近年、あらゆるものがインターネットでつながる「IoT(Internet of Things)」や「AI(人工知能)」など、テクノロジーの進化が著しい。そんな中、世界のビジネスシーンに、モノを共有することを意味する「シェアリング」という概念が台頭し、一気に拡大し始めている。
例えば、アメリカで生まれたAirbnbは、ウェブを通じて所有者が希望者に空き部屋を貸すサービスであり、宿泊施設の不足も手伝って瞬く間に全米に広がった。そのほか、自動車配車サービスUberも、シェアリングエコノミー型のビジネスとして人気を博している。
シェアリングエコノミーの拡大の背景にあるのは、大量生産されたモノを所有することの否定である。モノが溢れている時代に育った世代は、所有への欲求が乏しい。ひとつのモノを買うより、必要なときに必要な分だけ使うという考え方をクールだととらえている。例えば、大金をかけて自動車を購入し、駐車場代を支払い続けるよりは、必要な時間だけカーシェアリングをする方が賢いというわけだ。
こうした消費行動の変化には、テクノロジーの進化が大きく関わっている。システム業界では、ユーザー同士が直接コミュニケートすることをPtoP(ピアtoピア)という。ネットワークの発達によって、PtoPの構築がますます容易になった。そのため、ユーザーが価値観や感性の合う仲間を見つけやすくなった。今後、互いに協力して新しいものを生み出すユーザーが、モノづくりの主役に躍り出るだろう。このように、PtoPは企業主導の経済支配から個人が独立して主権を得るための原動力だといえる。
産業社会構造の末端に位置づけられてきたユーザーたちが、テクノロジーを駆使して「革命」を実現しようとする時代に、企業はどう対応すべきであろうか。
カーシェアリングが普及すれば、自動車の売れ行きは下がる。また、PtoPによって再生可能エネルギーが安価に生み出せるようになれば、電力会社の電気は売れなくなる。対応を誤ると、会社の存続自体が危うい。
そこで企業は、モノの価値ではなく「UX(ユーザーエクスペリエンス)」を理解する必要に迫られている。UXとは「ユーザーにとっての体験価値」を指す。例えば自動車のユーザーなら、「どのメーカーのどんな車に乗るか」より「車に乗ってどこに行き、何をするか」を重要視するようになるかもしれない。
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