インターネットとスマホの普及で、距離や時間の壁がなくなった。同時に、モノの売り方や働き方が目まぐるしく変化している。ストレスフルな仕事から順にロボット化が進む。この変化の波を乗りこなすには、「好きなことを仕事化する」しかない。
大事なのは、常識をアップデートすることだ。自分自身の手や足を使い、周囲で起こっている変化を、学び、実践し、変化に対応していかなければならない。変化しなければ死んでしまう。この大変革の時代の動きを捉えるにはどうしたらいいか。そのヒントが、西野氏の頭の中と、その活動の軌跡にある。
絵本『えんとつ町のプペル』の制作費用は、クラウドファンディングで集めた。クラウドファンディングには「正しい勝ち方」があるのを、読者は知っているだろうか。
大前提として、次の2点を理解しておきたい。お金とは信用を数値化したものであること。そして、クラウドファンディングは、信用をお金化するための装置であることだ。
すると、テレビタレントとクラウドファンディングの相性が良くない理由がわかるだろう。テレビタレントのギャラの出所はスポンサーであり、好感度が求められる。そのためテレビに出れば、マズイ料理でも美味しいと嘘をつかなければならない。しかし、今やツイッターのタイムラインを見てみれば、真実が誰にでもわかってしまう。
よって、いくら認知や好感度が高まっても、タレント本人の信用は一向に上がらない。しかも、嘘を重ねるほど、ファンは離れ、行きつく先は「人気タレント」ではなく、「認知タレント」というわけだ。
一方、クラウドファンディングを成功させるには、「信用」を勝ち取らなければならない。そのため、西野氏は嘘をつかないこと、自分の意思を明確に表明することに徹した。
大切なのは、嘘をつかなくてもよい環境をつくることである。人が嘘をつくのは、嘘をつかざるをえない環境にいるからだ。環境は意思決定を左右する。
西野氏は、スポンサーからお金をもらうという、既存の広告ビジネス、いわば好感度ビジネスを早々に放棄した。かわりにやっているのが、「西野亮廣エンタメ研究所」というオンラインサロンだ。オンラインサロンの場合は、意思を明確に表明する覚悟と、その背景にある考え方を知るために、お金が支払われる。大御所にひるまず自分の意見を表明すればするほど、会員数も増えていき、信用が高まるというわけだ。
クラウドファンディングやオンラインサロンといった、信用をお金に両替するツールの登場により、正直者がバカを見る時代は終わった。
西野氏は「信用通帳」をつくっている。自分の現在の信用値を出して、記録し、「今月はあとどれくらい使えるか」と、信用のペース配分をしている。信用が貯まっていなければ、人からお金は集まらない。
『えんとつ町のプペル』の2度目のクラウドファンディングで、支援者数が当時の国内歴代最高記録を樹立したのはなぜか。理由の1つは、西野氏が確信犯的に仕掛けた「西野亮廣独演会」である。
このトークイベントでは、美術セット、照明、音楽など、ゴリゴリに世界観をつくり込んでいる。チケット代は5000〜6000円が相場だろう。しかし、チケット代を2000円にし、2階席に限り小学生以下は無料としている。
これは目先の収支にとらわれず、お客さんに感謝されることを優先したためだ。インターネットにより、お客さんはモノの値段設定の妥当性を、正確に判断できるようになっている。こうして、独演会のお客さんは西野氏を信用し、クラウドファンディングの支援者となった。西野氏は、次の打ち手であるクラウドファンディングのことまで考慮して、独演会の料金設定をしていたのだ。今あるマネタイズのポイントが、自分の目的に対して最適化されているか。この視点を大事にしたい。
これまで何かを売るには、「場所代」が発生していた。土地に限りがあるためだ。しかし、インターネットの普及により、こうした物理的制約が破壊され、あらゆるものが無料化された。
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