40歳が社長になる日

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40歳が社長になる日
出版社
出版日
2017年07月30日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「2025年、日本の大企業にも40歳社長が多く誕生する」――経営現場でコンサルタントとして活躍する著者のこの仮説から本書は始まる。いや、これは予言と言ってもいい。この話を聞いてピンと来ない人も、先の話だと思った人もいるかもしれないが、「自分には関係ない」と判断を下すのは少し待っていただきたい。

ビジネスの現場は不確実な要素が多く、変化も激しい。本書が提示するのは、そのような状況下で求められるリーダーシップ、そしてイノベーションを自然発生させるための組織設計である。たとえば本書を読むことで、今では企業経営のキーワードとなった「ダイバーシティ」に関して、私たちが本質的な理解をしていなかったことに気づかされるだろう。

経営人材としての後継者育成についての重要性に気づいている企業は、すでに準備を始めている段階にあると著者は語る。実際、LINEの森川亮氏は40歳、クックパッドの岩田林平氏は42歳で社長に就任しているし、靴とバッグの修理店を全国展開するミスター・ミニットの迫俊亮氏にいたっては、社長就任時点で弱冠28歳だった。こうした事例からも、40代の若手社長が活躍する時代の到来を感じることができる。

ただし、40歳を経営幹部にさせるためには、会社は30代のうちからこのことを見越して育成を始めなければならない。まだ先の話だと思っていたら、時すでに遅しだ。ドキッとしたあなたは、今すぐ本書を手に取ろう。新時代の扉を開くためのルールが、ここには書かれているのだから。

ライター画像
金井美穂

著者

岡島 悦子 (おかじま えつこ)
株式会社プロノバ代表取締役社長。
経営チーム開発コンサルタント、経営人材の目利き、リーダー育成のプロ。年間200名以上の経営トップに対し、経営課題と事業ステージに合致した「最適な経営チーム」を特定し、後継者登用・外部招聘・経営者コーチング・経営者合宿等支援サービスをハンズオンで提供。経営者やファンド等の株主から「経営×人」領域のディスカッション・パートナーとして絶大な評価を受けている。
また、「日本に“経営のプロ“を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。
三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー、グロービスを経て、2007年プロノバ設立。アステラス製薬、丸井グループ、セプテーニ・ホールディングス、リンクアンドモチベーション、ランサーズの社外取締役。グロービス経営大学院教授。経営共創基盤やグロービス・キャピタル・パートナーズ等、多数企業の顧問・アドバイザー、政府委員会メンバー、NPO理事等、様々な役職を歴任。ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出される。主な著書に『抜擢される人の人脈力』等がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    消費者のニーズが多様化している今、重要なのは顧客とともにビジョンを創っていくことだ。そこで求められるのは、既存製品を改善する「持続的イノベーション」ではなく、課題そのものを特定し抽出する「破壊的イノベーション」である。
  • 要点
    2
    これからは、リーダーが先頭に立って旗を振るスタイルではなく、現場が見つけ出した顧客インサイトを意思決定に役立てる「逆転のリーダーシップ」が必要になる。
  • 要点
    3
    ダイバーシティとは、属性の多様性ではなく、視点や経験の多様性を指している。それらを経営判断に活かすことが重要だ。

要約

外部環境の変化とイノベーション

不確実な時代の顧客インサイト
eggeeggjiew/iStock/Thinkstock

未来は極めて不確実である。これは、ビジネスの現場では共通認識となって久しい事実だ。消費者ニーズは多様化し、移り変わりも速い。当然、商品やサービスの寿命は短くなっている。

このような時代では、企業は顧客とともにビジョンを創っていく必要がある。ビジョンとは、ミッションを実現するために具体的に何に取り組むかという指標だ。顧客の消費活動や購買意欲を促す潜在的な欲求のスイッチ、すなわち「顧客インサイト」をあぶり出し、商品やサービス開発に反映させていかなければならない。

たとえば、博多マルイは九州初出店において、顧客の声をダイレクトに聞く「お客様企画会議」を400回も実施したという。その結果、あのファッションのマルイで「だし」や高級ジュースが売られることになった。つまり、それまでのセオリーに反して、1階と2階部分を食料品売り場にしたのだ。その結果、今では多くのお客様が列をなし、博多マルイは人気店となっている。

イノベーションと知の探索

組織を変えるのは容易ではない。特に大企業や成熟企業では、いわゆる「大企業病」にかかるのが定めだと著者は経験則から考えている。「内向き、上向き、縦割り」の影響で組織の部分最適化が進むと、どうしても組織の隙間に落ちたボールを誰も拾わないということが起こってしまう。

だが、この隙間こそがイノベーションの源泉なのである。イノベーションとは、経済学者ジョセフ・シュンペーターが「新結合」と表したように、既存の知と既存の知の新しい組み合わせから生じる。イノベーションには「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つがあり、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授は、前者を「知の深化」、後者を「知の探索」と呼んでいる。

持続的イノベーションでは、課題が明らかなので、その解決方法を深掘りしていくことが求められる。一方、破壊的イノベーションでは、課題の特定または抽出が求められる。今の時代に求められるのは後者だ。

とはいえ、破壊的イノベーションは収益に結びつくかどうか不確実であり、仮説検証と失敗を重ねていかなければ真の課題が見えてこないケースも多い。しかし、だからといって、既存製品の改良ばかりになってしまわないよう、注意を払わなければならない。

フィルムと化粧品の掛け算
Massonstock/iStock/Thinkstock

富士フイルムは、まさにこの知の探索からイノベーションを起こし、経営危機を見事に脱した好例だ。

写真フィルム関連事業の利益が全体の3分の2を占めていた富士フイルムは、デジタルカメラの登場でマーケットを急速に奪われていた。売上は毎年数千億単位で目減りし、一時期は経営危機に陥ってしまった。

しかし、彼らは写真フィルムの成功にとらわれなかった。まったく異なる領域の知を掛け合わせ、新たな価値を生み出した。それが化粧品ビジネスだ。フィルムの構造と肌の構造が近似しており、ナノ浸透やジェル化などの技術にフィルムの技術を応用できることに気づいたのである。

もし、あのとき富士フイルムが過去の成功体験に固執し、写真フィルム事業の改善にこだわっていれば、会社の存続は難しかったかもしれない。

【必読ポイント!】 新時代のリーダーシップの形

逆転のリーダーシップ

既存の技術や製品の改良にとどまらず、新たな価値を生み出し続けるには、どのようなリーダーシップが適しているだろうか。

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要約公開日 2017.10.09
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