「価値」という漠然としたものをやりとりするために誕生した「お金」。価値の保存・尺度・交換の役割を担うお金が、社会でプレゼンスを高めていったのは18世紀頃にさかのぼる。市民革命により身分の影響力が薄れる一方、お金を増やすこと自体が目的と化し、資本主義は発展を遂げていった。
国家が管理する中央銀行がお金を刷って、経済をコントロールするのが標準的になってきたのは、この100年ほどである。そうなると、仮想通貨やブロックチェーンなどの新たな仕組みが100年後の標準になっていてもおかしくはない。
ビットコインは、中央の管理者が不在でも成り立つバーチャル上の通貨だ。ビットコインをはじめとする仮想通貨は、法定通貨とは全く違うルールで動いている。仮想通貨を既存の金融業界の枠組みに当てはめようとすると、その本質を見出しにくくなってしまう。
そもそも経済システムとは、「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」を指す。同時に、個人の欲望を起点に動く報酬のネットワークでもある。
経済システムが持続するためには、特定の個人に依存せず、自己発展的に拡大していく仕組みであることが大前提となる。それでは、人の手で、経済システムをより良いものにつくり上げることは可能なのか。
発展する「経済システム」には次の5つの要素がある。1つ目は、報酬が明確であること(インセンティブ)だ。経済システムの参加者の欲望を満たすものでなければ拡大することはない。現代においては特に、「儲けたい・モテたい・認められたい」という欲望を満たすシステムが急速に発展しやすい。
2つ目は、時間によって変化する(リアルタイム)という要素である。人間は変化が激しい環境では、熱量が高い状態で活動ができるためだ。
3つ目は、運と実力の両方の要素があること(不確実性)だ。コントロールが及ばない運の要素と、自らコントロールできる実力の要素が良いバランスで混ざっている環境のほうが、持続的な発展を望める。
4つ目は、秩序の可視化(ヒエラルキー)である。世の中には偏差値や売上、肩書きなど、階層や序列にあふれている。こうした目に見える指標があることで、自他の距離感や関係性をつかみやすくなる。
そして5つ目は、参加者が交流する場があること(コミュニケーション)だ。互いの交流や議論を通じて、全体が一つの共同体であることを認識できるようになる。
実際のところ、発展する経済システムに必要な5つの要素は、脳の報酬系の観点からも理にかなっている。
例えば、「リアルタイム」と「不確実性」を取り上げよう。脳は非常に「飽きやすい」性格をもっている。そのため、予測が難しい不確実な環境で得た報酬に、より多くの快楽を感じやすいことが判明している。よって、「リアルタイム」と「不確実性」は、リスクのある状況下でも積極的に動くモチベーションの源泉になるといえる。
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