2016年10月にリリースされた「マストドン」は、ドイツ生まれの技術者オイゲン・ロッコ氏によって開発されたSNSだ。ツイッターは日本人のユーザー数30万人に達するのに2年8カ月を要したが、マストドンはその約4分の1の時間しかかからなかった。
マストドンはツイッターに似た、短いメッセージを投稿できるサービスである。ツイッターと異なり、公開範囲を用途に合わせて選ぶこともできる。たとえば、映画やテレビのネタバレを含む投稿などの場合、核心部分を隠して表示することで、まだ見ていない人に配慮ができるようになっている。
マストドンが他のSNSと決定的に違うのは、ひとつの企業によって運営されているサービスではなく、オープンソースであるということだ。世界中の管理者が、マストドンを使って独自のサービスである「インスタンス」を立ち上げているという構図である。そのため、ユーザーがアカウントを登録する際は、まず自分が所属するインスタンスを選ばなければならない。
マストドンで表示されるタイムラインは3種類だ。(1)自分とフォローした人の投稿だけが流れる「ホームタイムライン」、(2)インスタンス内のすべての投稿が表示される「ローカルタイムライン」、そして(3)外部のインスタンスの投稿も流れる「連合タイムライン」である。
複数のインスタンスが連合してネットワークを形成することから、マストドンは「分散型SNS」と呼ばれている。
2017年4月上旬、マストドンのユーザー数が急増した。これは3月31日にツイッターが行った仕様変更がユーザーインターフェースの改悪と見なされ、ユーザーが流れたからだと言われている。海外のメディアはこの動きをこぞって取り上げ、マストドンの知名度はぐんと上がった。
日本でも、ASCII.jpやITmediaなどのニュースサイトで取り上げられたことや、ピクシブやドワンゴ、日産といった企業がマストドンへの関与を発表したことで、世間からの注目を集めた。さらに、5月にはウェブ系のメディアだけでなく、日経新聞などの主要メディアでも取り上げられ、その存在は多くの人に知られるようになった。
現在、日本ではピクシブの運営する「pawoo.net」と、当時大学院生が立ち上げた「mstdn.jp」が2大インスタンスとして君臨しており、「friends.nico」がこれに続いている。
ツイッターがここまで浸透した理由が、その速報性と拡散性にあることは言うまでもない。しかしマストドンの特徴は別にある。それは「ユーザーの関わる余地がある」という点だ。
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