現代社会では、高度なコミュニケーションスキルが当たり前のように求められる。しかし、そうした状況は時に人を疲弊させる。誰にでも、ふと心の中がからっぽになったような、空虚な気持ちになることがあるのではないだろうか。
インターネットやSNSの発達によって、いつでも誰とでも繋がれるようになった。しかし、だからこそ、そうした繋がりの豊かさは、人々に常に空気を読むことや高度なバランス感覚を要求する。心の虚しさを埋めるどころか、逆にそれを深める要因になっている。
こうした社会では、普通に生きるだけで疲れ果ててしまっても不思議ではない。多くの人は、人間関係の維持に膨大なエネルギーを使うことによって、満たされた人生を送るチャンスを逃してしまっている。そんな現在、より良い人生を送るには、日頃の人間関係から切り離された「ひとりぼっちの時間」(ソロタイム)が重要となる。
私たちを疲れさせるものは何か。それは心の中に棲む他人である。「あの人は私のことをどう思っているのか」と、他人からの評価やフィードバックを気にしてしまう。その理由は、私たちが「群れ」の中で生きているからだ。
家族からの期待、仕事での責任、社会常識や慣習。こうした様々な他人の声が、やるべきこと、やってはいけないこと、あるべき自分などを私たちに押し付けてくる。私たちが自由意志だと思っているものは、実は群れの価値観や慣習に大部分が規定されている。群れの中にいる時間(ソーシャルタイム)の間、私たちはそうした周囲の声から逃れられない。
しかし、ひとりぼっちの時間を過ごすことで、日頃の様々なプレッシャーから解放され、客観的に自分を見つめ直すことができる。
ソロタイムは寂しさとは無縁なものである。もし「ひとりぼっち」でいることに孤独や寂しさを感じるのならば、それは群れに対して依存心を抱えているからにすぎない。会社や家族、友人といった、今自分が属している群れを失う恐怖が、孤独を感じさせるのだ。よって、ソロタイムとはLonelyではなく、Alone(独立)のニュアンスに近い。むしろ、群れの中で過ごすストレスから解放された、さわやかなひとときである。
そもそも、群れとは幻想によって成り立っている。会社や国家、あるいは家族でさえも、必ずしも生物学的な根拠があるわけではない。これらの幻想を共有することによって、人間は複雑な組織を作ることができるわけだが、その一方で、群れという幻想は常に変化し続けている。今自分がいる群れがどれほど心地よいものだとしても、転職や退職、子どもの独立など、ライフステージの変化によって、それはいずれ失われてしまう。よって、群れの中で自分の居場所を確保すること以上に、本当にそれが自分にとって最優先すべき課題なのか、と自分に問うことがより重要になる。
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