日本再興戦略

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日本再興戦略
出版社
出版日
2018年01月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本はそもそも国策によって急激に近代化を果たした国である。明治以降に私たちが手本にしたのは、いわゆる「欧米」だった。明治維新では主に欧州を手本にし、1945年以降は米国主導で国作りを進めてきた。

しかし著者の落合陽一氏は、「欧米」というものが本当に存在するのか疑問を投げかける。そして「欧州型」「米国型」といった概念をもう一度見直し、日本が今まで何を基軸にしてきたのかを問いかける。

私たちは今後、何を継承していくべきなのか。落合氏が目論むのは、自信を失って自虐的な道を歩みつつあるこの国の再興だ。ゆえに本書のタイトルは『日本再興戦略』なのである。

「日本を変えるために何をするべきか」と問われたとき、具体案を出すことはもちろん重要だが、日本再興のためには「意識改革」が必要だと落合氏は断ずる。日本がふたたびポジティブなビジョンをもち、高い生産性を誇る国になるためには、たしかに意識改革が必要不可欠なのかもしれない。

人口減少を希有なチャンスと捉え、テクノロジーを活用し、西洋的人間観を更新する。それが落合氏の描くビジョンだ。本書ではこれまでの日本の歩みを振り返りながら、これからの政治や企業、教育がどのような考えのもとで改革されるべきかが記されている。新時代の旗手が何を考えているのか、まずはぜひ本書を覗きこんでみてほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

落合 陽一 (おちあい よういち)
1987年生まれ。メディアアーティスト。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了)、博士(学際情報学)。筑波大学学長補佐・准教授・デジタルネイチャー推進戦略研究基盤基盤長、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授を兼務。ピクシーダストテクノロジーズCEO。2015年米国WTNよりWorld Technology Award 2015、2016年Ars ElectronicaよりPrix Ars Electronica、EU(ヨーロッパ連合)よりSTARTS Prizeなど国内外で受賞多数。著書に『魔法の世紀』(PLANETS)、『これからの世界を作る仲間たちへ』(小学館)など。個展として「Image and Matter(マレーシア・クアラルンプール,2016)」や「Imago et Materia(東京六本木,2017)」、「ジャパニーズテクニウム展(東京紀尾井町,2017)」など。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の再興を考えるうえで、「欧米」を見習おうとすることは大きな間違いだ。日本はいま一度、自国の歴史を振り返りながら、どう変わっていくべきなのか整理する必要がある。
  • 要点
    2
    これから求められる産業に対応するためには、戦後につくられた日本人の精神構造を変形させ、システムやテクノロジーの更新を行なわなければならない。
  • 要点
    3
    テクノロジーがますます進化していくなか、画一化や標準化は時代遅れだ。これからは多様性をもって生きていくことが望ましい。

要約

欧米と日本

「欧米」というユートピア
SIphotography/iStock/Thinkstock

日本の再興を考える際に、明治初期や昭和のことを思い出して、欧米を見習おうと思うことは大きな間違いである。

そもそも「欧米」というものは存在しない。欧州と米国を一緒くたに考えている西洋人はどこにもいない。日本は欧米という呼び方を捨て、具体的な国について語るべきだ。それだけでもかなり議論がしやすくなるはずである。

日本の大学システムの設置理念は欧州式だが、資金運用などの面はアメリカ式を取り入れている。また法律はドイツ式の刑法、フランス式の民法、米国式の憲法を基盤としている。このように日本は、歴史も文化も異なる国の方法を継ぎ接ぎで採用している。いいとこ取りといえば聞こえはいいかもしれない。だが時代が変化したことで、その弊害が出ている状況だ。

日本はいま一度、自国の歴史を振り返りながら、今度どう変わっていくべきかを整理するべきである。

日本型イノベーションを定義する

「欧米」という幻想にとらわれてはならないが、欧州や米国から学ぶことを完全にやめる必要もない。重要なのは日本の原点や向き不向きを見極めたうえで、学ぶ価値があるものとないものを峻別していくことだ。

世界が求めている産業に対応するために、日本は戦後に作られた精神構造を変形させつつ、システムやテクノロジーの更新を行なう必要がある。これまでの工業的な生産様式を、ITやイノベーションに向いた生産様式へと変えるときが来ているのだ。

同じものを大量に作るのではなく、個々のニーズに合わせて多様なものを柔軟に作る。そういったフットワークの軽さを、これからのリーダー層や経営層は身につけるべきである。

日本にはカーストが向いている
Gajus/iStock/Thinkstock

インド人に対して、「あなたにとってカーストとは何か」という問いかけると、「ひとつの幸福の形」という答えが返ってくることがある。カーストがあると職業選択の自由はなくなるが、代わりにある種の安定が得られるからだろう。

日本にかつてあった士農工商は、まさにインドにおけるカーストのようなものである。そういう意味で、日本はカーストにも適応できるといえる。

私たちは幸福論を定義するとき、つい物質的価値を求めがちだ。しかし実は生業が保証されることこそが幸福につながるのである。生業が保証されていると、それに打ちこむだけでいいからだ。

とはいえインドのカーストには問題も多い。日本ではインドよりも職業の行き来がしやすい、コミュニティのようなカースト制度が望ましいだろう。なおその場合、ほとんどの日本人は「農」を担う現代の百姓となる。とはいっても、なにも農業に立ち返れというわけではない。ITの民主化によって、「何かを作り出せる人」が活躍していく時代になるということだ。

ひとつの特化した専門職をもたず、さまざまな仕事をその時々によって担う多動力が、これからますます重要になってくる。そうした時代では、まさに100の職をもつ「百姓」が求められるというわけである。

テクノロジーは世界をどう変えるか

近代の画一化から、現代の多様化へ

産業革命時のもっとも大きな変化のひとつは、タイムマネジメントという概念の導入であった。それによって近代の軍隊や工場が成り立ち、大量生産方式が生まれた。

近代以降の私たちは、集約され働くことによって生産効率を上げていった。その基盤にあるのが「時間を同期して、労働力の単位で区切っていく」という考え方だ。しかしここから画一主義が生まれ、マスとマイノリティの対立へと発展。健常者と障碍者という区分け、男女差別など、さまざまな問題の発生に至った。

しかし今後は、機械が担ってくれる分野の能力は必要なくなる。

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要約公開日 2018.03.12
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