中国のGDP統計が疑わしいということは、以前から多くの人に指摘されてきた。日本より国土が広く、人口も10倍の規模である中国が、締め日からたった20日でGDPの確報値をまとめあげてしまうのだから。
日本の場合は、確報値を発表するのに1年近い時間を費やす。そのうえ、GDPの統計は内閣府、失業率は総務省統計局、貿易統計は財務省というように、集計の担当が分かれており、それぞれのチェック作用が働く。もちろん、これらの政府機関は、統計の対象となる業界との間に利害関係はない。
他方、中国では各地の地方政府と国家統計局が統計の集計を担っており、これらの機関は所轄地域のGDPと密接な利害関係を持っている。なぜなら中国では、経済成長の目標とは達成しなくてはならないノルマだからだ。
中国には、経済成長ノルマが大きな社会混乱を招いた前例がある。1957年、毛沢東が打ち出した「大躍進」政策だ。
毛沢東は、鉄鋼や食糧などの生産高について、無茶苦茶に高い生産目標を掲げた。これが絶対に達成できない目標であることに、多くの人は気づいていた。しかし、上からの目標は絶対であり、未達成は「死」を意味する。よって、実際には目標を達成していないのに、各地の幹部は「目標達成」の報告を送った。
農民たちは粗鋼生産量のノルマ達成のために、農機具を溶かして供出した。そのため、それ以降の農作業ができなくなってしまった。これにより、農業生産は壊滅的な打撃を受け、国内には餓死者があふれた。大躍進政策による犠牲者は控えめに見積もっても4500万人にのぼる。さすがに毛沢東は1959年に国家主席を辞任したが、中国共産党の体質は基本的に当時から変わっていない。
第二次世界大戦後、中国は同じ社会主義陣営のソ連から多くのことを学んできた。旧ソ連は自国経済を実際以上に大きく見せることで、長い間アメリカと覇を競った。
ソ連では、経済統計が「アメリカに追いつき追い越せ」という国家のイデオロギーに従属するものとなっていた。そのため、公式統計で発表される経済成長率は、実際の成長率よりもかなり過大なものになったという。
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