今となっては常識かもしれないが、東大や京大に多くの卒業生を送る名門高校に入学するには、塾通いが不可欠である。神戸市の私立灘高校の学生を対象にしたアンケートによると、入学前に塾に通っていたと答えた学生の割合は、なんと100%であった。ほとんどの学生は入学試験の前に塾通いに2~6年を費やしたという。これは首都圏の名門進学高校でも同じであり、開成や桜蔭などへの入学者はサピックスなどの塾出身者が占めている。
また、東大、一橋、慶應などの名門大学の合格者の統計を見ると、首都圏の高校出身者が多くを占めており、どの大学でも私立の中高一貫校の出身者が入学者の40%前後を占めている。つまり、名門大学に入学するための近道は首都圏の中高一貫校に通うことであり、そこに入学するためには塾通いが欠かせなくなっているのである。
もっとも、日本全体を見渡せばこうした中学受験のための通塾は大都会のごく一部に限られている。全国的に最も多くの学生が経験するのは高校受験であるため、塾という学校外教育に最もコミットしているのは中学生である。また、小学生においては英会話教室が人気であることも最近の傾向である。
塾に通う理由としてまず浮かぶのは、子どもの学力向上である。塾にも補習塾や進学塾など様々な塾があるが、家庭での学習時間別に見ると、中学受験のための進学塾に通っている小学生の学習時間はとても長く、学力の高さも目立つ。塾といっても復習や予習を目的とした塾に通う学生の学力は、非通塾生と大差ない。
さらに重要な事実は、受験塾に通う学生のうち、父親が大卒である児童はそうでない児童に比べて学習時間は2倍近く多く、学力も高かった。理由としては、子供を塾に通わせるだけの経済的余裕、自分が高い教育を受けたメリットを実感していることによる子どもへの教育の熱心さ、さらには遺伝による生まれつきの能力の高さなどが考えられる。文部科学省の最近の調査によると、親の年収が高い児童ほど高い学力を持っており、国語よりも算数にその傾向がやや強く現れるということが分かった。
親の年収差によって子どもの学習環境に違いが生じることは当然であり、その一つが塾である。親の経済力と子どもの通塾率には強い正の相関があり、通塾すれば学力は高くなる。また、裕福な家の子ほど家での学習時間が長いというデータもある。家での学習時間というのは、そのうちかなりの割合が塾での学習時間で示されるので、親の年収の違いによって子どもが塾にコミットする時間が異なるということも推測できる。
学校外教育としては、塾での勉強だけでなく、ピアノ・バレエ・サッカー・水泳などの芸術やスポーツも挙げられる。何らかの費用負担が生じるということは塾と共通である。スポーツで最も人気が高いのはスイミングで、小学生の実に3分の1が水泳教室に通っている。これは小学校から高校まで多くの学校が水泳を体育での義務にしていることや、水難事故への恐れ、水泳教室は比較的費用が安いことが理由かもしれない。ほかにも、サッカーや体操教室など、体力の増強、人格形成において有用な場としてのさまざまなスポーツの習い事は人気である。
芸術活動で人気が高いのは楽器のレッスンで、特にピアノを習う子どもは多い。芸術活動に関しては男子よりも女子が多いことが特色となっている。子どもに何か情操教育をという思いと、女の子のほうが文化的な活動に関心が強いだろうという推測や、子どもの希望などからこのような結果になっていると考えられる。
芸術活動においては費用の問題も目立つ。
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