シュガーマンのマーケティング30の法則

お客がモノを買ってしまう心理的トリガー[引き金]とは
未読
シュガーマンのマーケティング30の法則
シュガーマンのマーケティング30の法則
お客がモノを買ってしまう心理的トリガー[引き金]とは
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シュガーマンのマーケティング30の法則
出版社
フォレスト出版

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出版日
2006年03月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

アメリカ伝説のマーケッター、シュガーマン。『全米No.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術』でその名をご存知の方もいるかもしれない。広告に特化したマーケティングノウハウが紹介された本であるが、本書『シュガーマンのマーケティング30の法則』は、人間のより根源的な心理に迫ることで、汎用的なマーケティング、セールスのノウハウを提供してくれる。

近年サービスや販売設計において、UX(User Experience)やCX(Customer Experience)の概念が提唱されて久しい。その基本はユーザーやカスタマー、つまり顧客心理の理解にある。広告においても、その先にいる顧客がどんなタイミングでどんな気持ちになるのかを考えることは非常に重要だ。お客が不安になるポイントは何か、何を伝えればその不安がなくなるのか。こうしたことを考えずに出した広告は、ターゲット顧客の心には響かない。

人の心理を掌握し、買いたい気持ちにさせる「心理的トリガー」を駆使するという点で、シュガーマンはまさに天才だ。その天才が持ち前のユニークさを活かして、マーケティングの真髄をわかりやすく書いたのが本書だ。ただし勘違いしてはいけない。本書は非常に面白く共感できるポイントが多いため、つい読んで「わかった気」になってしまいがちだ。しかし、紹介されている法則は実践して初めて身につくものである。30の法則のうち、一番気になった法則からぜひ実践に移していただきたい。想像以上の効果が得られること請け合いだ。

ライター画像
和田有紀子

著者

ジョセフ・シュガーマン(Joseph Sugarman)
シカゴ近郊出身。JS&Aグループ、ブルー・ブロッカー・コーポレーション、デルスター・パブリッシング会長。
マイアミ大学電気工学科に3年半在籍したのち、1962年に米陸軍に召集される。その後、ドイツに渡り、陸軍の諜報機関を経てCIAに勤務する経歴を持つ。
1971年、マイクロエレクトロニクスに将来性を見出し、世界初の電卓を販売する通販会社JS&Aを設立。紙面全面を使った広告は、グラフィック要素をほとんど使わずにテキストだけで埋めるという、当時では斬新な手法で業界の注目を集めた。また、電話からのクレジットカードによる注文を受ける際にフリーダイヤル・サービス「800ナンバー」をアメリカで初めて使用。その後、ほかの多くの通販会社が同様の受注方法を導入する。1986年、販売の中心をエレクトロニクス商品から「ブルー・ブロッカー」ブランドのサングラスにシフトさせ、ダイレクトメール、通信販売広告、カタログ、テレビのインフォマーシャル番組、テレビショッピングチャンネル「QVC」を通じて販売。ブルーブロッカー・サングラスは世界中の媒体を通じて、2000万本超が売れている。
彼の功績により、ダイレクト・マーケティング・マン・オブ・ザ・イヤーに選出(1979年)、業界最高峰のマクスウェル・サックハイム賞(1991年)も受賞している。

本書の要点

  • 要点
    1
    人が物を買う理由の95%は「無意識の決断」だとされている。そのため、販売プロセスのどんなことが心理的トリガーとなって人の心を動かすのかを知ることは非常に有用である。
  • 要点
    2
    人は感覚で購入を決断し、理屈で納得しようとする。商品の魅力をより感覚的に伝え、お客がどうしてもこの商品がほしいと思ったタイミングで、それが適切な判断だという理由を提供すれば、お客は納得して購入してくれる。
  • 要点
    3
    お客の抵抗感を取り除くには、商品やサービスの欠点を開示し、その欠点を克服する必要がある。

要約

【必読ポイント!】 人は感覚で買い、理屈で納得する

感覚に訴えるメッセージの重要性

なぜアメリカでメルセデス・ベンツが売れるのだろうか。大枚をはたいてベンツを買わなくとも、ベンツと同じ機能を持った車は山ほどある。それでも人がベンツを買うのはなぜか。

それは、人は感覚で買い、理屈で納得(正当化)するからだ。人がベンツを買うのは、ベンツの技術力が並外れてすばらしいからでもなければ、乗り心地が抜群に優れているからでもない。高級車のオーナーの仲間入りができるという、感覚的魅力に惹かれているのである。

しかし人は、感覚的に買おうとする自分を納得させるために、購買理由を理屈で正当化しようとする。ベンツの広告代理店はそのことをよくわかっており、広告では技術力や乗り心地がほかの車とは一線を画すことを強調している。

人が根本では感覚で意思決定をしているということを理解すれば、理屈では売るのが難しく見える商品も、感覚に訴えるメッセージを用いることで顧客に購買を促すことができるようになる。さらに言葉は、一語一句自体が短い物語のような感覚的な意味合いを持っているので、その感覚をうまく使いこなせるようになれば鬼に金棒だ。

英語の例になるが、アメリカの伝説のダイレクト・マーケッターであるジョン・ケイプルズは「repair(修理する)」を「fix(元通りにする)」と言い替えただけで、レスポンスが2割増えたという。優秀なセールスパーソンをめざすなら、お客があなたの商品を買いたいと思う感覚的な理由を考えて、それを最適な言葉で表現してみてほしい。

悪魔は理屈に棲んでいる
grinvalds/iStock/Thinkstock

人は感覚で買い、理屈で納得する。では、人が何かを購入する際にそれを理屈で納得させるための戦術は何か。

購入を迷っているときにお客の頭にもっとも浮かんできやすい疑問といえば、「これを買って本当に後悔しないか」ということだろう。お客が感じる疑問にはすべて、お客がその疑問を感じるよりも前に、こちらから先手を打って納得のゆく答えを提供すべきだ。

もし納得感のある答えを提供できなければ、お客に「もう一度考えてみる」という口実を与えることになる。そうなれば、お客がその商品を買う可能性はほとんどなくなってしまう。著者が広告を書くときには、お客の欲求やニーズを満足させられるような「納得のいく理由」を広告のどこかに入れて、お客の感じる抵抗感を取り除いているという。そうして書かれた広告は、「あなたの広告を読むと、買わないと悪いような気になる」とお客に言わしめるほどの効果を発揮する。

お客は口にはせずとも、買いたい気持ちと買うことに対する抵抗感の狭間で迷っている。そこで「買い物を自分や配偶者などに納得させたい」というニーズを満たすような理屈を見つけて一押しできるかどうかが、セールスパーソンとしての腕の見せ所だ。

お客の抵抗感を取り去るために

臭いもののフタは開けろ
vadimguzhva/iStock/Thinkstock

お客に理屈で納得してもらうためには、抵抗感を取り除くことが大切だ。では具体的にどのような点を意識すればいいのか。

「臭いものに蓋をする」とは、都合の悪いことが外に漏れないよう、一時しのぎの方法で隠すという意味のことわざだが、著者は臭いもののフタは積極的に開けろという。つまり、商品の欠点やマイナスに捉えられそうな点は真っ先にお客に伝えるべきだということだ。それはなぜか。

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要約公開日 2017.10.11
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