差異力

知らないことは武器になる
未読
差異力
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差異力
出版社
総合法令出版

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出版日
2017年11月09日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「何かが違う」「しっくりこない」。こうした違和感や小さな不満は、そっと胸にしまっておくことが大人の対応とされる。しかし、はたして違和感を封じたままで、後悔しない人生を送れるのだろうか?

日本コカ・コーラやデル、レノボ、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。著者の伊藤嘉明氏は、業界の垣根を越えて、名だたるグローバル企業の要職を歴任し、白物家電のハイアールの事業再生などを手掛けてきた。まさにビジネス界の異端児と呼ばれる人物だ。どの企業においても、業界の常識や慣習にとらわれない発想と大胆な挑戦を続けてきたという。その源泉が「差異力」である。違和感に素直になり、よそ者だからこそ差異に気づき、疑問をもつ。こうした「差異力」をキャリア構築にどう活かせばいいのか。差異力を磨くにはどうしたらいいか。そのエッセンスを凝縮させたのが本書だ。

著者は2016年、起業という道を選んだ。自分の人生の舵を取ってきた人たちに出会い、自分自身と向き合うなかで、「日本の覚醒に力を注ぎたい」という心の声に素直になれたのだという。よそ者として生きる中で感じたであろう葛藤や孤独を、圧倒的成果を出すためのエネルギーに変えてきた著者。そんな彼の言葉だからこそ、並々ならぬ情熱が感じられ、時に厳しい忠告も腹落ちしやすい。

自らの殻をやぶり、新たな道を模索する際の心の拠り所になってくれる一冊だ。いま自分の人生に違和感を覚えているすべての人たちに本書を贈りたい。

ライター画像
松尾美里

著者

伊藤 嘉明(いとう よしあき)
X-TANK コンサルティング株式会社 代表取締役社長兼CEO
世界のヘッドハンターが常にその動向を注視するプロ経営者。2015年「日経ビジネス」の「次代を創る100人」に選ばれる。2016年X-TANKコンサルティングを設立、代表取締役社長に就任。「自己覚醒、日本覚醒、アジア覚醒」をテーマに、規模や業種を問わず、日本企業の再生に取り組んでいる。
1969年タイ・バンコク生まれ。アメリカ・オレゴン州コンコーディア大学マーケティング学部を卒業後、タイへ帰国し、オートテクニックタイランドへ入社。サーブ自動車の総輸入元として高級車の企画・販売・営業全般に携わった後、渡米し、サンダーバード国際経営大学院ビジネススクールにてMBA(経営学修士号)を取得。以後、外資系企業の本社及び日本法人にて要職を歴任する。

・日本アーンスト・アンド・ヤング・コンサルティング
・日本コカ・コーラ 広報渉外本部、初代環境経営部長
・デル 公共営業本部長兼米国本社コーポレートディレクター
・レノボ 米国本社エグゼクティブディレクター・グローバル戦略担当役員
・アディダス ジャパン 上席執行役員副社長兼営業統括本部長
・ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)ホームエンタテインメント部門日本・北アジア代表
・ハイアール アジア(現アクア)社長兼CEO
著書に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)がある。
X-TANK コンサルティング
http://x-tank.jp/

本書の要点

  • 要点
    1
    これからは「何か違う」という違和感に気づき、疑問をもつことが重要である。この違和感が差異力の源となる。
  • 要点
    2
    よそ者は、これまでの業界の常識や、その道のプロの固定観念にとらわれていないため、差異化するポイントを見抜きやすい。
  • 要点
    3
    転職にリスクはない。複数の幅広い経験をもつ人材のほうが付加価値が高くなり、それが差異化につながる。
  • 要点
    4
    複眼的なものの見方を養い、「自分オリエンテッド(自分主導)」で考えることが重要である。

要約

【必読ポイント!】 よそ者が時代を切り拓く

いま、漠然とした不安、不満があるならば、動く
Peter_Virag/iStock/Thinkstock

20~40代のビジネスパーソンの中には、会社への不安や不満、将来の見通しが立たないことへの不安を持つ人が少なくない。「このままではいけないのかもしれない」という違和感を抱いたのなら、それは正しい。

何が起こるか予測不可能なVUCA(ブーカ)の時代において、不安や違和感を抱いているならば、変化を求めるべきだ。そもそも、就職・転職時からずっと安泰という環境はもはやない。「何かが違う」という感覚を信じて、「違ってもいい」という意識で発想し、行動するべきだ。

仕事選びをはじめ、人生のあらゆる局面で重要なのは、「ビッグピクチャーで考える」こと、そして「主観を大切にする」ことである。

1つ目は、過去の経験にとらわれず、いま地球規模でどんな変化が起きているのかを知り、大きな絵の中で、将来なりたい自分を考えることである。2つ目は、転職するかどうかを、自分のやりたいことに合うかという主観で決めることだ。他人から「その業界は斜陽産業だ」といわれようとも関係ない。自分の主観で決めれば、結果について他人や環境のせいにすることがなくなり、自ら責任をとりやすくなる。

差別化ではなく、差異化せよ

著者はタイで生まれ育ったときから、「よそ者」としての立ち位置を自覚していた。日本に一時帰国して通った、日本の公立学校でもよそ者扱いだった。しかし、だからこそ、自分の価値を認めてもらうために、タイで通っていた高校、インターナショナルスクールでは「野球とバンド活動で活躍する」という道を見つけた。著者は、「差異化」というよそ者が生き抜く術を自然と身につけていたのかもしれない。

ここで、差別化と差異化の違いを説明したい。差別化は「差をつけて、分ける」という言葉のとおり、違いを強調し、競合とは異なる市場で戦うという考え方だ。「みんなとは違う」と構えてしまうため、敵をつくりやすい。一方、差異化は、自分自身の違いは示しながらも、あくまでも共通の土俵で戦うことである。

よそ者は、これまでの業界の常識や、その道のプロの固定観念にとらわれていない。だから、差異化するポイントを見抜きやすい。これこそが、よそ者ならではの価値だといえる。

家電業界の常識にとらわれない差異化
AndreyPopov/iStock/Thinkstock

著者が差異化を事業戦略に活かした事例として、中国白物家電最大手、ハイアールでの経験を挙げる。著者はハイアール アジアグループのCEO兼社長を2年間務めた。事業再生というミッションを達成するために注力したのが、新商品開発である。

白物家電の主力である冷蔵庫と洗濯機については、メーカー間で機能や性能に大きな差はない。よって、消費者・メーカー・流通の間では、「白物家電は最終的に値段で選ばれる」のが長らく常識となっていた。こうした常識にくさびを打ち込んだのが、「世界一小さい洗濯機」である。これは、ある開発者の意見をもとに、半年以内という異例の速さで製品化した、手のひらサイズ洗濯機「COTON」だ。著者は経営者として、開発や意思決定のスピードを遅くしていた障害を取り除き、開発者に権限を委譲した。

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要約公開日 2017.10.20
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