多異変な時代、それは多様性の高まりに伴い、変化することが当たり前となった時代を意味する。今後はデザインやアイデアなどの知的付加価値が重要視され、個人の行動を促す報酬も、金銭的なものから、創造性のある仕事や社会貢献といった精神的満足をもたらすものへとシフトしていく。
このような時代では、正しく機能するコミュニケーション能力を身につけることが求められる。大切なのは、相手の話す内容を理解した上で自分の考えを述べ、よりよい対話を構築する能力だ。国境や人種の垣根を越えて協業する場面が増えるからである。
これらの能力を得るには、アタマの使い方、すなわち思考方法を大きく変えなければならない。そこで出番となるのが「ほんものの知力」だ。
インターネット上で検索すればあらゆる解答が得られる今の時代、どれだけ知識をもっているかということに大きな価値はない。大切なのは、広く、そして深い「第一級の知力」であり、新たな学びを増やして自分自身を成長させていくことである。
長期的な見通しを立てつつ、短期的な利益も出す。必要に応じてリスクは取るが、同時にその回避策も考える。多異変な時代に求められるのは、このように相反する目標に対応できる能力だ。
知力は、鍛えれば鍛えるほど高められる。また、知力を鍛える上で、年齢や性別、携わっている仕事の内容は関係ない。これは、知力を鍛えるチャンスが誰にでも平等にあることを意味する。知力は「習慣」によって育つ。習慣を変えることは一定の努力を要するが、習慣さえ変えられればいくらでも知力を伸ばしていくことが可能だ。まずは現時点での自分の知力を把握することから始めるとよい。
ここからは、知力を鍛えるための具体的な方法の解説に移る。まずは思考力についての理解を深めたい。なぜなら、思考力は知力の中核となる要素だからだ。
思考力とは、知識や過去の経験、イメージなど、思考を構成する要素を思い出したり、組み合わせたりする力だ。例えば、「トマトは水に浮くか、沈むか」という質問について考えてみよう。過去の経験をもとに自由に想起する人もいれば、トマトに関する知識を用いて答えを出そうとする人もいる。
ここで大切なのは、「自分はどのように思考しているのか」と、思考のプロセスを客観的に確認してみることである。答えを出すために組み合わせようとしている思考の要素は何か、それは答えを裏付ける根拠として十分なのかを自問することを習慣化したい。
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