「知力」をつくる技術

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「知力」をつくる技術
出版社
出版日
2017年03月19日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

助言や提案がクライアント企業の行く末をも左右することさえある――。常に高い視座と知性、戦略性、責任が求められる経営コンサルタント。その経営コンサルタントの指導者として活躍するのが著者の船川淳志氏だ。

これまで数多くのビジネス書を世に送り出し、伝説のMBA講師の異名をもつ彼が今回手がけるテーマは「知力」である。知力とは、能動的に考える力や他者を理解する力など、広く総合的な知的能力を指す。著者が本書で紹介する知力は、変化することが当たり前となった時代、「多異変な時代」を生き抜くために必要不可欠な力だ。どんなに高学歴であっても、知識人と呼ばれる立場にあっても、必ずしも十分な知力を兼ね備えているとは限らない。一度きりの人生、可能性を広げながら生き抜くには、絶えず知力を鍛えていくことがこれまで以上に重要となる。

本書ではまず「多異変な時代」の実態に迫る。その後は、知力を多角的に鍛えるための48のレッスンが登場する。テーマは思考プロセスを点検する、因果関係に強くなる、拡散思考で制約を捨てる、結晶性知性を磨く、システム思考を身につけるといった興味深い内容が並ぶ。

知力は実社会で活用してこそ価値がある。それを見据えてレッスン形式に仕上げられた本書は、実に有益な書と言える。新しい資格を取得する、ビジネススクールに通う。こうしたことを検討しているなら、まずは本書で「知力とは何か」という本質的なテーマにふれてみてはどうだろうか。

ライター画像
二村英仁

著者

船川 淳志 (ふなかわ あつし)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。東芝、アリコ・ジャパン勤務の後、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にて修士号取得(MBA in International Management)。その後、米国シリコンバレーを拠点に組織コンサルタントとして活動。帰国後、グロービスのシニアマネージャーを経て、人と組織のグローバル化対応を支援するコンサルティング会社、グローバルインパクトを設立。NHK教育テレビ「実践・ビジネス英会話」、ビジネス・ブレークスルー大学「実践ビジネス英語講座」の講師も務めた。海外でのワークショップに加えて、慶應丸の内シティキャンパス「夕学五十講」、三井塾、大隈塾、及び各大学での講演も実施。著書に『Transcultural Management』(米国 Jossey-Bass 出版)、『ビジネススクールで身につける思考力と対人力』(日本経済新聞社)、『大学院生のためのアタマの使い方』(東京図書)、『世界で戦う知的腕力を手に入れる』(今北純一氏との共著、ファーストプレス)、『ロジカルリスニング』(ダイヤモンド社)、『グローバルリーダーの条件』(大前研一氏との共著、PHP研究所)等多数ある。

http://www.globalimpact.co.jp

本書の要点

  • 要点
    1
    「多異変な時代」とは、多様性の高まりに伴い、変化することが当たり前となった時代のことである。この時代に求められるのは、正しく機能する本来のコミュニケーション能力と「ほんものの知力」だ。
  • 要点
    2
    知力を伸ばすための出発点は、自分の無知と既知を把握することである。
  • 要点
    3
    笑いは場の緊張感を解きほぐし、アイデアが出しやすい状態を作り出すのに役立つ。

要約

なぜ今「知力」が必要なのか

多異変な時代

多異変な時代、それは多様性の高まりに伴い、変化することが当たり前となった時代を意味する。今後はデザインやアイデアなどの知的付加価値が重要視され、個人の行動を促す報酬も、金銭的なものから、創造性のある仕事や社会貢献といった精神的満足をもたらすものへとシフトしていく。

このような時代では、正しく機能するコミュニケーション能力を身につけることが求められる。大切なのは、相手の話す内容を理解した上で自分の考えを述べ、よりよい対話を構築する能力だ。国境や人種の垣根を越えて協業する場面が増えるからである。

これらの能力を得るには、アタマの使い方、すなわち思考方法を大きく変えなければならない。そこで出番となるのが「ほんものの知力」だ。

インターネット上で検索すればあらゆる解答が得られる今の時代、どれだけ知識をもっているかということに大きな価値はない。大切なのは、広く、そして深い「第一級の知力」であり、新たな学びを増やして自分自身を成長させていくことである。

ほんものの知力は「習慣」で育つ
monsitj/iStock/Thinkstock

長期的な見通しを立てつつ、短期的な利益も出す。必要に応じてリスクは取るが、同時にその回避策も考える。多異変な時代に求められるのは、このように相反する目標に対応できる能力だ。

知力は、鍛えれば鍛えるほど高められる。また、知力を鍛える上で、年齢や性別、携わっている仕事の内容は関係ない。これは、知力を鍛えるチャンスが誰にでも平等にあることを意味する。知力は「習慣」によって育つ。習慣を変えることは一定の努力を要するが、習慣さえ変えられればいくらでも知力を伸ばしていくことが可能だ。まずは現時点での自分の知力を把握することから始めるとよい。

知力の中核、「思考」を鍛える方法

思考プロセスの自己点検
Image Source Pink/iStock/Thinkstock

ここからは、知力を鍛えるための具体的な方法の解説に移る。まずは思考力についての理解を深めたい。なぜなら、思考力は知力の中核となる要素だからだ。

思考力とは、知識や過去の経験、イメージなど、思考を構成する要素を思い出したり、組み合わせたりする力だ。例えば、「トマトは水に浮くか、沈むか」という質問について考えてみよう。過去の経験をもとに自由に想起する人もいれば、トマトに関する知識を用いて答えを出そうとする人もいる。

ここで大切なのは、「自分はどのように思考しているのか」と、思考のプロセスを客観的に確認してみることである。答えを出すために組み合わせようとしている思考の要素は何か、それは答えを裏付ける根拠として十分なのかを自問することを習慣化したい。

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要約公開日 2017.11.02
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