電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」

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ジャンル
出版社
出版日
2017年01月20日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

電力業界は電力小売自由化が始まり、50年に一度の大転換期を迎えている。インターネット革命に匹敵するほどの劇的な変化が、始まろうとしている。スマートメーターが家庭に順次設置され、個人の詳細な電気利用状況がリアルタイムで収集できることで、巨大な設備産業だった電力業界が、情報産業へと変貌を遂げるのである。

さらに再生可能エネルギーを利用した各地の分散型発電所・蓄電池などの設備を、IoTで電力需要を管理することと組み合わせることで、ひとつの大きな発電所のように機能させる仮想発電所も実現できるのだ。人やモノの振動など、身近な環境から採取できる微小エネルギーを、電力に変換する環境発電技術、電線を使わずワイヤレスで給電できる技術など、様々な技術開発も急速に進展してきている。

スマートメーターが普及し電気製品もその規格に対応すると、収集されたデータを分析すれば個人の生活スタイルや趣味嗜好まで分かるようになる。そんな時代になると、個人の電気利用情報は高い価値を生むこととなり、個人で売れるようになるかもしれないのだ。

日本経済は、かつて重厚長大な産業が主役だった。巨大な発電所を有する電力業界も、その中のひとつだ。しかしこれからの電力業界は、有限の化石エネルギーを大量に消費する産業から、再生可能エネルギーを効率的に利用する産業へと、生まれ変わらなければならない。我々は、資源大国が経済的に潤う時代から、技術大国がエネルギー大国となる時代へと変化する潮流の中にいる。

ライター画像
谷田部卓

著者

江田 健二(えだ けんじ)
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。
現在は、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員、
RAUL株式会社代表取締役等。著書に「かんたん解説!! 1時間でわかる電力自由化 入門」(good.book)、「3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編―」(good.book)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    これからは、個人の電気利用情報がリアルタイムでデータ化され収集できる「電気のデジタル化」が進む。その鍵がスマートメーターであり、これにより電力業界は情報産業へと変貌を遂げていく。
  • 要点
    2
    今までは巨大発電所しかなかったが、これからは再生可能エネルギーを利用した小型の分散型発電が広がっていく。さらにIoTを利用することで、電力需要を管理できる「仮想発電所」が実現できる。
  • 要点
    3
    化石燃料を大量消費する発電から、再生可能エネルギーでの発電への移行により、「電気は使いたくなるもの」へと変わっていく。そして技術大国がエネルギー大国となる時代へと繋がる。

要約

電気はアナログからデジタルへ

デジタル化の時代
cofotoisme/iStock/Thinkstock

過去数十年で、時代はアナログからデジタルの時代へと移行してきた。カメラはフィルム方式からデジタルカメラへ、音楽はレコードからCDそしてダウンロードやストリーミングへ、本も紙の本から電子書籍へと、デジタル化への道を歩んでいる。

このデジタル化には様々なメリットがある。最大のメリットは、情報が蓄積・保存・伝達しやすくなることだ。このデジタル化のメリットを生かして多くの産業やビジネスが発展してきている。

デジタル化によって、日常生活にも「シェア」するというライフスタイルが、急速に広まった。例えば、写真はデジタル化することで、旅行中でもスマホからSNSにアップし、大勢の人とスピーディーにシェアできるようになった。

また、モノを所有するのではなく、空いているものや余っているものを、シェアして有効活用する「シェアリングエコノミー」も世界的に拡大しつつある。

鍵はスマートメーター

このデジタル化の波は、次に「IoT」という変革を引き起こしている。そして、このすべてのモノがインターネットへと繋がるIoTの時代が、「電気のデジタル化」の幕開けへとなる。

電気のデジタル化とは、電気の流れ方や流れる量、つまり「電気利用情報」がデータ化・数値化されるということだ。現状では電気利用情報は、月単位でしか計測していない。しかしこれを、デジタル式電気メーター「スマートメーター」を用いることで、リアルタイムにきめ細かく取得できるようになる。これが電気のデジタル化なのだ。

スマートメーターは、2016年4月の電力自由化にともない、普及し始めている。大きな特徴は、検針員による検針作業が不要で、自動検針が可能なことにある。他にも「双方向通信機能」で、新しい技術やサービスと繋がるメリットもある。

電気利用情報は30分ごとに取得できるので、電力自由化を契機に新しい料金メニューが出てきている。例えば、安い夜間電気だけ買う、のようなユーザーのライフスタイルやニーズに対応したメニューが選べるのだ。今後は、電気取引市場の電気代に連動した「市場連動プラン」などが登場する可能性も考えられる。

スマートメーターで変わるライフスタイル
mattiestudio/iStock/Thinkstock

今後、スマートメーターに対応する家電が登場すると、家電機器ごとに電気利用量が分かるようになる。また、どの家電がどのタイミングで使われたか、人の生活や行動の記録「ライフログ」が分かる。これにより、子供や高齢者の見守りサービスにも役立つだろう。一人暮らしの高齢者なら、そうした情報が遠隔地にいる家族や医療機関に通知されるようなシステムも始まるだろう。

スマートメーター、スマート家電、家庭用電力管理システム(HEMS)、IoTの連動によって、その人の電力使用状況つまり生活スタイルが、すべて「見える化」できるのだ。

電気利用情報を細かくデータ分析すると、

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要約公開日 2017.09.24
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