1 on 1を実施するにあたって大事なことは、部下に充分話をしてもらうことである。なぜなら1 on 1の目的は部下が自分の経験を具体的に言語化する中で深く内省し、成長に結びつけることだからだ。上司の役割はあくまで部下の学びの支援である。
上司は、自分の考えやアドバイスを先に言わずに、部下の話を最後まで聞くことが求められる。例えば部下がある社員の周囲とのコミュニケーションの問題について話している場面を想像してみたい。会話の途中で部下が、「(その社員は)一緒に働く周囲のメンバーとぶつかりがちで、ときどき険悪な雰囲気になることがあるんです」と発したとしよう。こんな場面では、上司は「まわりとの協調がうまくできていない……?」などと、自分の主観を加えずにニュートラルな言い換えを使うとよい。これをきっかけに、意味合いが違っていれば部下は言葉を修正するし、さらに掘り下げて問題の本質を探れるようになっていく。
その後、対話を進める中で問題の本質が明らかになっても、上司は次にとるべきアクションを先に提示してはいけない。部下自らが対処法を思いついて、上司に宣言し、実際にそれを行動に移す。こうしたプロセスを経ることで、1 on 1は部下にとって貴重な成長機会となる。
1 on 1の目的は次の2つである。1つ目は社員の経験学習を促進することだ。経験学習とは、職場での経験を学びに転換して、次の仕事経験に活かしていくという考え方を指す。経験学習をうまく機能させるには、経験を学習に換える振り返り、すなわち1 on 1が欠かせない。
ヤフーが採用している経験学習サイクルは、「具体的経験→内省(振り返る)→教訓を引き出す(持論化、概念化)→新しい状況への適用(持論・教訓を活かす)」というプロセスから成る。
3,400冊以上の要約が楽しめる