AIが現在のようにブームになったのは、2015年ごろからだ。それまでもAIのブームは何回か起こっていたが、どれも比較的小規模なものに終わった。しかし今回は違う。2000年にビッグデータが、2010年にはディープラーニングが実用に堪えるレベルになり、すでにさまざまな形でAIが社会に浸透している。
AIの発達は、私たちの雇用にも大きく影響をおよぼすと見られている。2013年、オックスフォード大学のカール・フレイとマイケル・オズボーンは、調査した702職種のうちの47%が、今後10年ないし20年以内に自動化されるだろうと述べた(「雇用の未来:コンピュータ化によって仕事は失われるのか?」)。また、日本でも2015年、野村総合研究所が「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能に~601種の職業ごとに、コンピュータ技術による代替確率を試算~」というレポートを発表している。
しかし、たとえAI時代が本格的に訪れたとしても、人間に残された役割は残っている。それが「創造的思考」だ。
AIは過去のデータを参照する仕事を得意としている。一方、まったく新しい産業分野や、まだデータが存在しない作業には対応できない。
そこに人間の強みがある。創造的思考は、はじめての経験を乗り越えるのに必須の素養だ。原始時代から、人類は何度も天変地異に遭遇してきたが、そのたびに創造的思考を駆使して、絶滅の危機を乗り越えてきた。創造的思考こそ、人間を人間たらしめてきた「思考の遺伝子」だと言えよう。
自分は創造的思考を持っていないと考えている人もいるかもしれない。しかしそれは、創造的思考を発揮する方法を身につけていないだけのことである。法則を理解してコツさえつかんでしまえば、誰にでも創造的思考はできるのだ。
前述の『雇用の未来』によると、AI時代になっても、「創造性 (Creativity)」と「社会的知性 (Social Intelligence)」は必要とされつづけるという。本書はこの2つのテーマを軸に、創造的思考を備えている人の特徴を、さまざまな角度から描写している。
要約では、「創造性」と「社会的知性」を持つ人の特徴を、1つずつ取り上げて紹介しよう。
創造性を発揮するために重要なのは、先入観を持たないことだ。経験者の場合、過去の体験にどうしても束縛されてしまう。しかし、その業界の素人であれば、そういったことはまず起きない。
業界の素人とは、つまり「わか者」「ばか者」「よそ者」のことだ。「わか者」の場合、過去の経験がないから、先入観を持ちようがない。「ばか者」はそもそも人の目を気にしないから、失敗も気にならない。
3,400冊以上の要約が楽しめる