崖っぷち社員たちの逆襲

お金と客を引き寄せる革命――「セレンディップ思考」
未読
崖っぷち社員たちの逆襲
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お金と客を引き寄せる革命――「セレンディップ思考」
未読
崖っぷち社員たちの逆襲
出版社
出版日
2016年04月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

社会人が身につけるべき「会社のお金」と「マーケティング」の基本を、できるかぎり楽しく、でもしっかりと理解したい――そういう方にお薦めしたいのが本書だ。なぜなら本書はビジネス実用書であるとともに、すぐれたエンタテインメント小説でもあるからである。

経理やマーケティングはともすると難解に感じられ、敬遠しがちな人も少なくない。だが、これらを理解しなければ、企業や店舗の規模を問わず、今の時代で成功するのはむずかしい。

こうした苦手意識を持つ人でも理解しやすいように、多彩な登場人物が織りなす小説形式で進行するのは、本書の大きな特徴といえる。「決算書(損益計算書・貸借対照表)の基本的な見方」「マーケティングの基礎知識」などが登場するバランスも実に絶妙だ。物語を読み進めるだけで、基本的な知識が自然と学べるようになっている。

経営不振に陥った書店「クイーンズブックス」を舞台に、金沢銀行から出向を命じられた主人公の熱血漢銀行マン鏑木健一。最初は社員から敵視されていた彼が、他の登場人物たちと徐々に化学反応を起こし、共闘していく様は痛快である。ビジネスパーソンなら、自分の境遇やキャリアに近い登場人物に感情移入し、前のめりになって読んでしまうにちがいない。

スキルアップに最適な入門書として、あるいは初期衝動をいつまでも忘れないための情熱の物語として、ぜひ何度もお読みいただきたい一冊だ。

ライター画像
田中佐江子

著者

小島 俊一 (こじま しゅんいち)
1957年福岡県生まれ、明治大学政治経済学部卒。
㈱トーハン入社後2005年石川県「王様の本」へ出向し、書店現場での経験を積む。その後トーハン執行役員近畿支社長、同九州支社長を経て、2013年に四国・松山の㈱明屋書店代表取締役就任、現在に至る。
中小企業診断士・産業カウンセラーの資格を持ち「良いコミュニケーションが人生を豊かにする」をテーマに、コーチングやNLPの手法を用いた「魔法質問セミナー」を開催中。中小企業再生をライフワークとしている。
週刊ダイヤモンド誌で全国300万社対象の2016年「地方『元気』企業ランキング」で明屋書店を日本一に導く。
小島俊一ホームページ http://land-eye.jp/

本書の要点

  • 要点
    1
    企業再生に不可欠なものは、経営における決算書の見方と、社員のやる気に火をつけるマネジメント手法を学ぶことである。
  • 要点
    2
    守りの「コスト削減」と攻めの「イノベーションを伴う店舗改革」をおこなったことで、経営不振に陥っていた「クイーンズブックス」は見事復活した。
  • 要点
    3
    「セレンディピティー」とは、誰もが持つ偶然の幸運を発見する能力のことだ。気になる「情報」や「モノ」を顧客の心に反応させるためには、セレンディピティー(セレンディップ思考)を意識した展開が欠かせない。

要約

企業再生への道

銀行員から本屋へ

本書の物語は、主人公の熱血漢銀行マン鏑木健一が、経営不振に陥った書店「クイーンズブックス」を立て直すため、金沢銀行から出向を命じられるところから始まる。

出版不況により、未来が明るいとは言いがたい本屋への出向を言い渡された鏑木を待っていたのは、「首切り鏑木」とあだ名をつけ、鏑木を敵視する同社社員だった。創業者である先代の夫が急逝し、専業主婦からやむなく代表に就任した美人女性社長の黒木。好敵手としてやりあうことになる本店の西田店長。理論派で、後に鏑木ともっとも早く打ち解ける小松店の唐戸店長。彼らを筆頭に、一癖も二癖もあるメンバーが本書には次々と登場する。

鏑木は、こうした困難な状況の中で失敗をくりかえしながらも、企業再生を果たすために邁進していく。

社長は決算書を読めなければならない
maroke/iStock/Thinkstock

金沢銀行からの出向ということで、店舗閉鎖や人員の大幅削減が警戒される中、出勤初日の夜に開かれた歓迎会の席で鏑木が掲げたのが、「決算書の読み方」と「マーケティングの基本」だった。

鏑木は翌朝から黒木社長に対し、「決算書(損益計算書・貸借対照表)の基本的な見方」をレクチャーしはじめた。その中でくりかえされるのが、(1)キャッシュの流れと利益は別であるということ、(2)銀行からの資金調達は決算書がわからなくてはできないということだ。

売上高から販売原価を差し引いた「売上総利益(粗利益)」、売上総利益から経費を引いた「営業利益」をはじめ、5種類の利益が決算書を読み解く重要項目になると鏑木は熱弁をふるった。

マーケティングの基本を身につけよ

その後、この日の黒木社長へのレクチャーを終えた鏑木は、クイーンズブックの本店へ向かった。本店の西田店長に対し、鏑木がマーケティング理論の裏づけとして挙げたのが「AIDMA(アイドマ)」だ。AIDMAとは、顧客が商品に「気づき(Attention)」、「興味(Interest)」を持ち、買いたいという「欲望(Desire)」が生まれ、「記憶(Memory)」し、「購買行動(Action)」に移るというフローをあらわしている。

また、鏑木が昔から通うカウンターBAR「白樺」の女性バーテンダー奈央子は、(1)「さすがぁ〜」(2)「知らなかったぁ〜」(3)「素敵ぃ!」(4)「センスいい〜」(5)「そうなんだ〜」からなる「オヤジ殺しのサ行」を紹介し、その本質を「相手の承認欲求を満たすこと」だとしている。これは接客だけでなく、マーケティングの基本でもある。

マーケティングとマネジメントの難しさと面白さ

○○屋さんは、潰れる
oatawa/iStock/Thinkstock

「クイーンズブックス」出勤3日目、小松店への現場視察に出かけた鏑木は、同店の唐戸店長と語り合った。大変な理論家でもある彼と会話をするうちに、次第に両者は打ち解けていった。

ここで鏑木が口にした「マーケティングとは、モノが自発的に売れる仕組み作りのこと」という考え方と、「4P理論

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要約公開日 2017.08.16
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