普段私たちが何気なく利用しているお店の中には、近くて便利なのでよく利用するお店もあれば、ちょっと遠いけどわざわざ出かけていくお店もある。そこには何らかの人間心理が働いているはずだ。これを無視しては出店戦略を立てることはできない。
丸亀製麺やサイゼリヤなど、ファミリー層向けのロードサイド店を例に考えてみよう。このような大手飲食チェーン店では、お母さんが車に子どもを乗せて来店することが多い。そこで、車を運転して来店するお母さんの心理的障壁を考慮する必要性が生じる。それはいったい何だろうか。
一般的に、女性ドライバーには右折を苦手とする人が少なくない。対向車線をまたいで店舗に入らなければならないからだ。すると、右折したくないがために、「もう少し先の左側にある別のお店に行こう」と思う人が出てくるかもしれない。そうなると、大事なお客様を逃してしまうことになる。
このようなケースでは「導流帯」をうまく活用するといい。導流帯とは、センターラインに沿ったスペースで、右折が苦手な人でも落ち着いて曲がれる地帯だ。立地のセオリーを押さえた丸亀製麺やサイゼリヤは、この導流帯がある場所にきちんと出店している。
お客様が来店時に感じる心理的障壁は駐車場にも存在する。
たとえば、Aの駐車場では駐車スペースを区切るラインが一本線だとする。一方、Bの駐車場では、ラインがU字形の二重線になっているとする。さて、どちらが駐車しやすいと感じるだろうか。
実際には、ラインが1本でも2本でも、隣の車との間隔はたいして変わらない。しかし二重に線があると、間隔が広く見えるという錯覚が生じる。たかがライン1本あるかないかの違いだが、特に運転が得意ではない女性に対しては、駐車時の心理的障壁を取り除くのに有効となる。
「右折」や「駐車スペース」は店内に入る以前のちょっとしたことであり、一見売上に直接影響を与えるとは思えない。しかし、このようなドライバー目線の「入りやすさ」を考慮した立地の確保や店舗づくりをすることが、「次の来店」につながるかどうかを左右するのだ。
一昔前にはそこにあるだけで重宝されたコンビニだが、いまやコンビニは全国に約6万店舗もある。そうなると、より利便性の高い店舗にお客様は流れてしまう。ゆえに、コンビニ業界にとっては、立地戦略に沿った出店こそが生命線という時代になっている。
そんなコンビニ業界にあって、確固たる信念を持って店舗開発にあたっているのが、王者セブン‐イレブンだ。彼らは「ここにセブン‐イレブンがあるべきだ。今そこに、何が建っていようと」とでも言わんばかりの出店をするという。
これは競合であるローソンやファミリーマートとは正反対のやり方だ。ローソンやファミリーマートは、まず不動産屋を通じて空きテナント物件を探し、そこから選んで出店する。
ところが、セブン‐イレブンは出店先エリアの分析をおこない、「この角地に出店すべきだ!」となった場所に出店する。
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