本書の物語は、主人公の熱血漢銀行マン鏑木健一が、経営不振に陥った書店「クイーンズブックス」を立て直すため、金沢銀行から出向を命じられるところから始まる。
出版不況により、未来が明るいとは言いがたい本屋への出向を言い渡された鏑木を待っていたのは、「首切り鏑木」とあだ名をつけ、鏑木を敵視する同社社員だった。創業者である先代の夫が急逝し、専業主婦からやむなく代表に就任した美人女性社長の黒木。好敵手としてやりあうことになる本店の西田店長。理論派で、後に鏑木ともっとも早く打ち解ける小松店の唐戸店長。彼らを筆頭に、一癖も二癖もあるメンバーが本書には次々と登場する。
鏑木は、こうした困難な状況の中で失敗をくりかえしながらも、企業再生を果たすために邁進していく。
金沢銀行からの出向ということで、店舗閉鎖や人員の大幅削減が警戒される中、出勤初日の夜に開かれた歓迎会の席で鏑木が掲げたのが、「決算書の読み方」と「マーケティングの基本」だった。
鏑木は翌朝から黒木社長に対し、「決算書(損益計算書・貸借対照表)の基本的な見方」をレクチャーしはじめた。その中でくりかえされるのが、(1)キャッシュの流れと利益は別であるということ、(2)銀行からの資金調達は決算書がわからなくてはできないということだ。
売上高から販売原価を差し引いた「売上総利益(粗利益)」、売上総利益から経費を引いた「営業利益」をはじめ、5種類の利益が決算書を読み解く重要項目になると鏑木は熱弁をふるった。
その後、この日の黒木社長へのレクチャーを終えた鏑木は、クイーンズブックの本店へ向かった。本店の西田店長に対し、鏑木がマーケティング理論の裏づけとして挙げたのが「AIDMA(アイドマ)」だ。AIDMAとは、顧客が商品に「気づき(Attention)」、「興味(Interest)」を持ち、買いたいという「欲望(Desire)」が生まれ、「記憶(Memory)」し、「購買行動(Action)」に移るというフローをあらわしている。
また、鏑木が昔から通うカウンターBAR「白樺」の女性バーテンダー奈央子は、(1)「さすがぁ〜」(2)「知らなかったぁ〜」(3)「素敵ぃ!」(4)「センスいい〜」(5)「そうなんだ〜」からなる「オヤジ殺しのサ行」を紹介し、その本質を「相手の承認欲求を満たすこと」だとしている。これは接客だけでなく、マーケティングの基本でもある。
「クイーンズブックス」出勤3日目、小松店への現場視察に出かけた鏑木は、同店の唐戸店長と語り合った。大変な理論家でもある彼と会話をするうちに、次第に両者は打ち解けていった。
ここで鏑木が口にした「マーケティングとは、モノが自発的に売れる仕組み作りのこと」という考え方と、「4P理論
3,400冊以上の要約が楽しめる