モチベーション革命

稼ぐために働きたくない世代の解体書
未読
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モチベーション革命
出版社
出版日
2017年09月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書はモチベーションを上げるテクニックを紹介するノウハウ本ではない。世代によって異なるモチベーションの源に関する洞察、ほかの人との違いやその希少性こそが価値になること、さらにはその価値を高めるための生き方について、本質的な理解を促そうという意欲作である。

時代の変化とともに変わってきた「モチベーション」に注目し、その全貌を把握するために書かれた本書は、上の世代と若者のモチベーションの違いを捉え、マネジメントする側の経営層にとって、不可欠な視点を与えてくれるだろう。

前書きに、進化論で有名なダーウィンの言葉がある。

「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」

これをモチベーションの変化と結びつけて捉えなおしてみると、30代以下の若者の理解できない行動が「人間としての変化であり、生き残るための進化」というように見えてくるに違いない。

変化が予測できないVUCAの時代においては、変化の予兆をとらえ、活発なイノベーションを起こす組織をいかに作るかが重要だ。「乾けない世代」と表現される若者の価値観に寄り添うことは、人間本来の欲求とは何かという問いに向き合うことなのかもしれない。本書で示す方向性は、今の大企業のロジックが通用しないところが難しい一方で、早期に対応することで他社に先んじるチャンスが大きいとも言えるだろう。

ライター画像
山崎華恵

著者

尾原 和啓(おばら・かずひろ)
IT批評家・藤原投資顧問シニアアドバイザー。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。阪神・淡路大震災時の避難所ボランティアの経験から、仕組みやプラットフォームに強い興味を抱く。マッキンゼー・アンド・カンパニー、リクルート、Google、楽天などを経て現職。インドネシア・バリ島在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    「ないものがない」時代を生きる「乾けない世代」は、「達成」や「快楽」よりも「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」に意味を置く傾向がある。
  • 要点
    2
    「乾けない世代」だからこそ作れる「新しい価値」は、自分だけの「好き」や「歪み」から生まれやすい。
  • 要点
    3
    「自分だけの世界の見方」や「自分にしかできないこと」を提供することは、他の人にとって新しい意味を持つものであり、それらこそがこれからの時代の価値の源泉となりうる。

要約

【必読ポイント!】「乾けない世代」とは何か?

何もなかった世代と「すでにある世代」
g-stockstudio/iStock/Thinkstock

今の30代以下と上の世代は全く異なる価値観で仕事をしている。上の世代は、家、車、最新の家電商品などに対する飢餓感を埋めるため、欲望のままに働いた。「この国を作っているのは自分」という自負を持ち、国や会社の成長と自分の成長がイコールで結ばれていた。仕事での成功が、豊かな暮らしにつながる「乾いている」世代である。

一方で、30代以下の世代は、「何もなかった時代」を知らず、すでに作り上げられた社会の上に立たされているため、埋めるべき空白がない。だから、何かが欲しいと「乾けない」。「ないものを勝ち得るために我慢する」という心理や、上の世代で重要視される「達成」にこだわることへのアンバランスさも感じている。

「乾いている」世代が、「国」や「社会」という大きな枠で動いていたのに対し、「乾けない」世代は、「家庭」「友人」「自分」という小さくて身近な枠の幸せが動機につながる。

しかし、働き方のルールは変わっていない。当事者である「乾けない」世代もマネジメントする側となる上の世代も、このズレを認識する必要がある。

幸せの5つの軸

「乾けない」世代のモチベーションを、マーティン・セリグマンが唱えた「人間の5種類の幸せ」という話で説明しよう。人間の幸せは、与えられた目標をクリアすることで感じる「達成」、ドーパミンを感じることで得られるような「快楽」、その他に「良好な人間関係」、「意味合い」、「没頭」で説明できる。

「良好な人間関係」とは、ただ自分の好きな人と笑顔で一緒にいたら楽しいという幸せのことである。昔の世代は、会社のためにすべてを捧げることが、会社と家庭の両面において「良好な人間関係」を可能にした。しかし、そういった生活が限界に来ている時代の中で、社会のパーツではない、良好な人間関係が大切となってきている。

「意味合い」を理解するためには次の具体例がわかりやすい。城の石垣を作っている2人の職人がいたとして、「肉体労働がつまらない」と感じる人と「この石垣ができたら孫の世代まで平和に暮らせる」と感じる人がいた場合、同じ仕事でもその仕事の持つ意味合いが異なる。自分の大切な人のために自分は何ができているか、という意味合いを実感することがモチベーションの源となる。

「没頭」は、職人気質の日本人には多く見られる感じ方で、細かな作業に没頭しているときに感じる人が多い。自分の行う作業の中で基準を設けて成長をし続けることができるのがこのタイプだ。

この5つの軸を使って自分が何に幸せを感じるかを分析することは、自身のモチベーションを引き出すために有効だろう。

「乾けない世代」の幸せ
Creatas Images/Creatas/Thinkstock

「乾いている」世代が、前半の「達成」「快楽」を幸せの基準としていたのに対し、「乾けない」世代は「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」からなる後半の3つを大切にしている。モチベーションを見失っている「乾けない世代」の多くは、いまの仕事にそれらを見いだせていない状態である可能性が高い。

社会的に見てくれが良さそうなことや、誰かが掲げた「達成」を成し遂げるために、自分の嗜好とは異なる仕事に仕方なくついた人は要注意である。「ライフ」と「ワーク」が完全に離れてしまっているかもしれない。

偏愛こそが価値になる

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AIの台頭により、作業効率が求められるような仕事において、人間はAIやロボットに勝てないことがわかってきた。しかし、世界を驚かせるようなサービスや革新的なイノベーションは、1人の人間の偏愛からしか生まれない。

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要約公開日 2018.02.07
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