社会を大きく変えるものは著者によると次の2つである。それは「技術」と「社会の要請」であり、それぞれシーズとニーズと言い換えてもよい。
AIやIoT、ビッグデータ、情報のデジタル化。こうした技術革新がここ5年から10年で、世の中のあり方を大きく変えると著者は予測している。19世紀の電力革命の例を考えてみるとわかりやすい。発電機が発明され、電力会社が設立され、発電所から消費地へ送電線がつながることは、電力という新技術が起こした巨大なイノベーションの必要条件だった。しかし真に世界を変えたのは、敷かれた送電線から、電気を利用した新しい機械などを考案し、実行した人たちだ。
そして、今まさにこうした大きな変革が、AIやIoTなどの領域で起ころうとしている。電力革命に匹敵する、もしくはそれ以上のインパクトを社会に与えるかもしれない。
著者は、人口が減少しても、経済は成長できると主張している。なぜなら、生産要素が増えなくても、技術革新やビジネスのやり方の変化により、生産性が向上するケースも考えられるからだ。つまり、新たなイノベーションが人口減少というマイナス要因を跳ね返すというわけだ。
実際のところ、アメリカの「黄金の100年間」は、技術革新によってもたらされたといえる。電力が供給され、様々な家電製品が普及し、自動車の利用が増えることで、社会全体にダイナミックな変化が起きた。しかし、マクロ経済学者のゴードンによると、これほどの影響力のある技術革新は現在では減ってきているという。
著者は、経済の長期停滞の原因は需要の落ち込みではなく、技術革新が起こらず生産性の向上が実現できないためだと考えている。となると、金融緩和や財政支出で経済を回復軌道に乗せるのは限界があるという見方もできる。そこで、日本企業に対し、日本の市場が縮小するというイメージを捨て、生産性向上のために日本国内への投資を増やすことを、著者は提唱している。
著者は、技術革新によってどのように産業やビジネスモデル、人々の働き方が変わっていくかについて、次の5つの視点を提示している。
1つ目は、技術革新によって、モノやサービスの流れが短くなることだ。アマゾンなどのECサイトの登場や、フィンテックの登場はこれにあたる。
2つ目は、財やサービスを提供する側とそれを利用する側の関係が、より継続的な形に変わってくることである。定額会費制などの「サブスクリプションビジネス」と呼ばれるものがこれにあたる。
3つ目は、既存のビッグビジネスが破壊の脅威にさらされていくということだ。金融機関にとってのフィンテックの存在は、まさにその典型である。
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