレームワークである。従って、この技術を体得すれば、個人のスキルアップやチームマネジメントなど、あらゆる目標達成の強力な武器となってくれる。
まずはPDCAを正しく理解することが必須だ。本物のPDCAには完了という概念は存在せず、計画、実行、検証、調整というサイクルを回す過程で改善が次々と加えられて成長していく。成長とは、その回す速度、綿密な計画や改善を何度も重ねたことによる精度の向上を意味する。なお、一般的に「改善」と呼ばれる4つ目のフェーズを本書では、より実態に近い「調整」と表現する。
PDCAは一つだけ回るものではない。縦にも横にも枝葉を広げるものだ。一例として、営業職での年収UPという大きな目標を掲げたとしよう。年収UPに向けた大きなPDCAの下には必要売上や契約数という、より小さなPDCAがあり、またその下にはアポイント獲得数の増加という、さらに小さなPDCAがある。また、アポイント獲得数の増加のためには顧客リストの獲得や交渉力の強化が必要といった具合に、枝葉は無限に広がる可能性がある。このように、小さなものから大きなものまで、PDCAサイクルを、いかに効率良く、速く回せるかが目標達成の成否を分ける。
PDCAサイクルを回すのをためらう人は少なくない。その主な原因は、PDCAを継続できるかが不安だからだという。しかし、PDCAを回す能力を高めることにより、明確な根拠を伴う自信を培うことができる。
一つのPDCAの背後には数多くのPDCAが存在し、その全てが目標達成への方法論であり、行動指標である。それらに従って行動を続けている限り、その対象が何であろうといつか必ずゴールにたどり着ける。そして、ゴールに近づいているということを必要に応じて確認し、実感しながら前進できる。さらには、掲げた目標が達成可能だということをあらかじめ知り、そのための進むべき道筋を明確にできる。これがどれほど大きな自信を与えてくれるかは想像にたやすい。
「鬼速」とは文字通り高速でPDCAを回すことを意味する。これを実現するには、PDCAの各ステージにおいて自分が何をすべきかを正確に理解している必要がある。
実行を意味するDのステージを取り上げよう。例えば、「持久力をつける」という行動計画を立てたとする。これでは、実際に行動を開始できる確率はかなり低くなるだろう。計画の中身があまりにも抽象的で具体性に欠けるからだ。
Dのステージにおけるポイントは行動のタスク化である。今回の例でいうと、「毎日、朝6時に起きて5キロ走る」などと、行動をより具体化できる。こうして初めて実行に移せるレベルの行動計画が仕上がっていく。
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