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ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?
未読
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ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?
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出版社
出版日
2016年02月03日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「正射必中」。弓道において、正しく射られた矢は必ず的に当たるという考え方だ。

ゴディバ ジャパンの社長を務める著者は、長年続けてきた弓道を通じて、ビジネスにおける正しい姿勢を学んだという。顧客はターゲット、つまり「的」に、企業は「射手」に見立てることができる。彼は、ビジネスにおける「正射必中」を「お客様のことを本当に考えて良い商品を作れば、結果は必ずついてくる」ことだと説く。その結果として、ゴディバ ジャパンは5年間で2倍の売上という驚異的な成果をあげることができたのだと語る。

フランス人である著者は、29歳から弓道を始め、今や弓道錬士五段の腕前をもつ。趣味として楽しむ以上に、弓道を自己の成長の糧とし、練達に励んできた。本書は、著者が学んだ弓道の教えと照らし合わせながら、独自のビジネス論が展開される。ゴディバやリヤドロといった企業での、気づきや戦略についてのエピソードも多数盛り込まれているので、ぜひご注目いただきたい。

また、海外の視点から見た日本についての意見が聞けるのも、この本の醍醐味の一つだ。自分たちでは気づかない、日本の素晴らしい点や改善すべき点を学ぶことができるのは大変貴重だといえる。

利益や効率ばかりが論じられがちなビジネスの世界において、内面を磨く「道」の精神性を身につけた著者からの言葉はすがすがしく響く。本書から、ぜひ多くの知恵を得てほしい。

ライター画像
二村英仁

著者

ジェローム・シュシャン
1961年フランス、パリ生まれ。
HEC Paris経営大学院卒業。専攻はインターナショナルビジネス。1983年、大学在学中に旅行で初来日したのを機に日本文化に興味を持ち、29歳で弓道を始める。フランス国立造幣局、ラコステ北アジアディレクター、LVMHグループ・ヘネシーのディレクター、リヤドロジャパン代表取締役社長などを経て、2010年ゴディバ ジャパン代表取締役社長に就任。商品のパッケージデザインに世界の有名アーティストを起用、テレビCMなど、様々な施策により5年間で売り上げ2倍を達成。現在、在日ベルギー・ルクセンブルク商工会議所の理事を務める。
2010年国際弓道連盟理事就任、2013年弓道錬士五段取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    「当てるのではなく、当たる」。この考え方こそヒットを生む秘訣だ。純粋な心で顧客と向き合い、顧客と心を一体化させることで、顧客との距離が消滅する。そして、「当たる」を実現することができる。
  • 要点
    2
    うまくいかないときは、本当の原因を徹底的に探ることで、矯正すべき点を見つけることができ、前進できる。
  • 要点
    3
    日本人は「見取り稽古」という稽古法にあらわれているように、見て学ぶ能力に優れている。これを、より積極的にビジネスで活用していくべきだ。
  • 要点
    4
    問題に直面したときは、自分自身を見つめ直す。すべては自分の責任だという考え方が自分自身を向上させる。

要約

【必読ポイント!】弓道から学んだビジネスの秘訣

当てるのではなく、当たる
shahfarshid/iStock/Thinkstock

「当てるのではなく、当たる」。弓道の教えのひとつであるこの言葉は、的に当てるのではなく、当たるように弓を射ることが重要だと説いている。的を狙うのではなく、的と一体となるのだ。それは、的と自分との距離を意識の中で消滅させることともいえる。

この考え方は、ビジネスにおけるヒットの秘訣でもある。「的」、つまりターゲットである顧客を狙って当てようとするのではなく、当たるという現象を起こす。これを実現するために、顧客の心と会社の行動が一体になるように、一切の距離が無くなるようにするのだ。

たとえば、ゴディバは、高級チョコレートという認知はされていたものの、気軽に立ち寄りづらいと思われていることが課題だった。ただ、憧れの存在であることと、気軽に行ける立地であることは、対立する方向性であるかのように見え、社内でも意見が割れていた。しかし、ゴディバ ジャパン社長に就任した著者が、実際に客として店舗に行ってみたところ、自然に、この高級感のある店がもっと身近な場所にあったらいいのに、と思えたという。アスピレーショナル(憧れ)とアクセシブル(行きやすい)は両立できると確信したのだ。二つを戦略の両輪として、ゴディバ ジャパンは動き出した。具体的には、テレビ広告で「憧れ」を強化し、製品ラインナップを増やしながら、コンビニエンスストアなど「行きやすい」場所を販路として拡充した。

結果、戦略プランは顧客の心を掴み、店舗への動員数も増えた。そして5年間で売り上げ2倍という成果につながった。顧客の心と一体化したからこそ、顧客との距離が消えた。そして、狙わないからこそ、ターゲットを正しく射ることができたのだ。

「当たる」ビジネスを生む、「純粋な心」

ビジネスにおいて「当たる」という現象を起こすためには、「純粋な心」で顧客と向き合うことも大切だ。素直に顧客の声に耳を傾け、顧客にとってよいものを作ることに集中する。

このとき、素直に聞くという点が重要である。特に、会社の上層部に身を置く人ほど、豊富な経験が裏目に出てしまい、顧客や部下の意見をくみ取れなくなることがある。すると、部下も意見を述べづらくなり、組織にそれが蔓延し、ひいては顧客との距離が広がってくる。結果、マーケットから取り残されるといった事態に陥ってしまうことになる。

だからこそ、部下、そして顧客の意見には耳を傾ける。とりわけ、顧客の意見は直接聞く努力をするべきだ。「なぜですか?」「どう思いますか?」と、顧客のみならず他業種の人にも問いかける。そうすれば、だんだんと顧客の心がわかってくる。

自分の思い込みや狙いは捨てて、まずは「純粋な心」で顧客に向き合うことが、「当たる」ビジネスを生むのである。

セールスの鉄則「離れの心」
JackF/iStock/Thinkstock

著者が、リヤドロというスペインの磁器会社の日本法人の代表を務めていた頃のことだ。展示会販売に立ち会っていた著者に、男性が話しかけてきた。その場にあった、『希望をのせて』という、オリエント急行の駅を再現した時価360万円ほどの作品について聞きたいというのだ。著者は、その、特別お金持ちであるようにも見えない男性に、作品に込められたストーリーについて詳しく話し、二人は、蒸気機関車の黄金時代にタイムスリップしたかのような時間を過ごした。そして、「売る」ことすら忘れた瞬間に、男性はその作品を買いたいと申し出たのだ。それは、「売る」ではなく「売れた」と感じられた瞬間だった。

弓道では、矢が弓から離れる瞬間を「離れ」と呼ぶ。

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要約公開日 2017.09.06
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