3000年の英知に学ぶリーダーの教科書

困難に打ち勝つ不変の原理原則
未読
3000年の英知に学ぶリーダーの教科書
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困難に打ち勝つ不変の原理原則
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3000年の英知に学ぶリーダーの教科書
出版社
出版日
2017年06月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

書店に行くと、経営戦略やビジネスモデル、アイデアの発想法など、分野別の「〇〇大全」、「〇〇全史」といったタイトルが並んでいる。では「リーダーシップ」という切り口で、古今東西のリーダーシップをまとめた本は? 「これぞ」という一冊が、古今東西のリーダーシップの要諦を凝縮した本書だ。

孫武の『孫子』、マルクス・アウレリウスの『自省録』といった、時の試練を耐えてきた古典。鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの『カーネギー自伝』、GEの元CEOジャック・ウェルチの『ウィニング 勝利の経営』、京セラの創業者、稲盛和夫氏の『アメーバ経営』といった、現代の一流のプロフェッショナルによる著作。こうした30の名著から抽出されたリーダーのエッセンスを学ぶことができる。それぞれのリーダー論を読み進めようと思う人にとっての有用なガイドブックともいえるだろう。

組織やチームの結束を強めて目標へ向かわせること、勝ち残るための戦略の立て方、人を動かすための心得。こうした、リーダーシップを形づくる要素は、経営者や組織のトップに限らず、どんな役職、立場の人でも実践できるものばかりだ。

様々な環境のもと、それぞれの特性を発揮した30人の横顔を追うにつれ、リーダーシップの発揮の仕方は実に多種多様だということがわかる。普遍的なリーダーシップの本質を取り入れながらも、自分らしいリーダーシップを開花させるにはどうしたらいいのか。この究極の問いに向き合ううえで、本書は有用な示唆と希望を与えてくれるにちがいない。

ライター画像
松尾美里

著者

鈴木 博毅(すずき ひろき)
1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、組織論、リーダーシップ論、マーケティングコンサルタント。MPS Consulting代表。貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略書や戦争史、企業史を分析し、ビジネスに活用できる新たなイノベーションの技法を開発している。顧問先には顧客満足度ランキングでなみいる大企業を抑えて1位を獲得した企業や、特定業界で国内シェアNo.1の企業など成功事例多数。日本的組織論の名著『失敗の本質』をわかりやすく現代ビジネスパーソン向けにエッセンス化した『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)はベストセラーとなる。その他の著作に、『ウェルチ、ガースナー、ベスーンに学ぶ「企業変革」入門』(日本実業出版社)、『戦略の教室』『戦略は歴史から学べ』(以上、ダイヤモンド社)、『実践版 孫子の兵法』『実践版 三国志』(以上、プレジデント社)、『好調を続ける企業の経営者は いま、何を考えているのか?』(秀和システム)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は、30のリーダー論の名著を通じて、集団が危機に瀕した時にどう打開するのか、周囲をどのように鼓舞して動かすのかを描き出し、リーダーが果たすべき役割や、優れたリーダーがもつ価値観、視点を浮き彫りにする。
  • 要点
    2
    リーダーの重要な役割の一つは、現実を冷静に見据えると同時に、組織やチーム全体に勢いをもたせ、個人の総和以上の力を発揮させる環境整備である。
  • 要点
    3
    経営理念は、メンバーが一致団結して同じ目的地に向かううえでの原動力となる。

要約

人を率いるためのリーダーの心得(『アンデスの奇蹟』)

厳寒の雪山でどう生き延びるか

極限状態で求められるリーダーシップとは、どのようなものか。この難題を人々に突きつけたのが、1972年の冬に起きた飛行機墜落事故である。南米の雪山アンデスで、学生のラグビー選手団とその家族たちを乗せた飛行機が墜落し、その際に45名中12名が死亡した。あまりの悪天候で救助隊は墜落機を発見できず、負傷者と体力を失った者から次々と息絶えていく――。厳寒の雪山で、食料もわずか。こうした極限状況で学生たちはサバイバルを強いられることとなった。

事故直後にリーダーシップをとったのは、ラグビーチームのキャプテン、マルセロ・ペレスである。彼はかろうじて残った機内を整備し、負傷者を暖かい場所に集めて懸命に励ました。「夜が明ければ、きっと捜索隊が発見してくれる」。しかし、遭難から11日目の朝、絶望のニュースが無線通信機から流れてきた。悪天候のため、チリ当局が捜索活動を終了するというのだ。ペレスは自分の信念が打ち砕かれ、自信を失い、リーダーの役割を放棄した。そして、その後雪崩に巻き込まれて亡くなった。

ラグビーという一定のルールのもとで行うゲームでは、堅実なペレスは優秀なキャプテンだった。しかし、こうした不測の事態では、変化する現実に対応できるリーダーに変貌すべきだったのだ。

極限状況を打破するのは、堅実主義より現実主義
Vasilvich/iStock/Thinkstock

一方、自力脱出を主張していたナンドというメンバーが、リーダーとして期待を集めていくこととなった。リーダー経験は皆無だったが、彼は過度の期待や楽観主義は死につながることを理解していた。そのため、仲間にも安易な期待をもたせぬようにした。「あと少しで助かる」と思い込めば、現実がその期待を打ち砕いたとき、自分の心も死に引き寄せられてしまうからだ。

ナンドはこう心に誓った。「この山々に対して、知ったかぶりはやめる。自分の体験という罠にはまらない」。ナンドは八方塞がりの状況のなかで、歩いて脱出するという打開策を貫徹することに集中した。そしてついに村にたどり着き、救助を求めることに成功し、彼を含めて16名が生還した。

極限状況に打ち勝つリーダーシップとは、現実と向き合い、黙々と目的地へと歩みを進められる人のものだといえる。

決してブレないリーダーの自己研鑽(『カーネギー自伝』)

極貧から世界一の鉄鋼王へ

リーダーはどのようにして、その他大勢から抜け出し、人を動かしていくのか。出世の極意を学ぶのに格好の人物は、アンドリュー・カーネギーである。

19世紀半ば、12歳のカーネギーは両親とともにアメリカに移住した。彼の最初の仕事は、綿織工場での糸巻だった。週給1ドル20セントという過酷な労働条件だ。あるとき工場責任者は、計算が得意なカーネギーに記帳の業務を任せた。これまで責任者は単式簿記で記帳していたが、カーネギーは大きな商社が複式簿記を使っていることを知り、夜学に通って知識を習得するという、驚くべき探求心と熱意を発揮した。

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要約公開日 2017.09.25
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