20~40代のビジネスパーソンの中には、会社への不安や不満、将来の見通しが立たないことへの不安を持つ人が少なくない。「このままではいけないのかもしれない」という違和感を抱いたのなら、それは正しい。
何が起こるか予測不可能なVUCA(ブーカ)の時代において、不安や違和感を抱いているならば、変化を求めるべきだ。そもそも、就職・転職時からずっと安泰という環境はもはやない。「何かが違う」という感覚を信じて、「違ってもいい」という意識で発想し、行動するべきだ。
仕事選びをはじめ、人生のあらゆる局面で重要なのは、「ビッグピクチャーで考える」こと、そして「主観を大切にする」ことである。
1つ目は、過去の経験にとらわれず、いま地球規模でどんな変化が起きているのかを知り、大きな絵の中で、将来なりたい自分を考えることである。2つ目は、転職するかどうかを、自分のやりたいことに合うかという主観で決めることだ。他人から「その業界は斜陽産業だ」といわれようとも関係ない。自分の主観で決めれば、結果について他人や環境のせいにすることがなくなり、自ら責任をとりやすくなる。
著者はタイで生まれ育ったときから、「よそ者」としての立ち位置を自覚していた。日本に一時帰国して通った、日本の公立学校でもよそ者扱いだった。しかし、だからこそ、自分の価値を認めてもらうために、タイで通っていた高校、インターナショナルスクールでは「野球とバンド活動で活躍する」という道を見つけた。著者は、「差異化」というよそ者が生き抜く術を自然と身につけていたのかもしれない。
ここで、差別化と差異化の違いを説明したい。差別化は「差をつけて、分ける」という言葉のとおり、違いを強調し、競合とは異なる市場で戦うという考え方だ。「みんなとは違う」と構えてしまうため、敵をつくりやすい。一方、差異化は、自分自身の違いは示しながらも、あくまでも共通の土俵で戦うことである。
よそ者は、これまでの業界の常識や、その道のプロの固定観念にとらわれていない。だから、差異化するポイントを見抜きやすい。これこそが、よそ者ならではの価値だといえる。
著者が差異化を事業戦略に活かした事例として、中国白物家電最大手、ハイアールでの経験を挙げる。著者はハイアール アジアグループのCEO兼社長を2年間務めた。事業再生というミッションを達成するために注力したのが、新商品開発である。
白物家電の主力である冷蔵庫と洗濯機については、メーカー間で機能や性能に大きな差はない。よって、消費者・メーカー・流通の間では、「白物家電は最終的に値段で選ばれる」のが長らく常識となっていた。こうした常識にくさびを打ち込んだのが、「世界一小さい洗濯機」である。これは、ある開発者の意見をもとに、半年以内という異例の速さで製品化した、手のひらサイズ洗濯機「COTON」だ。著者は経営者として、開発や意思決定のスピードを遅くしていた障害を取り除き、開発者に権限を委譲した。
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